マッハさん、高1さん

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907. マッハさん、高1さん

お名前: 柴田武史
投稿日: 2002/3/11(17:54)

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何週間か前の書き込みを再掲します。高1さんへの回答として書いたものです。

〉ただ、文通とかは、自分で知っている英文しか書けないと思うんですけど、
〉それで本当に表現がよくなるんですか?
〉やはり、英語をしゃべれるようになるには、インプットがないと
〉アウトプットもできないので、ひたすら読む(覚える)しかないんですよね。

ひたすら読むということと暗記するということは必ずしも同じことでは
ありません。私は、英語を読むことは大事だけれど、それだけでは
必ずしも英語がすらすら書けるようにはならないのではないかと
思っています。読むだけでは受身の理解はできるようになっても、発信する
ための回路が十分に頭に開かないからです。

私たちが日本語で楽に読めるレベルの文章を黙読して内容が十分に理解
できたとします。その直後にその文章を見ないで、その内容をできるだけ
詳しく書き出しなさいとか言いなさいとか言われたらどうでしょう?
もちろんそんなことは日本語を母語として使う私たちにとっては
非常に簡単なことで、誰にでもできるはずです。普段私たちは日本語を
しゃべり、書いているからです。

ところが、同じことを英語でやろうとするとそれはとても難しいことだと
すぐにわかります。例えば、Graded readerの一番やさしいレベルの本を読み
その直後にその本の内容をできるだけ詳しく英語で書こうとしても、
四苦八苦する人が多かろうと思われます。

これはなぜでしょうか。読めるのになぜ書けないのでしょうか。
これは漢字の読み書きに似ていると思います。私たちは、難しい漢字が
たくさん読めても、それを全部書けるわけではありませんね。
読めるだけでは、書くときにその漢字が頭に浮かんでこないことがあります。
漢字を書くためには、その文字の形を正確に記憶していなければなりません。
鉛筆を持って、書く練習をしていなければ、そういう記憶はできにくいと
思います。

それと同様に、英語を多読していても、書くことにつながる作業を欠いては
英語を書く力はなかなかつかないと思います。その作業は人によって
違うかもしれませんが、とにかくただひたすら読むということだけでは
不十分です。ただし、多読がないときちんとした英語を書くことは
できません。ですから、多読は英語を書く、そして話す力をつけるのに
必要な前提条件です。このことは強調しておきます。

多読に加えて何をすれば英語が書けるようになるのかについては前回少々
書きました。あれに付け加えて、音読や暗記のことなどについてもお話し
したいと思っているのですが、今は時間が取れませんので、またあとで
回答します。

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ここからが今回の書き込みです。

上の文章がマッハさんの質問↓に対する回答にある程度はなっているのでは
ないでしょうか。

>たくさん英語を読めば英語を書くこともできるようになりますか?
>英文の暗唱を学校でやらされているのですが、退屈でしょうがありません。

たくさん読まなければ上手な英文を書くことはできないけれど、読むだけでは
だめではないかというのが私の意見です。SSS英語学習法を指導する方たちも
英語を読むだけですべてのことができるようになるとは言っていませんね。
SSS英語学習方のご案内のページには次のように書いてあります。

>外国語学習の初期段階においては、多読を中心とする学習法だけが外国語を
>自然に楽しく学べる学習法であると確信しています。

>多読を1年間続ければ、1年間で50万語から200万語の英語を読むことになります。
>100万語を超えてくると、英語が自然に身についてきます。その段階で、
>文法・語法を学べば、さらに洗練された英語が書けるようになります。

100万語を超えた段階で文法・語法を学びなさいと説いているわけです。
多読による学習では複雑な英文を読むことができるようにならないと主張する
人たちは、あたかも多読擁護者が文法学習を否定しているように言うことが
あるようですが、決してそうではないのですよね。

ただ、私は自らが英語学習者として英語を学んできた経験と、20年以上学校で
英語を教えてきた経験から、音読と暗唱(暗記)の重要性とその前提となる
英語の発音訓練の必要性を強く感じています。いくら多読が音声を発しない
黙読であろうとも、英語の発音(個々の音と音のつながり)が身についていない
学習者は、そうでない人に比べて大きなハンディを背負っていると思います。

