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お名前: wkempff
投稿日: 2018/5/3(12:55)
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みなさまお久しぶりです。
頻繁に登場して恐縮な感じもしますが、100冊、1300万語となりましたのでレポートします。
1100~1200万語では変な本ばかり読むことになり多少疲れましたが、1200~1300万語は複数のすばらしい作品に遭遇し、たいへん快適な読書生活でした。
2013.10.11~2018.5.1
合計100冊
1302.5万語
1200~1300万語の間には、下記の7冊を読みました。
The Rooster Bar, by John Grisham 10.9万語
The Lake House, by Kate Morton 19.0万語
Everything You Want Me To Be, by Mindy Mejia 11.0万語
Turn on the Heat, by Erle Stanley Gardner 8.9万語
Last Stop Tokyo, by James Buckler 11.5万語
A Killing Frost, by R.D. Wingfield 14.7万語
The Girls, by Emma Cline 9.2万語
Before the Fall, by Noah Hawley15.2万語
この7冊の中のおすすめですが、この4年半で読んだ100冊の中でも上位にランクするであろう傑作です。
Before the Fall, by Noah Hawley
2017年エドガー賞長編賞受賞作品。いつもほとんど何も考えずに本を選んでいますが、100冊目だけは考え、結局、最新のエドガー賞作品にしました。(先週、4月26日に2018年の受賞作品が発表されましたので、厳密には最新ではありません。読み始めたときは最新でした。)
メディアの大物Bateman夫妻と二人の子供、マネーロンダリング疑惑のある金融業Kipling夫妻を乗せたプライベートジェットは、世界的に有名なリゾートであるMartha's VineyardからNew Yorkへの飛行中に突然墜落します。この飛行機には、およそExecutive一族とかけはなれた売れない画家Scottが乗り合わせていました。Scottは、Batemanの妻Maggieに誘われたのです。
墜落後、Scottは荒海に投げ出され、肩を脱臼していました。しかし、Bateman夫妻の4歳の子供JJを発見、JJを背負って荒海を10マイル以上泳ぎきり、九死に一生を得ます。
しかし、Batemanの息のかかったキャスターMilliganとFBI捜査官O'BrienはScottを快く思わず、Scott陰謀説に加担し、執拗にScottを追っていきます。Scottが、自分の絵の題材を得るために、わざと飛行機を墜落させた、等々。Scottは、妹を水難で失った過去があり、災害や事故を題材にする絵ばかりを描いていたことも疑惑を深めました。また、Scottはなぜか公衆とマスコミの前から姿を隠し、Hero扱いを拒みます。ただ一人、航行安全局(National Transport Safety Board, NSTB)の調査責任者Gusだけは冷静公平で、不眠不休で破壊された機体や遺体の調査を継続します。
物語は、ScottとJJの荒海との戦いから、Scottに対するマスコミやFBIとの戦い、JJを引き取ることになったMaggieの妹Eleanor周辺に移ります。しかし、同時に、Private Jetに乗ったBatemanやKiplingのみならず、パイロットやキャビンアテンダント、Bateman専用のガードマンの過去にさかのぼっていきます。
犠牲者の過去にはのほとんどは、墜落の原因となにも関係ない内容です。しかし、テロや犯罪を疑われるような事故の原因究明では、搭乗者の過去は普通に調査されるのでしょう。普通のミステリーのように、すべての事象がジグゾーパズルのように収斂していく、ということもありません。
このあたりが、この小説の書評を若干カラ目にしているのでしょう。
また、表現が過剰に文学的情緒的と思われる部分もあり、また、Stephen King顔負けに過剰に詳細と思われる部分もあり、墜落のミステリーと考えると、いまいち、かも知れません。しかし、私は、重厚な人間ドラマとしてはなかなかの作品と思います。上記の7冊の中では一押し。
英語はおおむね完結でスラングも少ないのですが、若干冗長に感じる部分もあり、洋書をはじめて読む方には若干チャレンジングかも知れません。
The Girls, by Emma Cline
