SEG |
筑波大附属駒場高校2年(当時)
2005年2月26日
■高1の夏期講習〜高2の3月まで、多読クラスを受講■
■高3時は、「Power English」を受講、京大法学部現役合格■
多読を始めてもう一年半にもなる。そこで何故僕が多読を始めたか、又どんな本を読んできたかを綴っていこうと思う。
僕が英語の多読なるものを知ったのは、高一の春期講習でSEGのパンフレットを見た時だった。だがこの時は、受講しようとは思わなかった。当時の僕は理系志望で、SEGには本質的な『「心に広がる数学の世界」を学びに通っていたから、『めざせ100万語!』 と言われても、「へぇー。」以上の感想を持たなかったし、それに僕は高校受験者で、中学三年間で一生懸命に勉強したので、英語は得意科目のつもりだった。井の中の蛙、大海を知らず。
この井の中の蛙が井戸を出て、大海に船出するのは、同じ年の夏期講習で、古川先生の数学を受講したのが、きっかけだった。先生は講習の最終日に、多読の案内を配り、「残りの夏休み、暇だったら英語の本でも読んでみてください。」とおっしゃった。本が好きで、小学生の時から図書館に通っていた少年の興味を引くには十分だった。多読図書レベル診断で、上の方に入れなかったのも手伝い、僕は夏休み中に、多読入門の講座を受講しようと決めた。
「何、これ?」が第一印象だった。講義なし、辞書なし、とにかく読め。新鮮というよりも、「これでいいのか?」と不安ととまどいの方が強かったと思う。
でも二日目、三日目と受講すると、頭の中で日本語に訳さなくても、意味が分かるようになり、楽しくなった。読む本のレベルが上がっていくので、英語脳がつくられていると実感できた。僕は、最終日前に多読クラスの受講を申し込んだ。
話がそれるが、個人的に、多読の良い点は、生徒が楽しく英語の勉強できることだと思っている。英語学習はマラソンである。努力は報われると信じ、日々、精進せねばならぬ。でも、その方法がつまらない長文の読解、無味乾燥なルールの習得、単語の強制暗記だとしたら、やる気が出る人はほとんどいないんじゃないだろうか。その点、多読は心配無用。自分で面白いと思う本を偏食すればよくて、もし期待が外れたなら、他の本に移ればいい。楽しいならば、やる気がでる。これは真の命題なり。多読学習者は、一冊読めた、また一冊読めた、と言う。あと残り何問かな、とは言わないのだ。
話を元に戻そう。僕は Graded Readers 中心に多読を進めていった。特に Oxford と相性が良くて、夏の講習中に Stage1の The Adventure of Tom Sawyer、Under the moon、One way-ticket を読んでいた。巻末の GLOSSARY が利用できたからだろう、読書手帳に Oxford の六文字が増えていき、時折 Penguin の姿が見え、突如 Frog and Toad や Curious George が集団で出現するという無秩序極まりない世界が創造された。小さい頃に読んだ絵本は懐しかった。読んだことのある本や観たことのある映画の小説版も面白かった。ただ、この頃は早くレベルを上げようとして、少し背伸びしていた気がする。
そんな僕に、多読最大の障壁・レベル3の壁が立ちはだかった。Chemical Secret を読んだのはその年の十月中旬だったが、読み終わるのに二時間位かかり、読後の感想は「面白かったけど、疲れた。」だったと記憶している。後で聞いた話が、 Stage2〜3で最初の100万語を迎えるのがいいらしい。僕はその時、25万語だった。五体満足で帰って来れたら、奇跡である。仕方なく、僕はつま先立ちを止めて、Stage2を沢山読んだ。又児童書にも手をつけ、The Zack Files を読んだ。次々と weird なことが起こるのに、妙に現実的な親子がおかしかった。多分、これで難しい単語や複雑な構文を習得できたのだろう。一ヵ月後には The Picture of Dorian Gray、Tales of Mystery and Imagination、A Christmas Carol(Oxford)等を読めるようになった。冬休みには Stage3党が、読書手帳議会で一党優位を確立した。だがそれの束の間、新野党・Stage4党が頭角をあらわし、結局僕は政権交代直後に100万語を達成した。
この辺の本の特徴は、読みごたえのある本が増えるということだろう。上述の本は言うまでもなく、The Rail Way Children、The Prizoner of Zenda、The Secret Garden(Stage3)、Dr Jekyll
and Mr Hyde、The Silver
Sword、A Tale of Two Cities(Stage4)等の本が目白押しだ。ここで古典の森にはまってしまい、脱出できなくなった人々がいても、不思議ではない。
さて、この辺で僕は、無謀としか言いようない本に挑んだ。Harry Potterに挑戦したのだ。レベル六の本を Stage4で読むとは、究極の背伸びである。何故、こんなことをしたかと言うと、読書手帳に「そろそろ何か日本語でよんで好きな本の原書に一回挑戦してみるのもいいかもしれません。」と先生がコメントされ、原書で読んでみたい本= Harry Potter なる公式が、脳裏に浮かんだからである。ああ、なんて安易な選択だろう。
何はともあれ、僕は一、二月に Harry Potter シリーズ第1〜5巻を読破した。結果は、日本語で読んだことがあったのと、このファンタジーがイメージ豊かだということに救われたと言うべきだろう。ただ、世界中で大ベストセラーになっただけのことはあって、強い力で話の中に引き込まれるので、知らない単語の大行進も、気にならなかった。Harry、Ron、Hermione と一緒に魔法の世界で冒険できて、楽しかった。
