[掲示板: 〈過去ログ〉本のこと何でも -- 最新メッセージID: 3237 // 時刻: 2024/11/24(09:32)]
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2659. Re: 実話系の面白い本、ご存じないでしょうか?(読書相談させてください)
お名前: 主観の新茶
投稿日: 2008/6/19(09:07)
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バナナさん、はじめまして
(主観の)新茶です。
1 伝記ではない実話ものとして,アフリカのスーダンの12歳の少女が20歳でイギリスにて自由の身になるまでの奴隷生活の実話,SLAVEがあります。
私は,最近,この本を洋書で読んだばかりです。
2004年に出版されています。
値段は,約3,000円です。
約9万7000語です。
利発ではあるが,その後教育を受けなかった少女らしい,語り口だと思います。
拉致される前,少し英語教育を受けたのみの少女が,なぜ,このような英語の文章を書けたかについては,末尾に,少女の言葉を,ともにすごして,英語にしたライターの話があることで納得できました。
私は,最後は,休日の午前3時までかかりましたが,約1日半で,約5万語読めたように,関係代名詞などは多用されていない,極めて読みやすい文章です。
翻訳書は,出ていますが,見ていません。
2 また,同じような境遇のアフリカの少女の読み物として,民族浄化ethnic cleansingに関し,アフリカのルワンダのフツ族の少女の実話Left toTellがあります。
ツチ族が,フツ族の皆殺しをもくろんだものです。
こちらは,和書でしか,読んでいませんし,洋書は,持っていません。
3 前著であるSlaveは,少女が,アフリカの故郷から首都を経由しイギリスまで,奴隷のまま過ごす間に,継続的に肉体的・精神的加虐を受けるという意味で,動的な展開であり,後著は,少女が,約90日狭い空間に潜み,劇的に痩せた後,意を決して戸外に出て,援軍に救助されるという意味で,比較的静的な展開です。
しかし,後者においても,潜伏中危うく発見されて殺害されそうになっていること,救助される前に殺害側と道路で遭遇して対峙し殺されかねない危ない目にあっていること,父母は,最初の襲撃時に,目の前で惨殺されていること,理系で敬愛していた優秀な兄は,潜伏中に,頭の中を見てみたいという方法で惨殺されたと知らされたこと,同じく潜伏中,ツチ族の彼氏の態度の変化を知って心が深く傷つき別れたことなど,外形的に比較的静的な生活と異なり,内面的な心の動的な動きが,刻々と述べられています。
これに対し,前者Slaveは,後者に比し,孤立無援な中での隷従と圧迫に加え,年齢が12歳と若年であったため,村で1,2を争う優秀な学業成績を収めていたとはいえ,未熟な精神状態であったため,その外形の動的展開に比し,内面は,比較的,静的であります。
少女は,女主人をMASTERと呼ぶことを強いられ,自分は,名前で呼ばれず,奴隷と呼ばれ,徹底的に精神的に従属させられていたうちは,自殺しようという意識はなかったが,途中,主人が替わり,また,ふとした手違いから,自由の状況を少し経験したり,かいま見たりするに至って,かえって終生継続するであろう奴隷としての自分の将来を悲観し,自殺しようと決意した心理には,象徴的なものがあります。
4 Slaveを読むと,表面的には,誘拐し性的に加虐し人身売買する醜業に従事するアラブの男達に怒りを感じるかもしれません。
しかし,この人身売買の本質は,スーダンに居住するアラブの裕福な一般家庭の既婚女性が,奴隷に家政のほとんど全てを就業させ,自分は遊んで暮らしたいという需要に基づくものであり,人身売買された後,少女に肉体的に暴力を加え,あるいは,精神的に絶望感を抱かせるのは,この主人たる女性であることがわかります。
女主人は,作中,夫に対してさえも,強力な発言権があります。
あらためて,人身売買をはじめとして,民族浄化の紛争などについて,背後で実質的に支援しているのは,誰かを考えざるを得ません。
この話の場合,アラブの裕福な主婦の女性が,家事及び育児をほとんど全くせず楽をしたいという欲望を遂げるために,別の民族の少女の人生すべてを奪っているわけです。
そして,この女性の少女に対する会話を検討すると,この女性は,少女の略奪された身の上を熟知しながら,加虐に扱うことについて,何ら良心的呵責を感じていないばかりか,かえって,公的には奴隷を略奪し無償で働かせていることが発覚するとまずいことから,少女に対し,平気であらゆる嘘を信じ込ませ,また,人間以下の存在であると洗脳します。
このアラブの富裕層の主婦は,少女に対し,家族とはあらゆる面で異なる人間以下の扱いをしながら,同じ階層に所属する主婦らに対し,少女が家事育児を従順に完璧にこなす存在であるなどと自慢しますが,これは,逆に,少女の能力が極めて高いことを認めていることになります。
少女は,一家の子供からも母親と同じ扱いを受けながら,やさしく育児をすることによって,子供の信望を取得します。
少女は,たまたま奴隷のまま渡航することになった先のイギリスで自由の身になった今,かえって選択の自由に悩まされていると告白しているのも,象徴的です。
少女の優しい父母が,近隣部族の惨状を知りながら,このような事件の発生を防止できなかったところに,牧歌的な時代は去り,世界的なリスク管理社会の時代到来を感じさせます。
また,襲撃者は,ルワンダの場合と異なり,父母を殺害するなどして部族を全滅させていませんが,これは,人身売買の供給源を絶やさないようにしているだけというにすぎないと思われますし,反撃しない性質の民族を舐めきった行動といえるでしょう。
5 ときあたかも,2008年5月28日から30日まで,横浜で,第4回アフリカ会議(TICAD)が開催され,40カ国参加し,横浜宣言が採択されました。
横浜宣言では,内政干渉を嫌うのか,人身売買などの人権侵害の改善には触れていないようです。
