ラテン語のはなし(3),逸身喜一郎著。ラテン語の動詞について。日本語や英語との異同,つまり,ラテン語の動詞が,日本語や英語の動詞と似ている点と似ていない点

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2679. ラテン語のはなし(3),逸身喜一郎著。ラテン語の動詞について。日本語や英語との異同,つまり,ラテン語の動詞が,日本語や英語の動詞と似ている点と似ていない点

お名前: 主観の新茶
投稿日: 2014/7/1(17:06)

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1 ラテン語のはなし(3),逸身喜一郎著。ラテン語の動詞について。

  日本語や英語との異同,つまり,ラテン語の動詞が,日本語や英語の動詞と似ている点と似ていない点を常に意識しながら,進んでみる。

2 今回も,私のわかる範囲で,考えてみよう。

  もっとも,私の能力では,逸身師の記述を下回りこそ,上回ることの一つもないのは,当然であるが・・・。

3 第11話。veni,vidi,vici.

 有名な「来た,見た,勝った」である。

 サイコロを振り( jacio ),ルビコンの川を渡ったカエサルは,ローマに戻った後も,生き方として,出た目に従わなければならなかった。その一つは,属州の反乱の鎮圧による,力の保持である。

 カエサルは,Festina lenteとばかり,否,昼夜兼行とばかり,否,夜を日に継いで,押っ取り刀で,小アジアに駆けつけ,即座に勝利した。

4 この小アジアで生まれたのが,キリストである。オクタウィアヌス帝(皇帝アウグストゥス)の時代である。

 外敵が,出来事的には,ローマを滅ぼした。しかし,ローマが滅びた真の理由は,外敵ではない。ローマは,建国以来,常に外敵に悩まされ,負けても,最終的に勝ってきた。

 異教のキリスト教が入り込み,ローマを滅ぼしたという見解もある。しかし,ローマは,常に,多くの異教と共存してきた。
 ローマは,立法,司法及び行政の三権が,現代的な三権分立とは似ても似つかぬとしても,曲がりなりにも機能し,愚劣な皇帝の時代も興隆できた。

 西ローマは,滅びる際,政治家も,軍の司令官も,ローマ人に人材がなく,ローマ人以外に人材を求めた。あろうことか,キリスト教という宗教に人材が集まり,立法,司法及び行政のまねごとが整備された。

 ローマは,自己の欲望のみならず,高邁な精神を併せ持ち,他者のために働く人材を育成できず,滅びたのである。
 キリスト教会も,やがて,必ずしも良い人材に恵まれなくなり,近世の宗教改革を招く。

 現代の日本でいえば,政治にも,経済にも,法律にも,その他の文化にも,きちんとした意見を持つことができず,真の遊びをすることはなく,安楽なお遊びに逃避している輩が多ければ,国は徐々に衰退しやがて滅びるのである。

 さて,そんな評価は,どうでも良い。これは,私の評価である。別の評価は,いくらでもあり得る。

5 動詞の基本形

 動詞は,基本形が4つ,第1変化,第2変化,第3a変化,第3b変化,第4変化と分類される。たとえば,それぞれ,amo,moneo,ago,capio,audioが,説明の例とされる(国原吉之助)。

 しかし,amoは,そのままにして,今述べた,video,vinco,jacio,venioは,見事に対置する(小林標)。見本は,それぞれ,2系統できた。バンザイ。

 まだ,まだ,あるぞ。

 amo,habeo,rego,facio,audio(大西英文)

 amo,video,ago,capio,audio(逸見)

 amo(canto),moneo(habeo),dico(rego),facio,audio(小林標・独習)

 amo,habeo,lego(mitto),capio,audio(風間喜代三)

 amo,moneo,emo,capio,audio(田中利光)

 大同小異かもしれないが,さらに増えて,バンザイ,バンザイ。

6 時制について

 tenceは,ラテン語において,半過去(未完了過去),現在,未来という現在幹グループの群と,過去完了,完了,未来完了という完了グループ(完了幹ないし完了分詞)の群に,二分される。
 前回投稿(2)の記述は,理解の深化の観点から,若干改めた。

 ラテン語において,物語は,半過去で停滞し,完了で進行する。
 これは,既に前回投稿(2)で書いた。
 完了は,通常の過去と考えて,大差はないといわれている。

7 第1グループ

 第1に,動詞の基本4形のうち,3番目を使用するグループである。これは,完了グループ中,完了幹が形づくる能動相グループである。直説法の過去完了,完了,未来完了及び接続法の過去完了,完了の5形態が考えられる。
 他に,不定詞のうち,完了(能動)不定詞を想定する。
 
8 第2グループ

 第2に,動詞の基本4形のうち,4番目を使用するグループである。これは,完了グループ中,完了受動分詞が形づくる受動相グループである。前記能動相グループに対応し,直説法の過去完了,完了,未来完了及び接続法の過去完了,完了の5形態が考えられる。これで,第1の5形態と合わせ,10形態である。
 他に,不定法中,未来不定詞(能動相も受動相も),完了受動不定詞,分詞のうち,未来(能動)分詞を想定する。
 
9 第3グループ

 第3に,動詞の基本4形のうち,1番目及び2番目を使用するグループである。残りは,全て,第3グループ(現在幹グループ)である。残り全てというところが,すごい。すばらしい。対置すると,同じ数の10形態がある。直説法に,半過去(未完了過去),現在,未来,接続法に半過去(未完了過去),現在の5種類,各々,能動相と受動相の2相があるから,10形態である。
 他に,第1及び第2グループに記述したものを除く,その他の不定詞,分詞を想定する。

