ドラゴンタトゥーの女3部作の紹介(250万語報告)

[掲示板: 100万語超 報告・交流 -- 最新メッセージID: 13567 // 時刻: 2024/11/23(12:38)]

管理用 HELP LOGIN    :    :


上へ上へ | 前のメッセージへ前のメッセージへ | 次のメッセージへ次のメッセージへ | ここから後の返答を全表示ここから後の返答を全表示 | 返答を書き込む返答を書き込む | 訂正する訂正する | 削除する削除する

13041. ドラゴンタトゥーの女3部作の紹介(250万語報告)

お名前: wkempff
投稿日: 2014/4/24(00:03)

------------------------------

表記3部作を呼んでいる途中で250万語を通過しました。
といっても、200万時点で一部と二部を読んでいましたので、上げ底のような報告ですが、ご容赦ください。

思いのほか没頭してしまい、ハリウッド版のDVDも買ってしまいました。

なお、あらすじ等は、書評システムもご覧ください。

第一部 The Girl with the Dragon Tattoo (ドラゴンタトゥーの女):16.5万語
第二部 The Girl who Played with Fire (火と戯れる女):18.7万語
第三部 The Girl who Kicked the Honets' Nest (眠れる女と狂卓の騎士):20.7万語

合計、55.9万語 トルストイの戦争と平和(英訳)と同じくらいの長さ、英文学の金字塔であるモームの長編、人間の絆、の2倍以上になります。
数えてみると、2月26日から4月1日、読破には1か月以上かかりました。

・スェーデンを舞台にした、緻密に構成された、すばらしいスリラーです。
・ヒロインのLisbeth Salanderが、ぞくぞくするほど魅力的です。
・スェーデン語からの英訳です。
・スェーデンの暗黒部分を背景にした、結構入り組んだミステリーです。

・第一部は、独立した小説として読めるので、とりあえず読んでみる、という手もあるかと。

【一部ネタバレの内容紹介】
The Girl with the Dragon Tattoo
小さな社会派出版社、Millenniumの共同経営者兼記者のBromkvistは、スェーデンを代表する企業コンツェルンの前CEOであったHenrik Vangerから、40年前に失踪した、甥の娘のHarrietの失踪事件の真相を調査する依頼を受けます。
Bromkvistは、Harriet失踪事件の調査が難航し、助手に、パンクで危ない天才ハッカー、Salanderを雇い、二人は、Vanger家の歴史と驚くべき暗黒部を暴いて、Harriet失踪事件の真相に迫っていきますが、同時に、二人に危険が迫って来ます。

The Girl who Played with the Fire
Salanderは、恋愛感情の行き違いから、Bromkvistとの交流をいっさい拒否しています。一方、Bromkvistは、Millenniumで、人身売買や組織売春を取り上げる決心をしてしますがが、調査に従事する同僚は、恋人とともに殺されてしまいます。凶器の銃には、Salanderの指紋が残されていました。
捜査陣は、Salanderを犯人と決め付け、マスコミも、殺人鬼として報道します。しかし、Bromkvistは、Salanderの無罪を信じ、独自に捜査を開始します。しかし、Salanderは、Bromkvistとはわずかにメールで交信するのみで、一人で敵と戦っていきます。

The Girl who Kicked the Honets' Nest
Salanderは、宿敵と戦い、頭、肩、腰を撃ち抜かれ、穴に埋められますが、奇蹟的に救出され、病院のICUに隔離されます。
ある日、秘密警察のOBが、Salanderの宿敵を暗殺し、自らも自殺をはかります。また、公安警察は、難癖をつけてSalanderを逮捕拘束し、息のかかった精神科医と共謀して、彼女を公判で精神異常者として精神病院に隔離しようと、さまざまな企てをします。背後には、国家的陰謀が隠されていたのです。
これに対し、Blomkvistは、狂卓の騎士団(The Knights of the Idiotic Table)を結成し、陰謀と戦っていきます。Salanderは、病室に隔離されながら、ひそかにBlomkvistが渡したPalm Computerを用いてハッカー仲間とつながり、Blomkvistたちとも連携して、ともに戦っていきます。

【魅力】
なんといっても、入れ墨とピアスだらけのパンクで、バイセクシャルで、他人に心を開かず、言語能力と記憶力(Photographic memory)が異常にすぐれる、天才的ハッカー、Salanderの魅力でしょう。Blomkvistとの微妙な関係もはらはらさせます。

