[掲示板: 100万語超 報告・交流 -- 最新メッセージID: 13567 // 時刻: 2024/11/22(13:15)]
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杏樹さま、コメントありがとうございます。
Dead Mountainについては、私が読んでみようと考えたきっかけは、カーラジオからこの本(日本語訳「死に山」)の解説が流れてきて興味を持ったことでした。
日本語の書名から原著にたどり着くのに少し苦労したことを覚えています。その後、フジテレビの「アンビリーバボー」で取り上げられたんですね(12月6日)。
著者のちょっとクレージーな行動力に感心。いってみれば、秋の高尾山にしか登ったこと無い人がいきなり厳冬の谷川岳や北アルプス縦走にアタックするようなもの、かつ、いつなんどきロシアや旧ソ連の暗部に触れるかもわからない緊迫感がありますから。
事実、遭難したパーティの遭難前の写真、事故直後の捜索の写真は数多く掲載されますが、著者のロシア現地調査の写真はわずかに2枚、書中に「写真はロシアでは歓迎されない」とあります。
謎解きに関しては、現地で証拠を積み上げて、という感じでは必ずしもありません。その辺の微妙な感じにイラつく人も居るかも知れませんが私には興味深かったてます。
英文は決して難しくありません、むしろジャーナリスティックな英文で、技術英語やビジネス英語からはいった私のような読者には読みやすい部類にはいるかと思います。
さて、Milkmanですが。
ブッカー賞は、毎年審査委員がかわり、選考の視点が偏らない配慮がなされています。スキャンダルでついに受賞者を出せなかったノーベル文学賞とは大違い。
しかし、しかしですね、私がトライした三冊、すべて、とんでもない英文なんですよ。
2013年 The Luminaries, by Eleanor Catton。ニュージーランド南島の漁村Hokitikaの、ほんの数年間のゴールドラッシュの喧騒を描きます。ヴィクトリア朝を模し古語をふんだんに使った大仰で複雑な文章。凝りに凝った構成。
2015年 A Brief History of Seven Killings, by Marlon James。50人を超える語り手によるジャマイカの国民的レゲエ歌手暗殺未遂事件と血塗られた歴史。標準英語とかけ離れたジャマイカ英語。
kazuo IshiguroもIan McEwanも受賞しているので、そんなにむちゃくちゃな英文の作家ばかり選ばれるわけではないのでしょうけれど。(たとえばMcEwan、読みやすくはありませんが、腹立つほど読みにくくもない、少なくともわざと読みにくくしたような英文ではないです。)
Milkmanに関しても、多くの欧米の書評も「Challanging」という点では一致しています。作者自身は否定していますが。
読みにくさのひとつの原因は、会話もなにもまったく改行せず延々と続く文章の「見てくれ」によるかも知れません。何ページも一箇所も段落区切りさえない文章は、見ると圧倒されます。
また、RenouncerとかBeyond-the-paleなどの最重要単語がいまひとつピンと来ないのは、われわれの世代には第二次世界大戦中の「隣組」とか「非国民」という単語がいまひとつ現実感をもって響かないのと似ているかも知れません。
ひとつだけ作者の肩を持つと、この作品、陰惨な終わり方をするわけではなく、日々の暮らしにわずかに希望が持てるような終わり方です。
どうか是非とも手にとってご覧になってください。
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