10 覚えるべき変化形の数

 覚えるべき変化形は,第1及び第2グループ10形態+第3グループ10形態=20形態に,人称及び単複の6態を乗ずれば,120個,それに,命令法,不定法,形容詞化を加算すると,変化形の数は,1つの動詞について,140個前後になるらしい。

 世上,一般に,ラテン語は,変化が多いから,難しいとされる。英語の三人称単数の動詞の末尾のs, 疑問文のdoesの比ではないことは確かだ。しかし,今述べた第1グループから第3グループの3種に分けて,簡明に理解してしまわんと欲する。

11 早速,第1の完了グループに取りかかろう。もう,第11話で,取りかかっている。

12 sum(esse,fui,futurus)について

 そこで,英語のbe動詞(I am),フランス語のêtre(je suis)に対置されるsum(esse,fui,futurus)について,全体を知るのが,簡便であると思う。
     半過去   現在   未来
直・能  eram    sum    ero
 <es・a・m        <es・i・o

接・能  essem    sim
     <es・se・m  <es・i・m

     過去完了  完了   未来完了
直・能  fueram    fui    fuero
     <fu・eram        <fu・ero

接・能  fuissem    fuerim
     <fu・essem   <fu・es・i・m

と,形式的に,数列的に,対応する。そういうことか。

 上記の分類形は,意味が分からなくて良いなら,小学校でも,文字を抜いて当てさせるという,パズル問題が出せる。
    eram     sum    ero
    essem     sim
    fueram    fui     fuero
    fuissem    fuerim

 あとは,人称変化を,自分で試みれば足りる。
 たとえば,sum,es,est,sumus,estis,sunt

      ero,eris,erit,erimus,eritis,erunt

      fui,fuisti,fuit,fuimus,fuistis,fuerunt

      fuerim,furis,fuerit,fuerimus,fueritis,fuerint

      sim,sis,sit,simus,sistis,sint

13 一般動詞

 では,一般の動詞は,どうなるか。

     半過去     現在           未来
直・能  現在幹+ba 現在幹(語根+幹母音)  現在幹+bo/bi/bu+o/m(1,2)
     +o/m※2 +o/m(s,t,mus,tis,nt)※1  現在幹+a/e+o/m(3,3b,4)

直・受  同上    同上 同上
     +r +r(ris,tur,mur,mini,ntur) +r

接・能  同右+ba 現在幹(1,3は,現在幹−幹末母音=動詞幹)
     +o/m +(1は,+e, その他は,+a )+o/m
接・受  同上 同上
     +r +r

命・能        単2不・能・現−re 単2・3不・現−re+to
           複2不・能・現−re+te 複2不・現−re+tote
                       複3不・現−re+(-nto,3-unto)
           (命・能全てにつき,動詞3は,iをeに替え,+te)
命・受        単2不・現−re+re 単2・3不・現−re+tor
           複2不・現−re+mini   複2・3不・現−re+ntor
不・能        現在幹+re 未来分詞+esse
不・受        現在幹+ri(3は,動詞幹+i) 目的分詞+iri

     過去完了   完了           未来完了
直・能  完了幹+era 完了幹(完了幹いろいろ※3) 完了幹+ero
     +o/m +i,isti,it,imus,istis,erunt  +o/m
直・受  完了分詞+eram 完了分詞+sum     完了分詞+ero

接・能  完了幹+issem  完了幹+erim
接・受  完了分詞+essem 完了分詞+sim

命・能
命・受

不・能           完了幹+isse
不・受           完了分詞+esse

 ※1 第3変化の幹母音eは,単数一人称で消失し,単数二人称以下は,iに代替し,最後の複数三人称で,uに代替する。3b動詞は,iの長短を無視すると,第4変化と同じである。第4変化の複数三人称-untのuは,第3変化の類推である。

 ※2 第3a変化は,不定詞の幹母音を長母音化し,-ba-を付加する。第3変化中,-ioで終わる3b動詞と,第4変化は,-ie-ba-となる。

 ※3 「完了幹いろいろ」の作り方:
(1)第1及び第4変化のほとんどは,現在幹+-vi,(2)第2変化のほとんどは,動詞幹(現在幹−-e)+-ui,第3変化は,(3)動詞幹+si,(4)動詞幹の母音を長音化し,母音eの長音に交替し,語尾iを長音化して付加,(5)動詞幹の前に,同じ子音+eとし,語尾iの長音を付加,(6)動詞幹そのものに,語尾iの長音を付加する(大西英文)。4種類の変化形のうちの例外は,(1)ないし(6)の形態のどれかに該当するとみて良い。

ちょっきり,30形態ある。覚えやすい。

 上記の分類形は,同様に,意味が分からなくて良いなら,小学校でも,文字を抜いて当てさせるという,パズル問題が出せる。

     半過去    現在       未来
直・能  現在幹+bam 現在幹+o/m   現在幹+bo/bi/bu(a/e)+o/m
直・受  同上+r 同上+r 同上+r
接・能  同右+bam  現在幹(1,3は動詞幹)+(1 e, 2〜4 a )+o/m
接・受  同上+r 同上+r
不・能         現在幹+re 未来分詞+esse
不・受         現在幹+ri(3は,動詞幹+i) 目的分詞+iri

