「脳内音読」と「音読」の間(はざま)

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2049. 「脳内音読」と「音読」の間(はざま)

お名前: 慈幻 http://mayavin.txt-nifty.com/labotadoku/
投稿日: 2005/6/22(00:41)

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どうも慈幻です。

英語に関しては語数を数えなくなったので、正確な語数は不明ですが、音」の入力に関しては、LRと「ながら聞き」をあわせると、100万語行くかどうかというところです。

本日は、最近始めた英語の「音読」で感じたことや、名古屋オフ会での実践報告を聞いて考えたことを基に、強引に「脳内音読」と「音読」について論考をまとめてみましたので、何かの参考になるかと思い、紹介させて頂きます。

皆様の忌憚ない、ご意見・ご批評を頂ければ幸いです。

最近、「加速学習」や「フォトリーディング」にすっかり嵌ってしまい、その理論・技術背景としてよく言及されるNLPについても、泥縄式に復習してます。

(と言うのも、大学の頃からNLPは知っていたのですが、その頃はまだ日本語に翻訳され始めたばかりで、今ひとつその有効性が理解できず、きちんと勉強しないままだったからです。)

NLPとは、“Neuro-Linguistic Programming”(神経言語プログラミング)の略称で、1975年に米国で、ジョン・グリダー(カリフォルニア大学言語学教授)とリチャード・バンドラー(同大学心理学科学生)が、催眠療法のミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールツ、家族療法のバージニア・サティアという3人の天才心理療法家の言葉遣いや非言語によるコミュニケーションなどを中心に研究し、誰にでも天才的なコミュニケーション・スキルを学べるようにモデル化したものです。

その後、様々な分派が生まれ、色々とややこしくなってるようですが、

1 脳をコンピューターに、意識をプログラムに見立てる
2 個人の心理的問題等をプログラムのバグに見立てる。
3 言語・非言語的コミュニケーションによる他者の介入や、問題を抱えた本人が技術を学ぶことで、プログラムの書き換え=問題の解決が可能と仮定する。

という3つの作業仮説に基づく、雑多な理論と技術の混在した心理療法の一種くらいの理解で問題ないと思います。

正に玉石混交の態をなした理論・技術群(体系と呼べるほど整理されているようには見えない(苦笑))なのですが、色々と面白い理論や技術があるので、必要に応じて、使えそうなところをつまみ食いしたいと思っています。

そこで、今回は、NLPの基本理論である認知構造に関する概念を使って、脳内音読や音読の問題を考えてみたいと思います。

ただし、私なりのNLP解釈なので、正統的なNLP理解とは食い違う部分も多々ありますので、NLPに興味をもたれた方は、各種入門書を参照してください。

まず、NLPでは、脳をコンピューターに、意識をソフトウェアと見なします。

これを私なりの解釈でコンピューターの要素に対応させると、

1 入力装置   五感。
2 制御装置   顕在意識が存在する場所。
3 演算装置   様々な無意識的処理がなされる場所。
4 記憶装置   記憶が格納されている場所。
5 出力装置   体。
6 基本OS    所謂、無意識。感情や本能と呼ばれるものも含む。
7 各種アプリケーション 様々な能力・技術。

ということになるのではないかと思います。

入力装置である五感には、Lead Systemと呼ばれる他の感覚よりも優位なものが存在するとされます。

例えば、同じ英語を学ぶにしても、視覚の優れた人は本を読む方が、聴覚の優れた人は歌や映画などで音を聴く方が効率が良いと言うことです。

制御装置である顕在意識では、Representation Systemと呼ばれる処理システム、所謂、脳内感覚=イメージが存在します。

言い換えるなら、我々が認識しているのは、現実そのものではなく、現実を基に、脳内で再構成された影であるということです。

そして、このRepresentation Systemにも、それぞれ五感に対応した脳内感覚=イメージが存在しますが、これがそのまま五感に対応している訳でも、無意識が存在する演算装置や記憶装置にそのまま伝達される訳でもないということが問題をややこしくします。