英語を書いたり話したりできるようになるためには、頭の中に英語のストックが
必要です。英語を英語として発音できる人は、黙読で読書したものの中から
単語やフレーズや構文を英語の音とともに自分の頭の中の英語のスペースへと
移し変えることができますが、英語を発音できない学習者は、カタカナ発音で
英語を処理するため、その英語は脳では英語として認知されず、あくまで
カタカナ=日本語を処理する領域に送り込まれるのではないかと思います。

中学生以上の年齢の人が、英語の音声を学習する、あるいは練習するには、
不自然であろうが、個々の音の出し方を日本語で説明したものを読んだり聞いたり
して、機械的な練習を積み重ねていく必要があると思います。それはあたかも
スポーツの基礎練習(ラケットの素振りなど)のごとく、時には単調で、時間が
かかるものかもしれませんが、絶対に必要なことではないでしょうか。

私の学校では中学入学からずっとNHKの英語講座を聞くことを生徒に義務付けて
いますが、放送をただ聞くだけでは、ほとんどの生徒は英語の音を身に付ける
ことができないままであり、カタカナに毛の生えた程度のえせ英語発音しか
身につかないのです。ところが、生徒たちにきちんと音の出し方を教えて、練習を
繰り返させると驚くように英語が読めるようになります。それも音読だけでは
なく、黙読のスピードも上がるのです。同時に聞き取りの能力も向上します。

私たちがものを覚えようとするときには声を出すことがよくありますよね。
例えば、電話帳を見て電話番号を覚えて電話のところまで歩くときに、その番号を
忘れないよう、声に出して唱えながら行ったりしませんか。それと同様に英語を
勉強するときに音読を繰り返して、自然と頭の中に英語を染み込ませるような
練習はぜひやる必要があると言う人は多いし、私もそう考えています。

以前書き込んだことがあるのですが、シュリーマンの勉強法はSSS学習法の多読
とは違い、小説などを音読を繰り返して、寝る間も惜しんで必死で暗記し、覚えた
文を利用してたくさん自由作文(エッセイやお話)を書き、それを、ネイティブの
先生に添削してもらって、それもまた丸暗記して暗唱するというやり方でした。

ロシア語を勉強したときは先生が見つからず、独学でしたが、人をやとって毎日
2時間来てもらい、彼の音読(暗唱)を聞いてもらったと自伝に書いています。
(ところが雇われて彼のロシア語を聞かされたユダヤ人学生はロシア語がさっぱり
わからなかったそうです) そして覚えたロシア語を使って短い話をたくさん
書いて練習した結果、ロシア語で手紙を書き、ロシア人商人と会話もできるように
なり、その後勤めていた商社からロシアに派遣され、ロシア語を駆使してビジネス
に成功しました。そしてロシア人女性と結婚もしました(のちに離婚)。

のちに古典ギリシャ語と現代ギリシャ語をを勉強したときも、大量の音読と本の
暗記を元にギリシャ語を書く練習をして、自由自在に書き、かつ話せるように
なったそうです。ちなみに彼の再婚相手はギリシャ人女性でした。

彼が音読して暗記したのは短文のリストではなくて、物語丸ごとでした。彼は
こう書いています。

「もしだれかが、お前のギリシャ語に間違いがあると言えば、私は暗記している
古典ギリシャ語の一節を暗唱して、その用法がどこにあったのかを証明する
ことができる」

結論です。私はどなたにも強く次のことを勧めます。
1.発音の勉強
2.多読
3.多量の音読(同じものを何十回でも読むこと)
4.音読の結果としてのパッセージの暗唱
5.暗唱したものの暗写(見ないで書く)
6.暗記した英語や読書して出会った表現を利用して、興味のあることについて
  エッセイを書き、それを暗唱する。間違いを訂正してくれる指導者がいれば
  なおよいが、いなくても気にしないこと。
7.テープなどを利用して英語の書き取り練習をする。

このような勉強をすれば、相当上手に英語を書き、話すことができるようになる
はずです。


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