     過去完了     完了        未来完了
直・能  完了幹+eram   完了幹+i  完了幹+ero
直・受  完了分詞+eram  完了分詞+sum   完了分詞+ero
接・能  完了幹+issem  完了幹+erim
接・受  完了分詞+essem 完了分詞+sim
不・能           完了幹+isse
不・受           完了分詞+esse

完了グループの受動相は,sumの現在グループの体系に,ピッタリ符合する。オドロキだ。完了グループの能動相も,緊密な関連性が認められる。

あとは,人称変化を,自分で試せば足りる。

14 体系について

 完了グループ中,完了幹が形づくる能動相グループを,第1グループ,(1),完了グループ中,完了受動分詞が形づくる受動相グループを,第2グループ,(2),残りの全ての第3グループ(現在幹グループ)を,(3)として,(1)(2)(3)の順序で説明し,すんなり,理解できれば,申し分ない。体系的に,きれいだ。

15 一般動詞の変化形は,(1)から(30)の数字に代置させよう。

半過 現在 未来
直・能 (1) (2) (3)  第3グループ
直・受 (4) (5) (6)  第3グループ

接・能 (7) (8)  第3グループ
接・受 (9) (10) 第3グループ

命・能   (11) (12) 第3グループ
命・受   (13) (14) 第3グループ

不・能   (15) (16) (15)は,第3グループ,(16)は,第2グループ。
不・受   (17) (18) (17)は,第3グループ,(18)は,第2グループ。

過完 完 未完
直・能  (19) (20) (21) 第1グループ。
直・受  (22) (23) (24) 第2グループ。

接・能  (25) (26) 第1グループ。
接・受  (27) (28) 第2グループ。

命・能     
命・受     

不・能 (29) 第1グループ。
不・受 (30) 第2グループ。

そういうことか。このようにまとめてみると,われながら,わかりやすい。

16 これを逸身師の本に当てはめてみよう。○の中は,逸見師の単元である。たとえば,⑫は,第12話を指す。

半過 現在 未来
直・能 (1) (2) (3)  第3グループ
(1)⑫⑯ (2)(3)(4)(6)(7)(8)(9)⑩ (3)⑬⑯

直・受 (4) (5) (6)  第3グループ
(4)&#12988; (5)⑰⑱&#12991; (6)(8)&#12985;&#12987;

接・能 (7) (8)  第3グループ
(7)&#12988; (8)(8)&#12985;&#12987;

接・受 (9) (10) 第3グループ
(9) (10)

命・能   (11) (12) 第3グループ
(11)⑮ (12)

命・受   (13) (14) 第3グループ
(13) (14)

不・能   (15) (16) (15)は,第3グループ,(16)は,第2グループ。
(15)⑳&#12888;&#12986;&#12990;&#12991; (16)

不・受   (17) (18) (17)は,第3グループ,(18)は,第2グループ。
(17)&#12881; (18)

過完 完 未完
直・能  (19) (20) (21) 第1グループ。
(19)⑪ (20)⑪ (21)⑪&#12989;

直・受  (22) (23) (24) 第2グループ。
(22) (23)⑩⑲⑳&#12895;&#12977;&#12991; (24)

接・能  (25) (26) 第1グループ。
(25)&#12882; (26)

接・受  (27) (28) 第2グループ。
(27) (28)

命・能     
命・受     

不・能 (29) 第1グループ。
(29)⑳
不・受 (30) 第2グループ。
(30)

17 形容詞化

 形容詞化は,以下のとおりである。

(1) 分詞

 分詞は,動詞+形容詞(名詞)の構造と機能を併存する。

 私は,動詞の構造と機能とは,目的語を取るなどの構造を有し,動詞の基本的意味を保有するなどの機能を有すること,形容詞(名詞)の構造と機能とは,性・数・格に応じた形容詞の変化を採用するなどの構造を有し,形容詞的な意味となるなどの機能を有することと解する。

(2) 目的分詞

 目的分詞=spinum。動詞の基本4形の4番目,そのものである。

(3) 完了分詞

 完了分詞=完了受動分詞=過去分詞=spinum幹(spinum−um)+-us,a,um。意味は,「〜された」である。第1・2変化。動詞の基本4形のうち,4番目である。
 第1,第4変化の大部分,第2変化の若干,現在幹+tus
 第2変化の大部分,現在幹(-e+-i)+tus
 第3変化の大部分,動詞幹+tus。

 動詞幹が,-d,-tで終わる場合,長母音,二重母音の後の-dtus,-ttusは,-sus,短母音の後の-dtus,-ttusは,-ssusに,音韻変化する(大西)。音韻変化したのは,ローマ人にとって,変化しない場合と比較し,言い易かったからであろう。
動詞幹が,-gで終わる場合,例えば,lego,legere,legi,leg-tus>lec-tusとなる(母音の長音化あり)。
 なお,juv-tus>ju-tusがある(国原)。

(4) 未来能動分詞
 
 未来能動分詞=spinum幹(完了分詞−tus)+turus。「将来,〜することが,決まっている。」の意味である。第1・2変化の形容詞。動詞の基本4形のうち,4番目である。

