[掲示板: 100万語超 報告・交流 -- 最新メッセージID: 13567 // 時刻: 2024/11/24(19:59)]
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みなさん、こんにちは
もう一冊読んだジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」は、講談社英語文庫のversionで、Kirsten Mclvorという人がRetoldしたものです。
この本は、1999年に出て、今は絶版になっています。私もその頃買ったので、今から12年位前です。"The Double Helix"のような難しい本では駄目だと思って、易しいながらも興味の持てる本を読んでみようとして買ったのがこの本でした。しかし、これまた、全部でPart IVまであるうちのPart Iだけ読んで挫折していました。YL 2〜3位の本で、しかも、巻末にNotesがあって、適切な訳語が書いてありますので、簡単に読めるはずですが、これが読めなかったんですね。仕事が忙しかったこともなくはないですが、今回は、殆どNotesのお世話にもならずに読めました。
#もっと簡単な本から始めなければならなかったのですね。
しかし、こんな調子で、挫折した本を読めるようになってきました。もっと難しい本も何冊か残っていますので、読める日を楽しみにしています。
さて、ガリバー旅行記と言えば、小人の国へ行って、蟻のような小人達に縛られて連れて行かれる絵本を思い出す人が多いと思いますが、実は、大人向けの政治的な意味に満ちた寓話だったのです。原作や、トータルな訳本は読んでいませんが、このRetoldは、全編が要領よくまとめられている印象がありました。他のretoldは、Part IIまでだったりします。
私が読んで、重要と思ったところは、大体以下のようなところです。
まずは、英国の政治や欧州でのキリスト教徒同士の殺し合いを批判しているところ。Part I Lillipat(小人国)では、ゆで玉子をどちらの端から割るかで争いがあり、それまでsmall endから割っていたものを、王様がそれで怪我したことから、small endiansを禁止して、Big endiansに改宗した。これはイギリス国教会を皮肉っている。そして、隣国のBlefuscuはsmall endiansを援助したため、両国の間で戦争になる。まるで、英国とアイルランド(フランス?)の話だ。聖書の解釈を巡る戦いのバカバカしさを訴えている。Part IIの巨人国とペアにすることで、両者を相対化して、単一の尺度で大きさを争ううバカバカしさを指摘。弱者の戦略としての文化相対主義が垣間見える。これは、Swiftがアイルランド出身ということが関係していると思われる。
ちなみに、Big endian/Small endianというのは、計算機の中で、数字を重みをどっち側のbitを重くするかの違いを表す用語として今も使われていて、endianの違いによって、しばしば、正しく計算ができず、非常に面倒な変換が必要となることがある。この言葉が、ガリバー旅行記から来ているとは知りませんでした。
そして、世襲貴族への批判、金で買われる可能性の高い投票による代表選出の問題、法律家が金持ちの道具となることへの批判、などが続きます。
Part III Laputa(ラピュタ)は、明らかに数学の机上の計算しかできず、実際的な才のない専門バカである科学者たちへの痛烈な批判だ。江戸に立ち寄って、踏み絵を迫られるが、これはTradeしないからとして拒否している。こんな話がガリバーに書かれているとは!
もちろん、宮崎駿の「天空の城ラピュタ」はここから取られている。
最後の賢い馬の国であるHouyhnhnmsの話は、戦争で殺しあう人間たちへの痛烈な皮肉で、人間社会総体をひっくり返している。その賢い馬のHouyhnhnmsの家畜となっている人間のような野獣が、ヤフー(Yahoo)。もちろん、検索エンジンのヤフーはここから来ている。なんと皮肉な。もちろん、日本で一部の人には有名な、「家畜人ヤプー」もここから来ている。
ということで、「ガリバー旅行記」はやっぱり凄いと思うのですが、原作にチャレンジするのは、まだ、大分先のことでしょう。
では、Happy Reading!!
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