キング月間終わりましたー

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[喜] 352. キング月間終わりましたー

お名前: しお
投稿日: 2003/4/14(18:02)

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みなさん、こんにちは。しおです。
3月からはじめたキング月間、4月10日で一区切りとしました。
途中一週間くらい本を読めなかったので、約1か月強。
読んだ本は、The Dead Zone、The Shining、Firestarter、Different Seasons
の4冊でした。
”The Dark Half”と、sumisumiさんとお話した”The Girl who loved Tom
Gordon”がこの月間内に読めなかった・・・。続けて読みたいのですが、これ
以上続けると、キングのストーリーに頭を占領されて他のことができなくなっ
てしまうので、一休みです。今年度は英語を聴くことと口に出すことに力の6
割以上は割こうと思っているので、これらが軌道にのったらまたぼちぼち読も
うと思います。

<むずかしさ>
キングを読むとき、児童書を読むときと比べてスピードが3〜4割くらい落ち
てしまいます。前読んだOrson Scot t Cardの“Lost Boys”にくらべても1〜
2割スピードが落ちていると感じです。キングの文章の印象は

1、 一つの文章が長い。
2、 比喩が多い
3、 複数の登場人物の境遇、どういう育ち方をしたか、家族・友人がどう
いう人間か、住んでいる部屋、着ている服の描写にいたるまでが細かい。こう
いうところはGRになるとばっさりきられてしまいそうなところです。そういう
人物の行動の背景にあるものを克明に書くことで、ある人物の行動に必然性が
でるし、各人の運命が絡み合って物語に奥行きがでる、ともいえるけど、本筋
だけをすっきり読んで行きたい人には重荷かも。

なので、どうしても他の本に比べてじっくり読んでしまうのかなと思います。

<感想>
★The Dead Zone
 Jonnyが昏睡からさめて、壮絶な手術のリハビリに耐えるところを読んでいて
胸が詰まりました。こんな痛みに耐えても元の自分にはもどれないし、失った
5年とその先に広がっていた未来は永久に奪われてしまった。約12年前に邦
訳を読んだとき、Jonnyの元恋人のSarahの気持ちが分かった気がしていたけ
ど、いまの方がその喪失感と悲しみがよく分かります。 
 Part One の”The wheel of Fortune”のところで、Jonnyが交通事故に会う
までの50ページを超えると一気に物語が展開して面白くなります。Jonnyと
Sarahがお祭りの出店で賭けをしたThe Wheel of the Fortuneの不吉なイメー
ジが物語の中で何度もあらわれるので、そのイメージをつかめば大丈夫だと思います。
 Jimmy Carter氏が民主党の大統領候補になる前後という時代設定で、選挙キ
ャンペーンのシーンがよく出てくるので、このへんの政治状況を知っている方
はより面白いでしょうね。

★The Shining
 最初は5歳のDannyと母親のWendyに感情移入してよんでいましたが、途中か
らJackに感情移入の対象が移っていきました。なんとか酒をのまないように、
自分の感情を抑えようと必死の努力をしているのに、しばしば自分を失って、
自己嫌悪を繰り返し、まるで破滅への道を歩んでいるようなJack.。Jackの父親
もアル中で、Jackの精神的な弱さのかげに虐待の連鎖が存在します。
 Jack,Wendy,Dannyが、ちょっとしたはずみで壊れてしまいそうな3人の暮ら
しを必死に保とうとする様子が、心の細かいひだに至るまでびっしり描写され
ています。読んでいて心が痛くなりますが、その部分が素晴らしいと思いま
す。こういう3人の抜き差しならない状況と、ホテルの悪霊がJackの心の隙に
しのびこんでいく過程があいまってなんともいえない怖さです。
 後半「3匹のこぶた」の有名なせりふ”Not the hair of my chinny-chin-
chin” ”I’ll puff,I’ll huff…”がでてきて、Dannyが追い詰められた状況
でこのセリフがとても怖かった。

★Firestarter
 これは上記の2作品よりも読みやすいと思います。というのは、Andyと娘の
Charlie、そして2人を追い詰めるThe Shopのエージェントたち、という対立が
明確だからです。
 また、どうして2人が逃げ続けなければならないのか、過去にどんな事件がお
き、どれほど深い心の傷を負っているか、ということが、主にAndyの思考のな
かで語られているので、密度の濃い描写が続いても比較的楽です。(といって
もCharlieや他のAgentたちの内面の描写があっさりしているという意味ではあ
りません。)
 また、出だしからAndytとCharlieがShopのエージェントたちに追い詰められ
る場面ではじまるので、導入部の掴みも十分。ストーリーにぐいぐい引っ張ら
れて読んで行きたい人にむいていると思います。
 登場人物の中では、私はエージェントのRainbirdに妙に惹かれてしまいまし
た。RainbirdはCharlieに対して歪んだ不吉な愛情を抱きますが、それでも彼に
とっては真実の恋であり、つい彼の恋が成就しないかと思ってしまったほどで
す。
 それから、Charlieが好きな絵本として、Pooh, Mr.Toad(これはThe Wind
in the Willowsでしたっけ)Willy Wonka’s Great Glass Elevatorがでてき
て、親しみを感じて嬉しくなりました。

★The Different Seasons
 これは4本の中編小説集です。中編といっても、それぞれが長編1本に値す
るような密度なので覚悟して(^^)読んだほうがいいかもしれません。
 
 The Body”(映画スタンド・バイ・ミーの原作)は邦訳を読んだことも映画
を見たこともなかったので、真っ先に読みました。
たった2日間だけど永遠に記憶に残る冒険。大人になって「あのとき」を振り
返ったときの、痛みに似たなんともいいようのない感情が全体に漂い、胸を打
たれる作品でした。
 ただ、この作品は、他と比べて少年たちが仲間同士で話す言葉はスラング・
省略がものすごく多いのです。読んだ中で一番難しいかも。そういうのを気に
しないでいけるかたには是非是非お薦めします。物語の最後へ近づけば近づく
ほど面白さ・感動度ともアップします。

 Apt Pupilでは、まさに典型的なアメリカのスポーツ万能成績優秀少年Todd
(金髪で歯も真っ白)が、ナチスの残虐行為の写真に目を奪われたことをきっ
かけに、どんどん精神を腐らせていく様子が、まるで真っ黒い底なし沼に音も
なく沈んでいくようで本当に怖かった。Toddが嘘を重ねて、ますます立場を悪
くしていく様子に読んでいる間中ドキドキさせられました。
 Shawshank Redemptionは邦訳で読んだとき好きだった作品で、中身を覚えす
ぎていたために、ドキドキハラハラ度は低かったのですが、何回読んでも素晴
らしい作品です。
 The Beathing Methodは読んでいて、クイーンの「黒後家蜘蛛の会」のシリー
ズを連想しました。
 読みやすさの順でいえば、
Apt Pupil>Shawshank Redemption(ショーシャンクの空に)>The Breathing
Method>The Body
 面白さ・感動度は
The Body>Apt Pupil=Shawshank Redemption>The Breathing Method

 でした。

ここまで長い文章につきあってくださってありがとうございました。


▼返答


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