(5) 以下は,動詞の基本4形のうち,1番目と2番目である。
  わかりやすい。簡明だ。パズルだ。

(6) 現在能動分詞

 現在能動分詞=現在幹+-ns。「今,〜している。」の意味である。第3変化の形容詞である。
 ただし,第4変化,第3変化bは,+-ensである。

(7) 動名詞

 動名詞=現在幹+(e)ndum。「〜すること。」の意味である。第2変化の中性名詞である。

(8) 動形容詞

 動形容詞=動名詞のフル変化。「〜されるべき。」の意味である。第1・2変化の形容詞である。

(9) 私は,これで,動詞の全形態の説明は,終わったと思っている。

(10) 本当に,こんな程度の少ない理解で,良いのか。

18 文章の構造と機能

 ここで,文章の構造と機能(単語の構造と機能ではない。)を,若干,考えてみよう。ラテン語の文章としての機能は,英語において,完全な模倣ではなく,類似品として,継受されたと考えよう。英語の文章の構造と機能の先祖は,ラテン語である。すると,どう考えるか。

(1) 仮定法

 英語は,たとえば,仮定法は,「反実仮想(綿貫/マーク・ピーターソン)=事実に反すること,現実ではなく願望したこと,仮の事実として想像したことなど」について,過去形等の時制及び助動詞を使用し,日本語より,やや複雑,巧妙ないし微妙な表現ができるようにみえる。
 ラテン語の場合は,同じような機能があるが,それは,仮定法のみならず,従属文一般について,厳然たる事実を述べるのではなく,意志的要素が加入する場合に,表現方法の分化が認められると考えよう。構造は,もっぱら,接続法に任せる。
 (1)目的文,ut,ne, (2)比較文,quam,ut,quasi, (3)理由文,quod,quia, (4),時間文,eum,dum,antequam, (5)譲歩文,etsi,etiamsi,quamvis,quamquam, (6)条件文,si,nisi, (7)程度・結果文,ut(大西英文)

(2) 直接話法を間接話法にする場合の時制の技法。

 英語にあるが,日本語には,余り制約がないように見える。ということは,逆に,日本語の時制の自然な使い方の習得は,難しいともいえる。ラテン語には,時制の制約がある。これは,接続法と,代名詞等の変更に任せる。規則を覚えるのは,窮屈だが,逆に,規則があるだけ,覚えてしまえば,定型性になじむということになる。

(3) 形容詞から副詞を作ること

 英語と同じく,形容詞から,副詞を作る形式的・画一的方法があると考える。
 第1,2変化の形容詞,男性属格単数−-i+-e
 第3変化の形容詞,単数属格−-is+-iter(国原吉之助)

(4) 比較級及び最上級

 ヨーロッパは,各民族が入り交じり,他者と比較することが好きだから,原級,比較級及び最上級という3分類と,形容詞及び副詞の比較文の作り方が,英語と同じく,出現すると考える。
 形容詞は,第1,2変化の形容詞(男性属格単数−-i),第3変化の形容詞(男性・単数属格−-is)に,比較級は,+-ior(m,f),-ius(n),最上級は,+(-issimus,-a,um)である。
 比較級の変化は,第3変化の形容詞のうち,単数主格で2つの語尾を持つi幹と同じである。
 最上級の変化は,第1,2変化の形容詞bonusと同じである。
 副詞の比較級は,対応する形容詞の中性対格の形=語根+iusである。
 副詞の最上級は,形容詞の最上級の語尾を,-usから-eに変更する(国原吉之助)。

(5) 独立奪格

 独立奪格という特殊な一文。これは,前回投稿(2)に述べた。

(6) 動形容詞

 動形容詞という形容詞の特殊な形式による表現。これも,前に述べた。

(7) 受動態

 受動態の文章は,自動詞として,翻訳した方が自然な日本語であることが多いこと。これも,前に述べた。

(8) 形式所相動詞

 受動相の動詞ながら,能動の意味であり,したがって,目的語を取り得る動詞が存在すること。これは,deponentia=形式所相動詞=能相欠如動詞という。所相とは,受動相という意味である。日本語の訳は,「〜を〜する」というような他動詞の訳でよい(逸見・20課)。

(1) minor, fateor, sequor, morior, orior(逸見)
(mirari,miratus sum)(fateri,fassus sum)(sequi,secutus sum)(mori,mortuus sum)(oriri,ortus sum)

(2) hortor, vereor, loquor, なし, mentior(国原吉之助)
(hortari,hortatus sum)(vereri,veritus sum)(loqui,loqutus sum)(mentiri,mentitus sum)

(3) opinor, vereor, utor, morior, mentior(小林標)
(opinari,opinatus sum)

(4) opinor, vereor, utor, patior, mentior(大西英文)
(uti,usus sum)(pati,passus sum)

 cf 第1変化 amor, amari, amatus sum

    第2変化 moneor, moneri, monitus sum

    第3a変化 agor, agi, actus sum

    第3b変化 capior, capi, captus sum

    第4変化 audior, audiri, auctum sum

あとは,自分で活用を試せば足りるように見えるが・・・・・

(9) 不定法

 不定詞の用法(不定法)は,文章を作る構造として,英語とは,同じ面もあるが,相当異なると考える。ラテン語は,本来,間接話法を有せず,代わりに,不定法が使用されたという。英語で言えば,I know for you to admire himのような形態の構文である。この構文は,現代英語では不自然であるが,古英語の時代に存在した構文であると思われる。なお,ラテン語は,英語の如く,to+不定詞というような前置詞を伴う用法はなく,不定詞のみ使用し,代名詞の前にも,前置詞は,付けない。

