1100万語通過、おめでとうございます!

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13407. 1100万語通過、おめでとうございます!

お名前: 杏樹
投稿日: 2017/7/9(00:31)

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wkempffさん、こんにちは。

1100万語通過、おめでとうございます。
Rebeccaのレポートが面白くてレスつけさせていただきます。
私はずっと昔にまず日本語で原作を読みました。それからずっと後になって映画を見ました。そして、この作品はウィーンでミュージカル化されていて、その日本語版の上演も見ました。

〉Rebecca, by Daphne Du Maurier

〉【ヒロイン】
〉ヒロインの名前は、ついに出てきません。最初から最後まで「I」です。そのため、この小説の真のヒロインは死んだRebeccaだという解釈もありますが、私は、この説は取りません。
〉ヒロインの名前について、きっちりと、記述があります。
〉ヒロインが最初にMaximからメモを受け取るモンテカルロの場面。
〉But my name was on the envelope, and spelt correctly, an unusual thing.
〉最初に昼食を一緒に取る場面、Maximは言います。
〉'You have a very lovely and unusual name.'

私も最初に本を読んで、全部一人称で最後までヒロインの名前が出てこないことに驚きました。そして映画にするのに、名前を呼ばないなんてできるんだろうか…と思っていたら、映画でも名前がありませんでした。

〉作者の名前は、Daphne de Maurierです。この明らかにフランスの名前が、ヒロインに投影されているように思いませんか?

なるほど。フランス系の名前だったのかもしれないんですね。

〉【Manderleyのモデルと作者】
〉もちろん、架空の地名であり城館の名前です。しかし、モデルは現存していて、イングランド最南端に近いCornwallにある、Menabilly houseという城館がモデルと言われています。ヒッチコックの映画から想像するManderleyよりは小ぶりですが、それでも蔦のからまる堂々とした城館で、海を臨む高台にあり、海岸線にはいくつもの小さな入り江がある、とのことです。
〉Minabilly houseは現存していますが、大部分が個人所有である、という記述がネット上に見られ、必ずしもはっきりと確認できるわけではありません。Google mapでは、Minabilly farmという農場の建物の北東部に立派な城館とおぼしき建物があり、どうやら、これが、現在のMinabilly houseのようです。
〉Du Maurierは、1929年からしばしばこの地をおとずれ、Rebeccaのヒットの後、1943年から1969年まで、この城館を借り受け、自分でリノベーションを行い、住んでいました。
〉ネット上では、Minabillyの前庭で3人の子供を遊ばせている動画のほか、いくつもの写真を見ることができます。

モデルになった城館があったんですね。本人の動画まで残っているなんて。

〉【英語について】
〉1938年の作品ですので、相当に古い英語、まわりくどい美文調の表現かと覚悟していましたが、拍子抜けするほどスムーズに読めました。現代の英語となんら変わることなく読めます。

1938年ならそこまで「昔」ではないと思います。日本ならすでに昭和です。

〉Last night I dreamt I went Manderley again.
〉という書き出しの一文は、この小説の人気と相まって、非常に有名になりました。
〉「国境のトンネルを抜けると雪国であった。」(川端康成 雪国)
〉「石炭をば早や積み果てつ。」(森鴎外 舞姫)
〉「木曽路はすべて山の中である。」(島崎藤村 夜明け前)
〉このような、日本文学の傑作の書き出しと、雰囲気が似ていますね。

書き出しの英語はそうなっているんですね。これは印象に残ります。

〉もちろん、古い作品ですので、ときに、びっくりするような単語が出てきます。たとえば、次のようなものです。

〉Pigeon holes:さすが古い城館、部屋の中でハトが巣をつくっているのか、と驚きましたが、どうやら、小さな引出がたくさんある棚を言うようです。
〉Ball:舞踏会。正式で盛大な舞踏会を言います。仮装舞踏会:fancy dress ballとなります。

Ballは歴史好きで、ヒストリカル・ロマンス愛読者にはとってもなじみのある言葉です。
ついでに、貴族や富豪の夫人が若い娘をcompanionと称してお供させる、というのもヒストリカル・ロマンスによく出てくることだということも、今ならわかります。「わたし」はこのcompanionだったのですね。

〉Gay:びっくりしましたが、頻出します。快活、陽気、という意味で、LGBTとは無関係です。He is a gay, cheerful person.と言われて、彼は陽気な人だ、という意味にとらえることは、最初は難しかったです。

そうなんですか。1930年代にアメリカで一世を風靡したミュージカル映画のダンスコンビ、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの作品で「The Gay Divorcee」(日本語タイトルは「コンチネンタル」)というタイトルがあります。この時代にはこちらの意味の方がよく使われていたようです。

〉Dresden shepherdess:文字通り、ドレスデンの女性羊飼い、なのですが、ヒロインの仮装パーティの衣装が、Dresden shepherdessがいい、と言われ、後に、Alice the wonderlandがいい、となると、わけがわからなくなります。どうやら、Dresden shepherdessは、マイセンの陶器人形で有名になった、人気の(しかしめったに着られることがない)衣装のようです。日本でいうと、京都の舞妓さんの装い、という感じでしょうか。

これはわかりませんね。ただ、shepherdessは羊飼いということで、「いなか娘」のニュアンスもあるようです。なので嘲笑する意味を含ませたのかもしれません。

〉tangerine(ほろ苦いオレンジの一種らしい)とか、bezique(トランプゲーム、ブリッジのようなものらしい)、とか、辞書を引いても実感できない単語もあります。
〉気にせず、そんなもの、と思って読み進めれば、問題ありません。

tangerineはMy Father's Dragon(「エルマーのぼうけん)に出てきます。ここに出てくるDragonの好物です。

〉【映像との比較】
〉この作品は、ヒッチコックの映画で全世界に有名になりましたが、その前に、イギリスではベストセラーになっていました。

〉ヒッチコック版は、相当に正確に、小説のプロットを再現しています。原作にそっくりなせりふも多い。しかし、当然、省略改変されている部分もあります。
〉もっとも大きな改編は、Rebeccaの死因でしょう。当時のアメリカ映画はがんじがらめの規制(Hays code)と検閲に縛られ、厳格なキリスト教右派の価値観が反映されていました。当然、悪人が幸福になる映画をつくってはいけないし、殺人の描写そのものがご法度でした。

ヘイズ・コードありましたねー。かなり細かい規定があったようです。ヒッチコックもそれには逆らえなかったということですか。でも、レベッカの方こそ相当な悪女だったと思う…。

ミュージカル版は、マキシムの山口祐一郎が能天気な棒読み役者で、イメージに合わなくて残念でした。しかしダンヴァーズ夫人の涼風真世が不気味でこわかったです。

私も原書が読みたくなりました。ああ、また読みたい本が増えていく…。
長文レポートありがとうございます。


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