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夏目漱石の「多読のすすめ」

夏目漱石(本名 夏目金之助 1867-1916)は、戦前の日本を代表する文豪です。しかし、文学に専念する前は英語教師でした。
帝国大学文科大学(東京大学文学部)を卒業後、東京高等師範学校、松山中学、第五高等学校などの教師生活を経て、1900年イギリスに留学し、帰国後、第一高等学校で教鞭をとりながら、1907年に東大を辞職するまで英語教師として学生に英語を教えていました。漱石は、その当時から多読の有用性を次の様に説いています。

“英語を修むる青年はある程度まで修めたら辞書を引かないで無茶苦茶に英書を沢山読むがよい、少し解らない節があって其処は飛ばして読んでいってもドシドシと読書していくと終いには解るようになる、又前後の関係でも了解せられる、其れでも解らないのは滅多に出ない文字である、要するに英語を学ぶ者は日本人がちょうど国語を学ぶような状態に自然的習慣によってやるがよい、即ち幾変となく繰り返し繰り返しするがよい、ちと極端な話のようだが之も自然の方法であるから手当たり次第読んでいくがよかろう。彼の難句集なども読んで器械的に暗唱するのは拙い、殊に彼のようなものの中から試験問題等出すというのはいよいよつまらない話である、何故ならば難句集などでは一般の学力を鑑定することは出来ない、学生の綱渡りが出来るか否やを視るぐらいなもので、学生も要するにきわどい綱渡りはできても地面の上が歩けなくては仕方のない話ではないか、難句集というものは一方に偏していわば軽業の稽古である。試験官などが時間の節約上且つは気の利いたものを出したいというのであんな者を出すのは、ややもすると弊害を起こすのであるから斯様なもののみ出すのは宜しくない。”

夏目漱石『現代読書法』 (1906年月10日) 原文はこちら


“英語は斯ういふ風にやつたらよからうといふ自覚もなし、唯早く、一日も早くどんな書物を見ても、それに何が書いてあるかといふことを知りたくて堪らなかつた。それで謂はゞ矢鱈に読んで見た(中略)先づ自分で苦労して、読み得るだけの力を養ふ外ないと思つて、何でも矢鱈に読んだやうである”

夏目漱石『一貫したる不勉強』


※おそらく、夏目漱石が多読をすすめていた洋書のレベルは、今でいえば、Sidney Sheldon 程度のものであったと想像されます。

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