(10) 不規則動詞

 英語には,不規則動詞がある。不規則動詞同士は,規則的な面がある。英語の不規則動詞は,元来は,規則的であって,不規則ではない。ラテン語も,不規則動詞が存在する。やはり,不規則ではないと考える。現在幹から,幹末母音を削除し,直接,動詞幹に,時称語尾を付加するなどと考察する。
(1)sum(esse), (2)do(dare), (3)fero(ferre), (4)eo(ire), (5)volo(velle),
 (6)fio(fieri), (7)edo(edere,esse), (8)possum(posse), (9)nolo(nolle),⑩malo(malle)

(11) 規則性

 元来,ことばは,構造(形)が同じならば,機能(意味)を同じうし,機能が同じならば,構造を同じうする方が,便宜であるから,そうなっている。それを,規則と呼び,法則と呼ぶ。単語の段階も,もとより,規則ないし法則があり,文の段階に昇格しても,規則ないし法則がある。

 単語や文の構造と機能が,歴史の時間的経過に連れ,変化した場合には,一斉に変化することが多い。しかし,取り残されたものがある場合もある。取り残されるのは,たとえば,頻繁に使用されるため,変更がまかりならなかったからである。変更前の従前の構造と機能が生きる。これが,後世から見ると,不規則に見える。

 しかし,歴史的発展を考慮すれば,不規則ではない。このような知識は,英語の歴史及び言語学から学んだ。

(12) ラテン語の文章の構造と機能

 ラテン語の文章の構造と機能を,ブランド品のルイ・ヴィトンであると考えると,ラテン語より遙か時代が下って生産され始めた英語の構造と機能は,ルイ・ヴィトンが,別の国で生産された模倣品,類似品のようなものであろうか。英語は,それかもしれない。最近は,かなり,モノが良い模倣品,類似品も出現する。それとも,英語は,別の同程度のブランドに育ったのであろうか。または,シャネルのようなブランドになったのであろうか。それが分かる人は,日本に,ほとんど,おるまい。並の英語教師は,通常,分かっていないだろう,分かろうとしない風情の教師も,少なからぬのではないか。英語を学ぶに,ラテン語など関係ない,果ては有害であるという暴論教師もおろう。

(13) 英語におけるラテン語含有率

 単語レベルで言うと,ラテン語の1/4は。英語に採用されたという(芹沢栄ほか)。逆に,英語の過半数(6割程度か)は,ラテン語の直輸入ないしフランス語等のラテン語の子孫経由であるという(文献は,省略,枚挙に暇がないから)。だから,英語を学ぶに,ラテン語等の語源を学ぶことは,重要であろう。

 この場合,語源を学ぶとは,まず,ローマ,イギリス,アメリカ等の歴史(出来事の単なる叙述ではなく,政治的・経済的・文化的な歴史発展の構造と機能を分からせてくれるような歴史)を学ぶこと,それに,各自の仕事である専門書から単語を学ぶのであって,また,語源を書いた専門書(渡部昇一「英語の語源」等,唐澤一友「英語のルーツ」,石井米雄「語源の楽しみ」,梅田修「英語の語源物語」等,そのほか,著者はまだいる)を通じ,文化を学びながら,ついでに,語源も学ぶのである。単に語源練習書をひもとくのではない(ただし渡部昇一のように,日本で刻苦勉励するのみならず,英語の成り立ち研究の本場であるドイツに留学し,修練した人が,仕上げの意味で,語源練習書を学ぶのは別であり,正しい)。

 外国のあるいは日本のハウツー物の語源練習書を学んだが,役に立たなかったと批判する人(酒井邦秀氏,ry0tasan。渡部昇一氏の語源練習を批判している文章もあった。)は,そもそも,語学を学ぶという姿勢が間違っているのではないか?そのような人は,政治,経済その他の文化についても,おそらく,正統的に,学ぶ意思ないし能力が薄いか,学び方が,不自然であろう,と考えざるを得ない,という嫌な経験を,私は,した。

(14) 英語文章のラテン語文章のお手本化,模倣化

 しかし,もっと重要であるのは,単語の段階ではなく,文章の段階である。つまり,系統だった思想の表現である。系統だった思想の表現形式を,英語は,ラテン語に真似した。その真似の状況を知るのは難しい。私の良くするところではない。したがって,今回も,短い文章の構造と機能を考察するに留まる。

(15) 体系として学ぶ

 私は,以上のようなことを,文の機能として,あらかじめ,考える。そのほかは,何が出てきても,後は,野となれ,山となれ,の心境である。この心境は,後は,どうにでもなれという性質のものではないことは,当然である。ある事柄を学ぶ際,自分が作った体系の範囲内かどうかを見定め,一見,体系を超えた超過分にしても,まず,体系に取り入れようとするし,取り入れることができない部分は,体系に新たな体系を付加するか,体系を作り直すか,体系を修正するか,体系外として受け入れるか,などと考えることである。これは,どの学問でも,体系として学ぶときは,同じである。

19 表の文章化

 先ほど書いた表を,そのまま,文章に直すと,次のとおりであろう。

 第1グループは,完了グループ中,完了幹が形づくる能動相グループであるから,直・能として,過去完了・完了・未来完了(順に,完了幹+eram,完了幹+i,完了幹+ero)があり,接・能として,過去完了・完了(順に,完了幹+issem,完了幹+erim)がある。なお,不・能として,完了(完了幹+isse)がある。
 
