英語多読に関するQ&A
多読クラスによく寄せられる質問についてお答えします。
Q1 多読教材については、「自分の実力より一つ下のレベルから始めるのが良い」という考えかたを聞いたことがありますが、SEGはどういう方式ですか?
A1 SEGでは、いままで洋書多読経験が無い場合、どんな人も レベル0のOxford
Reading Tree/ Literacy Land から始めます。というのは、レベル0の本は英語を理解する上で一番重要な単語で構成されています。一方、レベルの高い本では、最重要語の比率は下がってしまいます。多読、すなわち英語を単語のまとまりで読む技術を身につけるには、重要・頻出の単語ほど理解度を高くする必要があります。ですから、レベル0の本から、順々にレベルを上げていくのが最も効率的なのです。
Q2 「つまらなくなったらやめる」方式では、実用的な英語能力がつかないのではありませんか?
A2 英語学習には、基礎段階(インプットの量を重視する段階)、中期段階(インプット・アウトプットの質を重視する段階)、応用段階(仕事の道具として使う段階)の3つの段階があると思います。基礎段階から中期段階では、理解可能な英語をできるだけ大量にインプットすることが大切です。つまらないものや、わからないものの場合、読書スピードは遅くなり、記憶に残りません。従って、時間あたりのインプットの量が少なくなり、効率が著しく低下します、私達は、実用的英語力をつけるためのいろいろな学習法の評価は、単位時間あたりの英語のインプットの量でなされるのが最も客観的でであると考えています。その意味でもっとも効率の良い方法は、実は、「楽しんで読書をする」ことなのです。楽しんで読書をするためには、
1) 辞書無しで読む
2) 分からないところはとばす
3) つまらなくなったらやめる
のSSS英語多読法の多読3原則が重要となります。
「つまらくなったらやめる」方式は、一見時間がかかり単位時間あたりのインプット量を減らすようにも見えますが、つまらなくなるまではインプットしているのであり、つまらなくなった後は、もっと他の自分の興味を本を読むことによってインプットの効率を落とさないで済むので、「つまらなくなったらやめる」のは、実は、実用的な英語力をつける一番の早道なのです。
もちろん、つまらないものも読み切ることも英語のプロになる方には必要な訓練だと思います。しかし、英語学習の基礎段階でそのような訓練をする必要はありません。
Q3 どのタイミングでレベルを上げていくのでしょうか?
A3 SEGではプロの多読講師が指導します。ですので、受講生の方は、自分の好きそうな本をどんどん手にとって、講師に「読めた!」、「難しかった!」、「分からなかった!」、「つまらなかった!」などの感想を伝えて下さい。基本的には、慎重かつ大胆にレベルをあげていきます。
Q4 どうして英和辞典を引いてはいけないのですか?
A4 英和辞典を引かないように勧める理由は、次の4つです。
1. わからない単語を引いていくと、読書を快適なスピードで楽しめない
2. わからない単語を文脈や状況の中で推測する能力を高める
3. わからない単語があっても、それを抜かしても文意を推測する能力を高める
4. 英和の辞書のほとんどが、英語と日本語の1対1対応の形でかかれているため、英語を理解する上で、かえって妨げになる場合がある。
1.〜3.については、どなたもその合理性に納得されるでしょう。ここでは、4.についてのみ補足します。
例えば、"cupboard"いう単語を英和辞典(研究社リーダーズ)で引くと「食器棚(一般に)戸棚、押入(closet)」とあります。一方、英英辞典(Oxford
Advanced Learners' Dictionary)で引くと、"a
set of shelves with a door or doors in front,
either built into the wall of a room or as
a separable piece of furniture. Cupboards
are used for storing food, clothes, dishes,
etc: a kitchen cupboard / a linen cupboard
/ a broom cupboard"と説明してあります。英英辞典を読めば、食器棚だけをさすわけではなく、家具または備え付けの棚ということがわかりますが、英和辞典をひいた場合には、状況ごとにもう1回引き直す必要が出てしまいます。
もうひとつ、例をあげましょう。cay という単語を研究社リーダーズで引くと、「(西インド諸島の)州、小島、州島」とあり、LONGMAN
現代アメリカ英語辞典では、"a very small
island formed from CORAL or sand."とあります(OALDにはのっていませんでした)。州といわれても、普通の人たちにはそもそも何のことかわかりません。しかし、英英辞典の定義をみれば、どんなものを指すのか一目瞭然です。単語の定義を知ることは、英語の意味に似た日本語を覚えることよりはるかに重要なことです。
※辞書を引くことを、一切禁止するわけではありません。どうしても知りたい単語を、引いて確かめるのはかまいません。この場合、一冊につき、3語程度を目安にして引きすぎないようにして下さい。また、読書中は、読書スピードが落ちるのでできるだけ引かないようにしましょう。
Q5 辞書無しで読んでいって語彙を増やせるものでしょうか?
