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お名前: せきけん
投稿日: 2012/12/8(15:28)
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ものぐさ父さん、こんにちは。
ありがとうございます。ものぐさ父さんももう直ぐとのことですので、150万語の報告を期待しております。
さて、この本"The Double Helix"は、30年前の学生時代に買ったもので、当時も40ページぐらい頑張って読んだのですが、挫折したものです。PenguinのPaper backです。
もちろん、最初から読み返しました。最初の方は、それなりに読めたので行けるかなと思って、20-30ページ読んだら、段々難しくなってきて、どこまで読んでも、中々楽になりませんでした。正直言って、多読を始めてから多読として読んだものの中では、一番難しかったです。科学的な中身は、ある程度理解していたので、読めたのだと思いますが、知識がなかったらお手上げでした。
結局、英英辞典にもかなりお世話になりました。2/3までで、50・60ぐらい単語を調べたと思います。残り1/3ぐらいで、このままでは何時になったら読み終わるのかということと、先を読みたいという興味で、意味が分からなくもどんどん読み飛ばして、読みましたので、理解度は全体として50%ぐらいではないかと思います。
しかし、難しかった一番の理由は、構文が込み入った文章が多く、また、二重否定だったり、negativeな表現で何かを肯定しようとするような文章が多く、要するに回りくどい表現が多かったことです。一回読んでも意味が分からず、注意してもう一回読むと、節の切れ目が、最初に読んだときに意識した場所ではなかったことに気付いて、意味が分かる文章とか、日本語に訳すと意味が分かるのですが、英語のまま理解できない文章が多々ありました。最後の1/3ぐらいは、そういうところは飛ばしたわけですが。
これを読んでいて思ったのですが、「えっと」ぐらいの間投詞は仕方ないとしても、「これはどこに出てきた人だっけ」とか、「何でこうなんだろう」とか探したり、考えたりしながら読むときに、頭が日本語に切り替わってしまうのが問題かなと。そこで、"Who is he? Where was the first place he showed up?"とか、"What's this reason?"とか、考えながら読むほうがいいと思いました。でもなかなか、英語のストックが少ないので、適切な英語が出てこないうちに、日本語で考えていたりしますね。ものぐさ父さんは、どうしていますか。
この本は、DNAの二重らせん構造を発見したとされる、James D. WatsonとFrancis Crickが、その学説を組み立てて、科学雑誌のNatureに投稿するまでをWatsonの視点から小説のような形で綴った、科学物語です。30年前は、DNAの遺伝暗号を解く遺伝子操作の技術が進歩して、もう既に終わってしまいましたが、ヒトゲノム計画のような計画がまさに立ち上がろうとしていた時代です。そのとき既に、Nobel prizeを取って、分子生物(Molecular Biology)の重鎮になっていたWatsonの古典的な著作として有名だった本です。
これを読むと、Nobel賞レースの熾烈さと、かなり手段を厭わない野心家としてのWatsonの姿が浮かび上がってくると同時に、当時(Post-war)の分子生物学の黎明期の研究室の活気が伝わって来ます。
当時は、まだ若造だったWatsonがCrickと組んで、科学界の重鎮でNobel賞を取っていないLinus Paulingを負かして逸早くDouble Helixの正解に辿り着くというストーリーですが、Watsonはアメリカ人でありながら、まず、Copenhagenに渡って、生化学(Biochemistry)を勉強しに行き、しかし、たまたまNapleの学会で出会った、Maurice WilkinsのX線結晶学でDNAの構造を解き明かす手法と出会って、宗旨替えして、Wilkinsのいる英国に渡ります。この経緯が、結構、無茶苦茶で、妹を出汁に使おうとしたり、Copenhagenに留学することで資金をもらっているのに、先に、英国CambridgeのCavendish研究所に居場所を見つけて、移ってしまってから、留学の名目を調整したりとか非常に強引です。そうして、CavendishでCrickと出会うのですが、DNAのX線結晶学の研究では、LondonのKing's collegeでWilkinsと助手?のRosalind Franklinが、先行しています。この二つのグループがrivalのようになるのですが、本来英国の学会では、同じ研究を二つのグループにやらせないという不文律があるのか、WilkinsとFranklinが継続してやることで決着します。しかし、Watson & Crickも諦め切れずにX線解析も使いつつ、彼らの流儀で、化学的な性質を使って分子模型を作るアプローチで研究を進め、勝機を狙います。そうこうしているうちに、今度は、既に分子構造解析の大家で、たんぱく質のα-Helix構造を発表していたCal TechのLinus PaulingがいよいよDNAの構造解析に乗り出し、論文を書き上げます。しかし、Paulingの息子のPeterがCavendishに留学に着ており、父から息子宛の手紙から、その内容をつかみ、Paulingが大きな過ちを犯していることを知り、Cavendishの周囲の助けを借りながら、二重らせんの構造に辿り着き分子模型を作りながら、最後の証明として、Londonに行き、X線の写真をくれないFranklinに突撃して、写真を見て見事に二重らせんが当てはまることを検証、超特急で二人で論文を書き上げNatureに発表し、Nobel賞を確実にしたという話です。
最後の論文を清書するのに、土曜日で妹のElizabethにtypeさせたりしています。
これらの出来事が、1951〜52年で、Nobel Prizeが1962年、この本が1967年です。この本の登場人物の殆どが他界されていますが、Watsonはまだ健在のようです。本には、1951,2年当時の会話や雰囲気が非常によく再現されていることに驚きます。本には、Watsonのmanuscriptも載っているのですが、これは、判読が難しかったので、断念しました。本の中では、メモを取らないで話をするとして、Crickに避難される場面が出てきますが、メモを残していたのではないかという話もあります。いずれにしても、ものすごく記憶力がいいのでしょう。
Watsonの本質的な貢献はなんだったのか?この本を読んだだけでは分かりませんでした。ただ言えそうなことは、生物学から化学、X線結晶学など多彩なdisciplineを渡り歩いて、geneのdouble helix構造の学説をまとめるorganizerとして働いたということかと思います。構造の決定的な証拠は、Rosalind Flanklinが取った、B-typeのDNAのdefraction patterでした。その功績で、WilkinsもNobel賞を受賞していますが、Rosy(Rosalind Franklin)だけは、1958年に若くして癌で亡くなり受賞できませんでした。
この本の中では、Rosyは、X線結晶学の研究を上司のWilkinsすら排除して独り占めしながら進め、しかし、化学や分子生物学の素養のないRosyのCrystallographyだけでは、正解に早く到達できないのだから、という感じで、研究のひとつの大きな鍵を独占する悪役になっています。
しかし、強引で無茶なのは、WatsonであってRosyはそんな研究を妨害する悪者ではないということで、この本の後で、幾つかRosyを擁護する本が出ています。ということで、Rosalindの側から見た本を読んでみようと思います。
"Rosalind Franklin and DNA" Anne Sayre
"Rosalind Franklin: The Dark Lady of DNA" Brenda Maddox
では、Happy Reading!!
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