 第2グループは,完了グループ中,完了受動分詞が形づくる受動相グループであるから,直・受として,過去完了・完了・未来完了(順に,完了分詞+eram,完了分詞+sum,完了分詞+ero)があり,接・受として,過去完了・完了(順に,完了分詞+essem,完了分詞+sim)がある。なお,不・受として,完了(完了分詞+esse)がある。本来第3グループに所属するもののうち,不・能として,未来(未来分詞+esse)があり,不・受として,未来(目的分詞+iri)がある。

 第3グループは,残りの全ての第3グループ(現在幹グループ)であるから,直・能の半過去・現在・未来(順に,半過去=現在幹+bam,現在=現在幹(語根+直接法の幹母音)+o/m,未来=現在幹+bo(1,2),又は現在幹+a/e+m(3,3b,4)があり,直・受の半過去・現在・未来(順に,半過去=現在幹+bar,現在=現在幹+r,未来=現在幹+bo+r)があり,接・能の半過去・現在(順に,半過去=接続法現在幹+bam,現在=接続法現在幹+o/m)があり,接・受として,半過去・現在(順に,半過去=接続法現在幹+bar,現在=接続法現在幹+r)がある。なお,不・能として,現在(直説法現在幹+re)があり,不・受として,現在(直説法現在幹+ri(3は,動詞幹+i))がある。

20 全体を手短に表現することの難しさの程度

 第3グループ((3))は,基本中の基本を包含する。そこで,大抵の教科書は,(3)の中の基本中の基本を説明し(本により精粗はあろうが),次いで,第1グループ((1)),第2グループ((2))を説明し,(1),(2)を説明する過程で,適宜,(3)の残りを説明する,というような体系を採用するのではないかと想像する。

 要するに,一般の人は,見方次第で,ラテン語教材の各著者の本によって,説明の順序は,似たり寄ったりといえると評価するであろう。かなり違うと評価できるともいうであろう。ええい,面倒だ。難しい。少なくとも,(3)→(1)→(2)の墨守は,無理だ。やめだ。なぜなら,(3)→(1)→(2)の順序を規矩準縄とした説明本は,なさそうだからだ。

私は,接続法は,直説法と同じところで,意味の使い分けの話として,ラテン語の変化形の概要を含め,説明した方が,全体が見えると思う。ついでに,受動相も,語尾を替えるだけであると教える。完了分詞は,英語におけるbe動詞+過去分詞の用法に似ているから,完了分詞の作り方,英語と違う用法などを,早期に学習すべきであると思う。大体2時間くらいの最初の段階で,語尾など変化の操作の全体像を示すことができるのではないか。魔術みたいに次々説明が替わるが,規則的な変化である規則的の意味と,その全体量が分かるのは,得策である。

 しかし,全体像を最初に提示するとか,(2)(3)を(1)に混在させた説明を最初からするとか,最初から(1)(2)(3)を日本語に焼き直した体系で記述するような教科書は,見当たらない。重複を避ける要請はあるだろうが,ある程度重複しても,まず,全体像を示された方が,理解しやすいと思われる。しかし,群盲像を撫でるような気持ちで,一歩一歩,着実に進んでいき,象の姿は,あきらめずに継続して勉強しないと見えてこないのが,一般のラテン語の教科書のように見える。

 それなら,いっその事,逸身氏の叙述の順番に従おうか。

しかし,逸身師を見ると,50話中,大半が,動詞を含む話であるから,駆け足だとしても,今後,相当程度の紙数を要する。
 それでは,話が長くなる。

 ええい,最後の50話まで飛ぼう。

21 第50話。老人と若者の死。キケロ風文体(Ciceronian)

(1) まず,原文を摘示しよう。

itaque adulescentes mihi mori sic videntur , ut cum aquae multitudine flammae vis opprimitur senes autem sic, ut cum sua sponte, nulla adhibita vi, consumptus ignis exstinguitur et quasi poma ex arboribus, cruda si sunt, vix evelluntur, si matura et cocta, decidunt,sic vitam adulescentibus vis aufert, sentibus maturitas.

(2) これを,訳してみよう。

 itaque adulescentes mihi mori sic videntur(若者というものは,私には,かくの如く,死ぬように見える), ut cum aquae multitudine flammae vis opprimitur(あたかも,大量の水によって,輝く炎の力が,押しつぶされるように), senes autem sic(これに対し,老人は,私には,かくの如く,死ぬように見える), ut cum sua sponte, nulla adhibita vi, consumptus ignis exstinguitur(あたかも,自らの自由意志により,何ら力が加えられることなく,費消された火が,消えるように), et quasi poma ex arboribus(そして,あたかも,果実は,木々から), cruda si sunt(もし,まだ未成熟であるならば), vix evelluntur(かろうじて,もぎ取れる程度であるが), si matura et cocta(もし,完熟し,調理できるばかりになっていれば), decidunt(自然に落ちてくる),sic vitam adulescentibus vis aufert(そのように,命を,若者から,暴力は,奪い去り), sentibus maturitas(命を,老人から,熟成が,奪い去る).

