シャドーイングについて(ものすごく長文)

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[お知らせ] 1961. シャドーイングについて(ものすごく長文)

お名前: SSS英語学習研究会 酒井邦秀
投稿日: 2002/5/20(00:02)

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変な話ですが、お約束のシャドーイングについて、
投稿します。

実はこれは6月12日に書店に並ぶはずのぼくの本から
そのままカット・アンド・ペーストしたものです。
(筑摩書房に文句を言われるかな?)

それで、いろいろ疑問が出てくると思うので、質問して
くださいますか?下の解説を出発点に、いろいろ意見と
質問を交換することにしましょう!

******以下引用*************

耳からも100万語——やっぱり音がなけりゃ
 ダールの作品を読んで、音の遊びを楽しめるようになるには、英語の音が体の中で動き出さなければなりません。「めざせ100万語!」は、おもにペーパーバックを読むためのプログラムですが、たいていの人の場合、読むだけでは言葉を獲得した気にはなれません。できれば聞いて話せて書けることもめざしたいものです。
 この本は、話し書くためにはまず体の中に十分英語がたまっていなければならないという仮定に立っています。たまった英語をどうやって口から手から出力していくかについては、また機会をあらためて書くことにしますが、とりあえず大量の英語を吸収する必要があります。
吸収するには目と耳を使います。目から吸収する方法はすでに書いてきました。くわえて聞いてわかるようになれば、英語の吸収量が段違いに増えます。テレビ、映画、インターネットラジオなど、耳から取り入れるメディアはたくさんあるので、録音しておけば、歩きながらあるいは通勤電車の中でも耳から吸収することが可能です。

多読だけで十分?
 実は「多読だけで聞くことも話すこともできるようなる」といいきっている人がいます。アメリカの言語学者で、外国語の獲得について世界で指導的な役割をはたしているスチーブン・クラッシェンという人です。大阪にある四天王寺国際仏教大学で多読指導をしているベニコ・メイソンさんはクラッシェンさんと一緒に論文も書いている人ですが、この人によるとクラッシェンさんは

Extensive Reading is not the best way. It’s the ONLY way!

と言っているそうです。つまり多読(Extensive Reading)だけで、聞き、話し、読み、書くといった、言葉のすべての面を獲得できるというのです。
 ぼくはクラッシェンさんの外国語体得論はほとんどうなずけるものだと思いますが、上の断定には少々疑問があります。クラッシェンさんは、日本の英語教育が音声面で自然な英語からひどくはなれていることを考えに入れていないのではないかと思うのです。
 とはいうものの、「めざせ100万語!」をある程度(数十万語)やった人の中には、聞く練習はなにもやっていないのにリスニングの力が増したという人が何人もいます。それはおもに英語を「出てきた順に理解できる」ようになったためだと思いますが、クラッシェンさんの言うことはある程度は当たっていることになります。
 さらに、まだ一人だけですが、アメリカ人に「本当に多読だけしかやってないのか?」と不思議がられるほど話すことがうまくなった人もいます。これもクラッシェンさんの言い分を支持する材料です。
 けれども多読だけで聞き、話せるようになるかどうか、ぼくはまだ確信が持てません。ですからその点がはっきりするまでは、多読にくわえて音の練習もやっておくことにしましょう。
教室で聞く英語の音はあまりに日本語化しています。ですから英語本来の音はあらたに覚えなおす必要があると思います。そのためにシャドーイング(shadowing)ということをやりましょう。英語を聞きながら口を一緒に動かすことで集中しやすくなり、聞く力をそだてながら、同時に話す準備ができてきます。

シャドーイングの三つの目的
シャドーイングという練習方法はもともと同時通訳の訓練で使われていたそうですが、このごろでは一般の学習者の間にもはやってきました。同時通訳の訓練では、おそらく「聞きながら訳す」準備として「聞きながら繰り返す(つまりシャドーイング)」のでしょうが、ここでは目的がちがいます。
一つは「頭のすすぎ洗い」です。わたしたちの頭の中にはすでにカタカナ英語がしみついています。カタカナ英語は日本語の音に干渉された英語の音です。シャドーイングは耳からどんどん本来の英語の音を注ぎこんで、カタカナ英語を洗い流します。
二つめの目的は英語の音の獲得です。これはすすぎ洗いと平行して起こるはずですが、カタカナ英語が洗い流されるにつれて、英語独特の音が口から出るようになります。ぼくが指導した社会人クラスでは、1日15分、1週3、4日のシャドーイングを2ヶ月くらい続けて日本語の音をずいぶん離れた人が数人います。
三番目の目的は、耳から英語を吸収することです。シャドーイングによって英語の音と綴りの関係がわかってくれば、聞くだけで大量の英語を吸収することができます。耳から吸収できる英語は多読で吸収できる英語よりも新しいと言えます。テレビやインターネット・ラジオのニュースは最新の情報を音声で伝えてくれます。いま世界のどこかで起きている事件をほぼ同時に知ることができるので、興味が続きやすく飽きません。毎日事件を追いかけているうちに大量の英語に接することになります。これは知っている語数を増やすことにもなります。