日本は,アフリカのrare metalに着目していますが,中国に先を越されていますから,大変です。
スーダンは,2003年2月以来,アラブ系と非アラブ系の民族紛争が再燃し,殺人を始めとする暴行加虐は,予断を許さない情勢のようです。
ただし,もし,アフリカの秩序が改善され,日本など先進国と同じような勤労形態及び社会生活が営まれたら,もちろんそれは,彼らにとって望ましいことではあるが,それは,アフリカの自然も,ヨーロッパやアメリカ,日本並みになっているということであり,資源は限られている以上,世界の人々の生活水準は,平均化していると考えなければならないでしょうし,その平均化の状況は,日本人の平均層にとって,不満の多いもののであるかもしれません。
今現実に起こっている日本の生活水準の変化は,世界の疑似平和的・勤勉的人々の生活水準への平均化にすぎないともいえるでしょう。
私は,昨今マスコミで話題となっている日本の現状を前提とし,ルワンダの場合も含め,スーダンのSlaveを読むと,彼らが日本を見たら,幸せな人々とは評さないかもしれないが,なんと恵まれているだろう,幸せな人はともかく,不幸せな人は,現状に満足せず,いくらでも別の生き方ができるではないか,なぜそのリスクを取る勇気がないのか,と語るのが目に見えていると思います。
ただし,日本の現状は,甘えているように見えても,そこに漬かってしまうと,抜け出せないものだ,といえるのかもしれません。
あたかも、この少女の8年間のように。
6 このような本は,お気に召さないかもしれませんが,紹介しました。
短くまとめるつもりが,長くなってしまって,恐縮です。
それでは,Happy Reading !
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2660. Re: 実話系の面白い本、ご存じないでしょうか?(読書相談させてください)
お名前: バナナ http://nanaobaba.blog60.fc2.com/
投稿日: 2008/6/19(22:35)
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"主観の新茶"さんは[url:kb:2659]で書きました:
〉 バナナさん、はじめまして
〉 (主観の)新茶です。
こんばんは、バナナです。
2番目の話は、どこかで聞いた覚えがあります。そのことに関する本があるのは初めて知りました。
重いですが、興味わきました。どうもありがとうございます。
さっそく、チェックしてみます。
「ガツン」と来そうな本ですね。
ご紹介ありがとうございました。
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2661. Re: 実話系の面白い本、ご存じないでしょうか?(読書相談させてください)
お名前: 主観の新茶
投稿日: 2008/6/20(22:13)
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バナナさんへ、主観の新茶です。
一連の中で述べておられる「村上陽一郎」さんの本のようなノンフィクションについて、誰も触れておられないようなので、書きます。
バナナさんの求める趣旨も、やや不明確なので、以下のような切り口で、返答します。
できるだけ、手短に述べるつもりです。
村上さんの専門は、幅広いが、おそらく主は安全学であり、著書は、専門レポート、概説書、啓蒙書に分かれると思いますが、私が読んだことのあるのは、啓蒙書である集英社新書の「安全と安心の科学」です。
フィクション、ノンフィクションのほかに、専門書の分野があるので、村上さんの著書は、啓蒙書以外は、ノンフィクションとはいえないかもしれませんが、フィクション以外という趣旨で述べます。
あらためて、本などを見て話すのではなく、主に記憶で対処するので、ご了解ください。
上の啓蒙書では、to err is human を前提とし、fool proof(馬鹿でもわかる)、fail safe(間違えても安全)などのシステムを目指します。
fool proofとfail safeは、近時、かなり多くの人に知られるようになった概念です。
論理的帰結として、たとえば、航空機事故が起きても、その原因究明及び新たな事故未然防止が最優先され、原則として、関係者の責任を問うことはしない、という主張になります。
私は、この見解に、個人的には、基本的に賛成です。
しかし、日本の多くの国民は、これに納得しないと言われています。
また、損害賠償及び刑事の実務は、村上さんの見解を、たとえ好意的に受け取ったとしても、少なくとも時期尚早と考えていると思われます。
村上さんの主張は、人間は、努力を尽くしても、どういう場合に失敗するかを考えますから、畑村洋太郎さんの「失敗学」にも結びつきます。村上さんは、畑村さんを援用しています。
畑村さんの「失敗学」は、いくつか啓蒙書が出ていて、私も、読んでいます。
ここからが、本題ですが、お二人の主張は、リスクをどう考えるかということを前提とします。
リスクに関するノンフィクション系となると、多くなるはずです。
リスクは、客観的リスクと、リスク認識に分かれます。
リスクは、リスク認識とは異なる概念だという言い方もします。
リスクは、リスクeventの大きさ × 発生確率probability です。
リスク認識は、客観的リスクをどう受け取るかという 主観的な問題です。
このうちのどの場合をどういう切り口で読みたいかによって、異なります。必ずしも、読みたくないものを紹介するおそれがあります。
一つのエピソードを手に汗を握って、ドキドキして読む、という本もあるかと思いますが、この種の本は、少なくとも、いくつかのエピソードを読むという方が普通の気がしますし、啓蒙書、それから、概説書といった本になっていくのだと思います。
そうなると、ドキドキとは、少し違います。
たとえば、啓蒙書で、同じ集英社新書の「リスクセンス」は、翻訳物です。
英文の題名は、リスクセンスではありませんが、原著を取り寄せて読むことができます。
それでは、また