(3) 日本語訳は,逸見氏を参考にした。

 省略された部分は,故意に,再度,同じ訳を掲載した。
 逐語的だから,日本語の文章として,やや不自然であるのは否めないが,ラテン語との比較において,わかりやすく,正確性を失わずに,訳されているだろうか。

(4) 第50話は,現在グループの受動態が多い。

itaque adulescentes(若者達,adulescens,-tis) mihi mori(死ぬ,不定法) sic videntur(〜〈不定法〉するように見える。直説法・受動相・現在・3人称・単数,第2変化video,videre,vidi,visum), ut cum aquae multitudine flammae vis(vis,vis,f.力) opprimitur(押しつぶす,直・受・現・3・単,第3変化opprimo,opprimere,oppressi,oppressum) senes(老人達) autem sic, ut cum sua sponte, nulla adhibita(過去分詞・女性,加えられる,第2変化adhibeo,adhibere,adhibui,adhibitum) vi, consumptus(過去分詞・男性,第3変化,消費された,consumo,consumere,consumpsi,consumptum) ignis exstinguitur(直・受・現・3・単,消し去る,第3変化exstinguo,exstinguere,exstinxi,exstinctum), et quasi poma ex arboribus, cruda si sunt, vix evelluntur(直・受・現・3・単,第3変化,もぎ取るevello,evellere,evelli,evulsum), si matura et cocta, decidunt(直・能・現・3・単,第3変化,落ちるdecido,decidere,decidi,なし),sic vitam(vita,-ae,f.) adulescentibus vis aufert(直・能・現・3・単,不規則変化,奪い去るaufero,auferre,austuli,ablatum), sentibus maturitas(maturitas,-tatis.f.).

(5) 再度,原文を摘示しよう。

itaque adulescentes mihi mori sic videntur , ut cum aquae multitudine flammae vis opprimitur senes autem sic, ut cum sua sponte, nulla adhibita vi, consumptus ignis exstinguitur et quasi poma ex arboribus, cruda si sunt, vix evelluntur, si matura et cocta, decidunt,sic vitam adulescentibus vis aufert, sentibus maturitas.

22 終わった。

 この第50話から,英語に取り入れられた単語を見ておく。<>の記号は,ラテン語の派生ないし活用形<ラテン語の元になるもの>英語における派生,などという関係にある。

(1) adulescentis<adulo,adulare,adulavi,adulatum>(英語)adolescens, adolescens, adult

 mori<morior>(英語)mortor,morgage,前回の投稿(2)に出た単語である。

 videntur<video>(英語)video,vision,ビデオ,ビジョン

 aquae<aqua,aquae,f. 水>(英語)aquarium,aqualung

 flammae<flamma,flammae,f.<flagma>(英語)flame,flamenco,flamingo

(2) opprimitur<opprimo,opprimere,oppressi,oppressum<op+primo, op=ob>(英語)press,pressure,impress,impression,depress,depression,compress,compression,repress,repression,suppress,suppression,express,expression,oppress,oppression.

(ア) oppressumという単語は,たとえば,次のような思考に発展する。

(イ) 英語のvisionという単語は,ssではなく,sである。どうしてであろうか。ラテン語videoの4変化は,以下,videre,vidi,visumである。このとき,videreのviのiは,短音であるのに対し,visumのviのiは,長音である。すなわち,ラテン語の完了形は,強変化として,sumの語尾があるが,このとき,sumの前の母音が,長音であるならば,sumであるが,短音である場合,ssumとなる顕著な傾向がある。したがって,私は,ラテン語経由の英語において,ssum→ssionとなっている綴りは,元のラテン語の完了形において,短音である場合を引き継いでいるのが原則であると理解する。

(ウ) たとえば,possessionは,potis+sedeo<sedere,sedi,sessumである。英語で,potentは,力であり,sedは,位置する,座る等の意味である。いずれも,誰でも知っている用語である。文字通りをつなげば,力をもって,その位置に座り,支配するというのが,possessionの原義的なものといえよう。

(エ) そう考えると,英語のposessionとか,possesionという綴りの間違いは,起きない。その間違いは,英語の綴りに対する体系的な基本的考え方の理解不足である。
ラテン語の変化は,possideo,possidere,possedi,possessumとなるからである。この原理が分かっていれば,commissionの綴り間違いも,しない。

(オ) 次に,ラテン語sessumからは,すぐに英語sessionという言葉が想起される。英語のsessionは,座るという意味のsedと関係がある単語だと想像できる。英語では,sitになるが,sed-を残した英語の単語は,もちろん,あるだろうと考えるべきである。

(カ) ラテン語を学ぶと,英単語に該当するものが,自然に想起されることがある。もちろん,その英単語を知っているからであるが,結びつきが分かる。ときに,知らなかった結びつき方を知り,体系的理解が深まる。知らない英単語にも出会うことができる。

(キ) ラテン語を学んで,英語の単語を増やすという営みは,もとより,副次的なものにすぎないというべきである。英単語の増加が,ラテン語の勉強の主たる契機では,いささか情けない。

(ク) 私は,英単語増加が目的で,ラテン語を勉強しているのではない。私の目的は,簡単に言えば,ローマ文化,ラテン語文化が,明治以来の日本人の思考に影響した内容及び程度を知りたいから学ぶ。

(ケ) この営みは,ラテン語を知らなくても,日本人の書いた日本語の書物で学べるといえば学べるが,原語のラテン語を知っていた方が,より便宜である。

(コ) この営みは,知る人ぞ知る,壮大な営みであって,明治以来,これをものにした人は,一人もいない。私は,ものにするどころか,その少しを知る程度に達することもなく,まさに,群盲の一人として,象を撫でる程度で,人生を終わる。しかし,それで良いのである。象の存在を知らないで人生を終わるより,百倍,ましである。