そして、もう一人の主人公であるBlomkvistは、くたびれた中年の魅力満載で、正義感と使命感にあふれる社会派ジャーナリストでありながら、相当なプレイボーイです。来るものをは拒まず、Salander以外にも、何人もの社会的地位が高くパワフルな女性に言い寄られ、片っ端から深い仲になっていきます。この受動的プレイボーイぶりも、人気の隠れた原因かも知れません。

北欧の陰鬱な冬を背景に、豊かな福祉と男女同権の理想的と見えるスェーデン社会の暗黒部を描いたことも、人気の原因でしょう。

もちろん、非常に良く構成されたミステリーであることは、疑いありません。

【TIPS】
第一部は、相当に独立性が高く、第一部だけでも十分に堪能できると思われます。第二部は、非常に中途半端な終わり方をし、第三部に直接つながりますので、第二部第三部は一体と考えてください。

スェーデンで人気を博し、英訳は、全世界、40か国以上で、数千万部の売り上げを上げました。特に、アメリカの男性に人気が高い、と言われています。

作者は、スェーデンのジャーナリスト、Blomkvistのように、小さな社会派出版社の編集長でした。フェミニスト、反ネオナチ、反人種/移民差別を徹底して訴えたジャーナリストでした。残念なことに、出版契約後、第三部を書き上げたところで、心臓病で急死しました。Salanderの魅力的な姿には、二度と会えないと思うと、さびしいです。

作者は、連載ものとして、第四部、第五部を構想し、原稿も一部書いていたと言われます。そのせいか、話の一部に、次作の伏線と思われる部分もありますが、これは、もはや、想像するしかありません。

人気作品ゆえ、スェーデンで映画化され、ハリウッドでリメイクされています。スェーデン版では、ノオミ ラパスが、原作より骨太パワフルなSalanderを怪演、アカデミー賞外国語部門の主演女優賞に輝き、これを機に、彼女は世界的大女優に駆け上がりました。

ハリウッド版では、デービット フィンチャー監督、007シリーズで六代目のジェームス ボンドを演じる、ダニエル クレイグがBlomkvist役、という豪華仕立てです。こちらのSalander役は、ルーニー マーラーという新人ですが、ラパスより小柄で原作のイメージに近く、パンクで危ない感じ満載です。相当に肌をさらしていますが、まったくエロティックでないところなど、原作に忠実です。なお、素のマーラーは、むちゃくちゃ美人ですので念のため。
ハリウッド版は第一部しか映画化されておらず、二部以降の映画化が待たれます。

【英語学習として】
翻訳ものですので、凝った言い回しやスラングはあまり使われず、全体に、読みやすい文体です。しかし、nativeの間でも、この翻訳の文章は、評判が良いようです。
必要語彙力は、国家的陰謀や秘密警察の内部をしつこく描写した第三部がいちばん高いでしょうか。
とはいっても、洋書スリラー/ミステリーとしては、標準的、あるいは、少し読みやすい部類かも知れません。

ただし、欧米の批評では、読みやすい小説ではない、というものがほとんどです。英語そのものや語彙の問題ではなく、さまざまな事件が並行して進み、複雑に絡まってきますので、語学力以外の要素は、けっこう大変、というところでしょうか。日本語で読んでも訳わからんだろうなあ、という部分もあります。

多くの人に言われていますが、スェーデン語の地名、スェーデンの人名など、なじみがなく、地理も発音もよくわからず、このへんは、辛いですね。それに、登場人物も非常に多いです。第一部の舞台、Hedestadという北方の港町は、架空の町なんですね。私は、30分ほど、Google mapで探し回ってしまいました。

Salanderの中性的な魅力は、英訳版では、ぶっきらぼうでゴツゴツとしたせりふの言い回しによくあらわれています。これが日本語訳になると、女性言葉になってしまい、読みようによっては、ぐっと少女的なSalanderになってしまいます。

読み通すと、かなり速読の自信がつくことは保証しますし、はじめてペーパーバックスに挑戦なさる方には、長さゆえ、ちょっとハードルが高いかも知れませんが、決して不可能ではないでしょう。
少なくとも、Stephen Kingよりは、かなり読みやすいです。

強くおすすめしたく、書かせていただきました。


▼返答


Maintenance: SSS 事務局
KINOBOARDS/1.0 R7.3: Copyright © 1995-2000 NAKAMURA, Hiroshi.