シャドーイングはどうやる?
シャドーイングは、つまりテープから聞こえてくる朗読を、そのまま影(shadow)のように声を出してついていくのです。graded readersの朗読テープは、文と文のあいだに休みを入れてありません。つまり一つの文が終わると次の文がすぐにはじまります。これについていくには、文が聞こえはじめるとすぐに聞こえた音を繰り返しはじめます。耳で次の音を聞きながら口では聞いたばかりの音を繰り返すことになります。
むずかしいと思うかもしれませんが、コツをつかむにはまず日本語でやってみます。テレビの日本語のニュースでシャドーイングをやってみてください。ちっともむずかしい作業ではないことがわかるはずです。それと同じことを英語でやってみるわけです。

朗読テープを使って
シャドーイングの材料はなんでもいいのですが、はじめやすいのは赤レベルの初級テキストを朗読したテープでしょう。全部のテキストに朗読テープがあるわけではありませんが、かなりの数があります。
「赤レベルの初級あたりが読むのにちょうどいい」という人は、まだまだこのレベルの朗読テープは聞いただけではなんのことかわからないはずです。でも、分からない方が、シャドーイングにはいい!
赤レベルの朗読テープは、語数が200語や300語とかぎられていて、しかも1分間に語程度のゆっくりした朗読なので、英語が得意な人は頭の中で和訳して、内容がわかってしまうかもしれません。これが逆に具合が悪いのです。どんな単語かわかってしまうと、頭の中で学校英語の音になおしてから繰り返してしまうからです。(ある受講生はこれを「カタカナ変換」と名付けました。)
そういう人は内容が聞き取れないくらい速い朗読で練習した方がいいでしょう。たとえばハリー・ポッターの朗読テープは相当速く、1分間に200語近く読んでいます。この速さだと、聞き取れない語が多くなって、舌がもつれ、口がまわらなくなります。すなわち、カタカナ英語に直している余裕がない!すべてをあきらめて、聞こえてくる音をわけも分からずに繰り返す・・・これがいいのです。
授業の経験では、そういう速いテープを繰り返させると、みんなとてもいい音を出すのに、「いまの英文はこれでした」といって、印刷したものを読んでもらうと、たちまち学校英語式のカタカナ英語に戻ってしまいます。

CNNもいい
英語が得意な人は、朗読テープ以外にもCNNやBBCでニュースのシャドーイングをするといいでしょう。キャスターの口元を見て口の形をまねするようにすると、カタカナ変換する癖が出にくくなります。
ただ、ニュースの内容を理解してから繰り返そうとすると、ついていけません。この段階では内容も単語も理解できなくてもいい、音を繰り返すだけだということを忘れないでください。

シャドーイングは単調
実はシャドーイングは受講生に人気がありません。続ける人が少ないのです。理解を二の次にするので、読書のようにおもしろい作業ではないのでしょう。
けれども続けた人は確実に英語の音に近づいていきます。つまり自分の出す音が「子音が耳障りに、母音が奇妙に」なります。
そのためには、しばらくは意味もわからずにごにょごにょとくりかえしていてください。そのうち、適当な時期が来たら、聞いて内容を理解することへ進みましょう。それには「文を頭から順に理解する」ことに十分慣れて、ある程度の速さ(1分間に150語くらい)で読めるようになっていなければなりません。

音のunlearn
 音についても、辞書や文法とおなじように捨てなければならないことがあります。それはカタカナ英語です。耳から入ってきた音を口からそのまま出すには、頭の中でカタカナ変換することをやめなければならないのです。
 カタカナ変換には無理ないと思える点もあります。生の英語の音はぼくたち日本人にはあまりに奇妙です。人間の出す音とは思えません。子音のtやkやsはひどく激しくて耳障りだし、aeやあいまい母音の音はアイウエオのどの音ともちがっていて、とてもそのまま出す気になりません。そこでどうしても言い慣れた日本語の音に置き換えて安心したくなります。
カタカナ英語にはそれなりの存在理由があるとすると、辞書や文法同様、捨てるには納得できる理論が必要です。いままでの学校英語の音が英語の実態とはかけはなれていることを得心しないと、聞こえてきた英語の「変な音」をなじんだカタカナ英語の音に直して口から出してしまいます。言い換えれば、聞こえてきた音の綴りを思い出して、それを頭の中で「読んで」しまいます。
そこで、音についてもunlearnすることにしましょう。第12講で、シャドーイングのときにいちばん気をつけることを説明します。

******引用終わり*************


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