A5 はい、増やせます。実際、暗記しなくても、辞書を引かなくても語彙はどんどん増えていきます。もちろん、どうしても知りたい単語は辞書を引いてもかまいません。
Q6 単語帳を作って、語彙を意識的に覚える必要はないのですか?
A6 必要ありません。SEGの多読クラスでは、文章を読む中で自然に語彙を増やしていくことが最も効率的と考えています。わからない単語を書き出して、単語帳を作るということになると、読書のリズムが阻害され、インプットの効率が落ちてしまいます。多読をすることで、自然に語彙力も含めた総合的な英語力ついてくるのがSEG多読クラスの特徴です。なお、Oxford
Picture Dictionary を見ながら単語を覚えたり、OxfordのBookworms の巻末の英英単語帳を読書前後に読んで記憶を強化するのは時間がかからず良い方法でしょう。
Q7 多読クラスでは、精読を否定しているのですか?
A7 精読を否定しているわけではなく、易しい本の精読は初期の段階から取り入れています。但し、英語学習法として、初期には、精読中心でなく、多読中心で行うべきだと考えています。SEGの多読クラスも、「英語を正確に速く理解する」能力を最終的な目標としています。ただ、その目標を達成する方法が従来の方法と異なるということです。「短い短文の正確な理解」から始めてその長さを長くするのではなく「易しい長文の大意の理解」から始めて長文の理解度をあげていくという方法をとるのが多読クラスの特徴です。専門文献を読むときには、ゆっくり正確に読むことが必要になるのはいうまでもありませんし、そのような場合には辞書を引くことも必要でしょう。但し、英語学習法として、英和辞書を引くことは必要最小限にすべきであると考えています。
ところで、「正確に読む」ことが必要な場合、一番大事なことは一体なんでしょうか?それは、文法でも語彙でもなく、背景知識だと思います。
例えば、" Write down the derivative
of log x." という文章を、数学が分からない人が辞書を片手に
「log x の導関数を書け。」と訳しても、log
x がどんな関数で、導関数とはどんな意味なのかを知らなければ、この文章を理解したとはいえません。あるいは、"John
loves Mary."といった文章があったとき、これを「ジョンはメアリーを愛している」と訳したら、「正確に読む」ことになるのでしょうか?それで十分と思う人たちもいるでしょう。でも、私達はそうは思いません。ジョンはどんな人でその前にはどんな人を愛していて、メアリーがどんな人で前には誰を好きで、ジョンとメアリーはいままでどんな関係でっていう背景が分かって初めて
"John loves Mary."の「正確な意味」がわかるといえるのではないでしょうか?
ですから、いつでも「正確に読む」なんてことは原理的に不可能なことです。「必要に応じて、正確さを上げて読む」ことが実用的な読み方であり、そのような読み方しか私達はできません。専門文献を読むときや、試験を受けるときには、正確さをあげて読む必要がありますが、小説とかを読む場合、正確さをあげるために読む速度が遅くなって楽しめないとすれば、楽しむための読書としては正確さを必要以上にあげない方が良いことになります。実際、小説では、背景は必要な範囲でしか提供されないので、残った部分は適当に想像して読むしかありません。どんな場合でも、適当に補って読むのですから、多少わからないことを飛ばしたって、楽しめる限り問題は全くなく、楽しんで速く読む方が英語の上達が速いというのが私達の主張です。「正確に読む」呪縛を取り払えば、ペーパーバックを読めるようになるのは思ったより難しくないし、100万語程度の読書をすれば、自然に文法の基本が身についてしまいます。英語学習の初期の段階では、「正確さ」より「読む速度」、「読む量」を第一に優先にすることが、英語の単位学習時間あたりの英語の理解度を最大にする最良の方法であるというのが多読クラスの考えです。 なお、カリフォルニア大学のKraschen教授は、ほとんど同じ考えを既に発表されています。
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