名前から想像するには極めて重い話で、純文学に分類されるべき作品。
1986年におきたManson一味のカルト集団による無差別殺人事件は、ヒッピー文化とMansonに洗脳された中産階級の普通の少年少女たちが大量の残酷な殺人を犯したこと、スター女優シャロン テートを被害者に含むことから、全世界に衝撃を与えました。また、シャロン テートは、カルトのターゲットではなく、単なる人違いで惨殺されたのです。
この小説は、名前こそ変えてありますが、Manson事件をかなり忠実になぞっており、無差別殺人直前に集団から離れたEvieというキャラクターを挿入することで、リアリティを増しています。
裕福な家庭の14歳の少女Evieが、父母の離婚、母親の恋愛遍歴に耐えられなくなり、学校の交友関係もうまくいかなくなり、偶然の遭遇から、カルト集団に徐々にからめ取られていきます。カルト集団の少年少女たちがドラッグとセックスで教祖に支配されていく様子、不潔な集団生活を送るだけで無害と思われたカルトが突然凶悪な連続殺人を犯すまでの過程、そして少年少女をからめ取っていくさまも忠実に描かれます。
小説は、Evieの現代と1986年を往復し、一見裕福な家庭の少年少女の満たされない承認要求や深層心理を暴いていきます。
実に重くいたたまれない小説ですが、多くの方に読んでいただきたいです。
A Killing Frost, by R.D. Wingfield
今回の「このミステリーがすごい!洋書部門」一位(フロスト始末)。しかし、この作品は2008年に出版されています。
作者Wingfieldは本作を執筆後に癌でなくなり、Frost警のシリーズの最終作になりました。
Frost刑事シリーズは5作しかありませんが、ホームズでもマーロウでもコロンボでもない新鮮な刑事像をつくりあげ、現在も輝いています。
Frostはロンドン郊外のDenton署の刑事ですが、直感に頼る捜査はなかなか的中せずに犯人を取り逃がし、彼自身は領収書を改竄して小銭を稼ぐ、など、小物感満載です。
しかし、人手不足の中不眠不休で働き、なんとなく事件を解決してしまいます。
この作品では、少年少女失踪事件がメインになりますが、児童ポルノ犯罪、女性のバラバラ殺人、食品ストア恐喝、と事件満載で、Frostと同僚部下は不眠不休で多くの事件にあたりますが、所長と主任刑事は手柄は横取り、捜査の失敗はすべて部下の責任とし、あまつさえ、Frostを放逐しようと策動します。
事件自体は相当にグロテスクですが、Frostの下品なジョークに笑いながら、Frostのペーソスも感じることができます。
英語としては難しくありませんが、スラングやDirty Jokeを理解しないと面白さが半減するので、多少はミステリーなど読みなれている人向き、でしょうか。
The Lake House, by Kate Morton
Kate Mortonの2年ぶりの新作。彼女のいつもの作品のとおり、いくつかの時代を往復し視点が変わる複雑な小説で、ミステリー、大河ドラマ(family saga)、恋愛もの、という多くの顔を持つ長編です。
過剰捜査で謹慎中のロンドン市警の女性刑事は、Cornwall地方の祖父の家に逗留していますが、偶然、打ち捨てられた城(豪邸?)を発見し、その歴史に興味を持ちます。その屋敷Lake Houseは、幸せな一家が住んでいましたが、盛夏のパーティ当日に生まれたばかりの長男が失踪し、未解決のまま、傷心の一家は屋敷を打ち捨てて移住して今居ました。
現在の持ち主Aliceは老齢でミステリーの大御所になっていましたが、なぜか、XXXの再三の依頼にもかかわらず、屋敷の再調査を拒み続けます。
Aliceと家族の人生、そして女性刑事XXXXの忘れがたい過去の傷も交錯していきます。
Mortonには珍しくハッピーエンドに近い終わり方で、読後感が良い小説です。しかし、長く、語彙レベルは高く、それなりにチャレンジ精神のある方におすすめします。
Everything You Want Me To Be, by Mindy Mejia
これは、ミネソタの田舎の濃密な人間関係の中で、普通の少女Hatie周囲を巻き込みながら悲劇に近づいていく物語。ミステリーの要素もありますが、上に紹介したThe Girlsと同様、少女の満たされない承認要求がテーマになっていて、新人の作品とは思えない重い小説。流れるような英文です。
ということで、長くなりました。私としては、多読は一区切り、新しいラウンドにはいる気分です。
次に、独断と偏見に基づきますが、はじめてNative大人用の洋書を読む方に読みやすいと思われる小説をピックアップしてみます。
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