最初の、Julian Bamfordさんは文教大学の先生で、_Extensive Reading in the Second Language Classroom_の(Richard Day氏と)共著者です。 Bamfordさんは多読は実際に英語を使うことが利点であると話しました。従来の講義形式の英語授業や、TOEIC何点をめざせ式の問題集を用いての英語学習では、生徒はstudent、learnerです。それに対して、多読では英語の使い手 user、そしてapprenticeになるのがいいところ。 英語を身につけるにはとにかく時間がかかります。長く続けるためには楽しむことがとても大切。 多読でそれが可能になるし、多読においては、教師の役割は励まし、興味をもたせるコーチであるとのこと。 そして、パネルの前にタドキストの皆さんが好きな英語の本を見せ合いながら楽しく語り合っている様子にとても感激したとのことでした。
次は、Rob Waringさん。リーディングや語彙獲得を専門とする研究者で、岡山のノートルダム清心女子大学の先生。 Waringさんによると、中学高校で6年学んでも英語が身に付かないのは当たり前、とにかく授業時間が少なすぎるとのことです。時間がわずかな中、自立して英語を学ぶには多読はとても重要。ideaという単語がどのような言葉と共に用いられるかなど、言語の感覚(日本語で黒白テレビとは言わずに、白黒テレビと言うなど)を身につけるには、その言葉、表現に数多く接する必要があり、それには多読。多読は言語学習の一方法であり、その中でも最も効果的。ただし、多読を始めるには基本500語をとりあえずは短時間で覚えて、スペルだけは認識できるようになるのが前提。また読んでいる文章を完全に正確に内容を把握するためには98%は分かる言葉でないといけないという話でした。
次は、酒井邦秀さん。酒井さんの話は、従来の多読とSSS多読の違いから入りました。授業中のほとんどの時間を静かに学生が読書する時間にあてる。中には寝てしまう学生もいるけれどほっておいて、一人で読み始めるのを待つとのこと。 そして、教えない、おしつけない、テストしない、の多読指導3原則を紹介。 そして、多読の成果も「常識」という枠を超えていると思われるそうです。驚異的な成果として、多読を初めて1年足らずでスティーブンキングの_IT_を読み出した中学1年生がいたように、多読で獲得できる語彙なども従来の常識、見方を超えたものがありそうとのことです。 そして先ほどの Waringさんとは異なり、多読を楽しむには理解できる言葉が半分程度でもいい可能性はあるという話をしました。
後半のセッションは、まず、BamfordさんとWaringさんが設立メンバーとなっている 今年から始まった、GRから選ぶ英語学習者文学賞の説明がBamfordさんよりありました。レベル別に候補になった本と受賞された本は下のサイトにあります。 ■Language Learner Literature Award Rob Waringさんのサイトは以下の通りです。 続いて、会場から出た質問用紙からトピック別に3人のパネリストから意見を聞きました。Bamfordさんは授業では直接多読指導は行わず、個別に多読をするようにしむけており、Waringさんは授業で様々なことを教えて、課外で多読をさせており、酒井さんの授業は多読のみ。多読がきわめて有効であることが3名の共通の認識でも、考え方の微妙な差が指導方法の違いに表れているようです。 面白かったのは多読授業でどのように成績、評価をしたらいいのかという話題のとき。
なぜかその直前に酒井さんが部屋を一時的に抜けたものだから、お二人は「学生が寝ているのをどう評価するのか、まず聞きたい。酒井さん、逃げたんじゃないの?」と。 そして出席のみで評価していると聞き、ほ〜なるほどね、という反応。 特に、Waringさんは何かやったらすぐにその成果をテストするという思い込みはやめた方がいい、それは不幸のもと、目標は常に高くなっていくのだから、一生満足することはあり得ない。とにかく英語を使い続けるuser であることが大切と強調していました。 実はパネルが始まる前の打ち合わせ、そして事前の告知では、途中で日本語で内容をまとめて説明することになっていました。Bamfordさんは通訳がいらないように分かりやすく話したいとのことでしたが、Waringさんは伝えたいことがいっぱいあるし、分かってもらいたいから2、3分おきでも日本語に直してほしいというリクエストでした。 |