次に僕は Darren Shan、Deltra Quest を読んだ。Darren Shan はバンパイアの怪奇小説である。全く先が読めないし、Harry Potter よりも薄い本なので、結構楽しめた(先に読めばよかったと秘かに後悔もした)。Deltra Quest は王国中に散らばった宝石を集める冒険物語で面白かった。
Deltra Quest 制覇後、僕は再び Graded Readers に戻り、Stage5〜6の本の中で、高二のゴールデンウィークを過ごした。Night without End、Deadlock、Great
Expectation、David
Copperfield、Oliver Twist、Jane Eyre等を読み、僕は300万語を突破した。丁度この頃だったと思う、学校の成績がよくなったのは。それまでは期末テストは平均位しかとれず、級友達は、僕は英語の本を読んでいるじゃなくて、見ているんだと確信していた。それが一気に30点もはね上がった。原因は読解力と英作文能力の向上だった。学期末「英作文ヤベぇ。」とか「平均越えしたからいいや。」とか言っている○○会生を尻目に、ある一人のSEG生は、「頭の中が受験ゴミでいっぱいのお前らが英語できるわけねえよ。」と優越感に浸っていた(関係者の方、ゴメンナサイ)。
多読はテストになかなか結びつかないが、一度結びつくとすさまじいと思う。何せ英単語帳で日本語を勉強できるのだから(笑)。周囲の悪戦苦闘もつゆ知らず、スラスラ問題文を読み終えて、サーッと設問を片付け、課題英作文もラクラク書く。これを英語ができると云わないならば、何を以って英語ができると為すのか。答えてみよ。
これ以上書くと、こいつは絶対に金をもらっていると思われるに相違ないので、本題に戻ろうと思います(ちなみに報酬は0円です)。ゴールデンウィーク明け、 Animorphs と Sidney Sheldon との出会いが待っていた。Animorphs は瀕死のエイアンによって、宇宙人Yeerks の地球侵略を知った子供達の話。武器として与えられた動物変身の力で、彼ら Animorphs 達は、地球の運命をかけて、戦うというストーリー。これにはまってしまい、一巻から四十巻まで一気に読み、気付いたら、夏休み半分過ぎてしまっていた。 残り半分は Sidney Sheldon の Paperback を読んで過ごした。分量は多いが、英語は平易なので、大人向け Paperback の入門として最適だそうだ。The sky is Falling、TheBest Laid Plans、 The Doomsday Conspiracy、Tell Me Your Dream、Master of the Game、Memories of Midnight、The Other Side of Midnight など、流石、ベストセラーになるだけの理由のある本ばかりで、とても面白かった。僕はSEGの図書室にある Sheldon を全部読んだ。かつてのカオスはどこへやら、読書手帳は Animorphs と Sheldon とで、ようやく秩序のある世界になった。
しかし熱力学第二法則曰く、「自然現象は乱雑さ増大の方向に進む。」僕の読書手帳も例にもれず、元の状態へ戻っていった。Sheldon 派が全て読まれた時、Grisham 派が、政権獲得を目指すも、文体が合わず、失脚。だが失脚直後、Grisham 派は Graded Readers となって復帰。束の間の安定政権を樹立した。その後、Family Honor、Perish Twice、Tell No One、Goodnight Irene、Deal Breaker が登場するも、長期政権をつくるには至らず、僕はそのまま冬休みを迎えた。
この冬休みは僕の多読人生の中でも、極めて重要な出会いがあった。Penguin Classics との出会いである。ここには、世界各国の古典的文学作品が収められていて、僕の好奇心をそそった。SEGの図書室にはなかった。僕は遂に自分で洋書を買うようになった。Nietzscheの Thus Spoke Zarathustra、Ecce Homo、Beyond Good and Evil、Stendhal のThe Red and Black、Dostevsky のCrime and Punishment。どれも英語は難しかったけど、感動した。他には、Hemingway の The Old Man and the Sea、Farewell to Arms、The First Forty-nine Stories、Sun Also Rises を読んだ。とても面白かった。個人的な意見では、Hemingway はハード・ボイルド・スタイルという無駄な修飾を省略した、乾いた文体で有名だから、他の名作より読み易いと思う。
さて、まとめに入りたいと思う。僕が多読を始めて一年半が過ぎた。その間に、僕は1000万語を達成した。テストの点も上がり、自分で好きな洋書を買ってきて、読めるまでになった。皆SSS多読のおかげである。
でも、それだけではない。何といっても、多読で読書の幅が広がったのが、大きな財産である。外国語の習得は、自分の世界を広げるのが目的だろう。僕は今、本屋で日本語だけでなく、英語も読める。これが、一番大きいことだと思う。
最後に、先生方、ありがとうございました。
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