確かに殺人事件は起きるのですが、謎解きではありません。
日本に来た1人の若い英国女性の、モノローグ小説という趣き。
決して明るい雰囲気ではないので、好き嫌いがあるかもしれません。
この小説は、東京でなくても、大都市が舞台なら成立すると思います。
が、東京の大きさを知っている私たち日本人が読むと、
主人公の孤独感がひしひしと伝わるでしょう。
全体が獏とした回想シーンで占められるので、小説のイメージも
モノクローム、またはセピア調な感じ。
が、残念ながら私は主人公のLucyを含め、どの登場人物もあまり好きになれなかった…。
みなさんの評価が高いのにすみませんが、あ~、長かった...という印象です。
200ページ過ぎるまで平板な話が続きます。舞台が日本なので、東京の風景など
馴染み深い光景が英語で描写され、「あ~、英語ではこういうのか」という興味が
無ければ途中で投げ出していたでしょう。
ところで、気になって手元の時刻表で調べましたが、山手線一周って
34.5Kmですね。これを歩くというのはスゴイなあ.....
ミステリーの賞を取ったお話ということですが、印象に残ったのは一人の女性の人生と恋愛でした。ミステリーの部分がグイグイと引っ張ってくれるので、先へ先へと読み進める力になってくれます。ただ、あまり謎解きに重点を置いて読んでいると、最後にちょっと肩透かしをくってしまうかもしれません。でも、謎以外の部分に十分読み応えがありますのでご安心を。
人付き合いの苦手な不器用なLucyの姿がとっても切ないです。
大人向きPB初挑戦として読んでみましたが
読みどころ満載、読み応え十分で、堪能できました。
ミステリーとしてはちょっと異色で、そのぶん文学的と言えるでしょうか。
読み進むうち主人公の孤独がヒシヒシと胸にせまってきて、とても切なかったです。
Lucyの日本での生活についての描写に、異国で暮らす心情や発見がちりばめられていて
前中半はエッセイや旅行記のような味わいがあります。
そしてその中に恋愛小説という別の側面が見えてきます。
でも、しっかりミステリーという軸が通っていて、
全体に緊張があり最後まで結末がわかりません。