例えば、多読をしたことのない通常の日本人が英語を読んだ場合を想定してみましょう。

恐らく、第一段階としては、

英文 → 視覚 → 英文の視覚像

というように、「文字」という現実は、「視覚」という「入力装置」を介して、一旦は「視覚像」という形で入力されます。

しかし、通常は、「視覚像」そのままで意識されることはありません。

大抵は、

英文の視覚像 → 英文の聴覚像

への変換、所謂、「脳内音読」がなされます。

勿論、これは、「無意識」という「演算装置」が勝手にやってることで、私たちは意識していません。

そして、ここから話がややこしくなります。

多読をやっていない人は、

英文の聴覚像 → 和文の聴覚像

という風に、変換=翻訳を行います。

しかし、和文の聴覚像への変換で終わりではありません。

人が、「分かった」という感覚を得るためには、更に、Reference Systemに対応した形へ変換する必要があるからです。

ここで具体例を挙げましょう。

多読をやったことがなく、Lead Systemは視覚、Representation Systemは聴覚、Reference Systemは身体感覚が優位な人だと仮定します。

すると、英文を読んで、「分かった」と思うまで、実は次のような処理が必要ということになります。

1 英文を黙読する。
2 「英文の視覚像」として入力。
3 「英文の視覚像」を「英文の聴覚像」に変換。(「脳内音読」)
4 「英文の聴覚像」を「和文の聴覚像」に変換。(「翻訳」)
5 「和文の聴覚像」を「具体的な身体感覚」に変換。(「理解」)

(1 犬が出てくる絵本のページを読む。
 2 「Dog」という「映像」が入力。
 3 「ドッグ」という「音声」に変換。
 4 「いぬ」という「音声」に変換。
 5 「犬」を撫でた手触り、顔を舐められた感触、抱きしめた時に感じた体温などを思い浮かべる。)

多読に慣れてくると、徐々に、4の「翻訳」の処理は必要なくなります。

そして、「速読ができる人」は、2の「脳内音読」の処理も必要ないということになります。

つまり、「Dog」という「文字」を見た瞬間、直接に自分の優位な感覚へ変換できるようになっている訳です。

一方で、「脳内音読」が必要な方にも、Reference Systemの優位感覚によって個人差があります。

「脳内音読」の速度が上がりやすい人というのは、Reference Systemも聴覚である可能性が高いのではないでしょうか。

言い換えるなら、「脳内音読」した時点で、Reference Systemへの変換も同時に処理されるため、すぐに「理解」できてしまうので、「脳内音読」の速度をどんどん上げていくことができます。

しかし、Reference Systemが「聴覚」以外の場合、「脳内音読」して、さらにもう一度変換する必要があるので、なかなか「速度」が上げられないということなのではないかと。

さて、ここまでの議論では、「出力装置」には、一切、触れていませんが、「多読」の処理過程は、「入力装置」・「制御装置」・「演算装置」・「記憶装置」間の情報伝達・変換で説明できるからです。

従って、「出力装置」へのアウトプットを考えるなら、つまり、話したり、書いたりする能力を向上させるには、「多読」で鍛えた「演算装置」と「記憶装置」を「出力装置」にスムーズに繋げる別の訓練が必要と言うことになります。

通常、SSS式多読では、酒井先生が推薦するシャドウイングを、アウトプットの訓練として推奨しています。

しかし、これまでの議論で見たように、人間の情報処理には様々な段階があるため、同じ「多読」をしてても、情報処理の内容には千差万別です。

恐らく、シャドウイングとは、「速読」と同じく、幾つかの処理段階を省略させる訓練としては有効でしょうが、「聴覚」優位の人向けの訓練法であるため、他の感覚が優位の人には敷居が高過ぎるということがあると思われます。

(実際、私には、シャドウイングは難しすぎるというのが正直な感想です)

従って、同じ出力を行うにしても、個々の優位感覚に基づく情報処理過程の個性に応じて、自由に速度を調整できる訓練法の方が有望だと予想されます。

その意味で、ゆっくりな音源でシャドウイングをするよりも、自分の好きな本を音読したり、気に入った歌を歌ったりする方が、「聴覚」以外の感覚が優位の人にはまだやさしいという気がします。
     
と、言うわけで、英語のPBを「音読」する傍ら、こっそりと「英語の歌」の練習も始めました。

とは言え、いきなり難しい曲に挑むと絶対挫折するので、

1 メロディーも、歌詞も簡単
2 でも、リズムもメロディも綺麗
3 さらに、歌詞が喚起するイメージも綺麗

という、独断と偏見と趣味による「多唱三原則」をでっち上げ、「英語で歌おう! ポップス編」なんかを参考にしながら、

“Moon River”
“My Way”

を練習中です(笑)

以上、要件のみですが、今回はこれで失礼します。


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