(サ) ラテン語(ローマ文化及びローマ文化に影響を受けた欧米の文化)が日本人の脳味噌に与えた影響を知ることは,逆に,我々日本人が,日本古来からの文物や思考に,知らず知らず影響された部分は何かを知りたいという気持ちになる。日本古来からの文物や思考に触れようという欲求を,強烈に湧き起こさせるのである。ars longa, vita brevis. この要求は,日本古来からの文物や思考,特に明治維新前後における文物や思考と,その後の輸入文物や思考との峻別,融合の過程を辿り,現在の我々の由来を知り,将来の我々の文物や思考を考察するよすがとなる。我々が,社会共同の課題を考える道具となる。

(シ) とはいえ,ラテン語の勉強に,英単語増加という副次的効果が抜群であることは,すばらしい。

(ス) また,ラテン語を知ると,英語の構造を知る役に立つ。

(セ) 英語文化に,ローマ文化,ラテン語文化が与えた影響も,垣間見ることができる。

(3) senes<senex,senis,m.<senior,sanatus>(英語)senate

 sponte<spons,-ontis,f.自由意志>(英語)spontainious,spontainiously

 adhibita <adhibeo<ad+habeo>(英語)adhibit,adhibition

 consumptus<(1)consummo,(-are,-avi,-atum)[con-/summa],summa,(-ae,f.)合計,頂点,完成,<summus,-a,-um(superi)(2)consumo,-ere,-sumpsi,-sumptum,[con-/sumo]sumo,-ere,sumpsi,sumptum手に取る。つかむ。>(英語)consume,consumption

 ignis<ignis,-is,m.>(英語)ignition

 exstinguitur<exstinguo,exstingere,exstinxi,exstinctum<ex+stinguo消す。刺す。>(英語)extinguisher,消火器,extinguish,extinct,stimulus,sting.私は,かって,extinguisher,消火器について,exは,外へという接頭辞であると理解できるが,tingとは,何か分からなかった。しかし,英語に移入されるとき,sが省略されたのである。それで,この語は,ラテン語の語源との関係が分かりにくくなったにすぎないことが分かった。

 poma<pomum,-i,n.果実,リンゴの使用法もあった。>(英語)pomaceリンゴの絞りかす,pomadeポマード,今はリンゴの成分は含有しないだろうが,かつては,リンゴの成分を含有した。

 arboribus<arbor,arboris,樹木f.>(英語)arbor,arboriculture,arborization

 cruda<crudus,cruda,crudum,a.>(英語)crude,cruel.なお,昔懐かしい音楽グループ北山修らのフォーク・クルセイダーズのcrusadeは,crux(十字架などの意味)に由来するから,別の語源であろうが,cruxは,血が流れるから,crudusと全く関連がないとは思えない。

 matura <maturus,matura,maturum>(英語)maturity,mature

 cocta<coquo,coquere,coqui,coctum>(英語)cook,cuisine,kichin

 decidunt<decido,decidere,decidi突然,不意に落ちる。予期に反して,落下する。<de+cado<cado,cadere,cecidi,casum>(英語)ラテン語のcadoは,英語の単語を通じ,英国人のものの考え方に,すこぶる,影響を与えていると解される。英語の単語としては,
case,accident,incident,coincidence,chance,cheese,cascade,casual,casualty,casulities,cadence,ocation,decay,deciduous,precise,suicide等(山並陞一)である。英語は,-cid-などで,出てくる。cata-,catastropheも,cadoの派生的概念であろう。

 vitam<vita,vitae,f. 生きること>(英語)vitaminビタミン

(4) aufert<aufer<au+fer<fero>(英語)は,いろいろある。
(ア) aufer自体は,英語に移入されていない。しかし,fer,feroという概念(言葉)は,英語に多く移入されている。英語を理解する基本的な語である。

(イ) fer,feroは,元来,飛ぶ,運ぶというような意味である。運ぶのはつらいから,耐える,我慢するという概念につながる。

(ウ) グリムの法則b→p→fから考察すると,英語のbear(耐える,我慢する。熊。)は,fer,feroと関連する言葉である。運ぶこと,運ばれた場所であるportは,fer,feroと関連する言葉である。

(エ) ラテン語feroの基本4変化は,fero,ferre,tuli,latumである。feroと,latumでは,ずいぶん違う。しかし,同一単語の能動相の現在形と,完了形の違いにすぎない。

(オ) そこで,英語でも,transferとtranslateは,親戚の単語である。同語源である。気が付きにくい。transferは,AをBに移すという場合に,A及びBは,それなりに広い概念を包含する。しかし,translateは,ある言葉を別の言葉に移す,つまり,翻訳するという限定概念となっている。

(カ) ferryは,船のフェリーであるが,人を場所的に移動させる乗り物の概念である。ferryまで関連させるのは,ご愛敬である。重要な英単語は,
confer,conference,refer,reference,differ,difference,prefer,preference,suffer,sufferance,offer,fertile等の言葉がある。これらの英語の言葉は,基本的には,AをBに移すという広い概念について,状況,方法,思惟,比喩などに照らし,移すという内容を限定した概念といえよう。

               3月25日投稿,4月7日,誤字脱字等を訂正した。
       5月3日,20分ほどの寸暇を見つけて,若干手直しした。     
                                                                 以   上


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