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764. Fahrenheit 451(華氏451度)を読んで:MOMA親爺久しぶりの禁断読書感想文(ネタバレ有り:注意)
お名前: MOMA親爺
投稿日: 2005/5/2(21:39)
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ねたばれ・・かもしれないが、まあいいですよね。
ついにブラッドベリを読んだ!読めた!感慨ひとしおです。
ブラッドベリというのは、SF界のルイ・アームストロングといわれる人で、その心はジ
ャズを聴かない人でもルイ・アームストロングの名前は知っている・・というようなもの
だそうです。「火星年代記」「華氏451度」「10月はたそがれの国」「誰かが
道をやってくる」等々、ひとつ一つが綺羅、星のごとくそびえ立つ、SFファンタジーの巨星・・
と私は思っています。
******* 以下 ネタばれがあるので、ネタをしりたい方のみご覧下さい (管理人) *******
(返信する方も、必ず、この1行を付け加えて下さい)
ブラッドベリはこの掲示板でも時々話題になりますが、華氏451度はこれまで余り語られ
たことが無いんじゃないかな〜?。1953年発行ですから、いまや古典です。華氏451
度というのは摂氏でいうと232度で、これは紙が燃え上がる発火点の温度のこと。
Fahrenheit 451の内容は本を読むことが禁じられた世界の話です。焚書・禁書ワールド。
主人公のMontagという男の職業はfiremanです。この世界におけるfiremanの仕事は密か
に本を読んでいる人間を見つけては、本を焼き尽くしその人間を抹殺することなのです。
世の中から「悪の根元である書物」を抹殺することがその使命。あるきっかけから自分の
仕事に疑問を持ちはじめたMontagは、禁断の書物を読んでしまいます。
犯罪人として追われる立場になったMontagは思いもよらなかった人々に出会うことになります・・・。
華氏451度というのは焚書・禁書ワールドの象徴なんですね。ちなみに有名なこの本です
が、私は翻訳を読んだことが無く、映画も見ていない。今回初挑戦なのです。読み始めて
重苦しく、宙ぶらりんな思いで、正直いやでいやでしょうがなかった。あのブラッドベリ
のノスタルジックな世界が全くないのです。しかし、やめられない。止まらない。
英語SFは一般に難しいとされていますが、このブラッドベリもMOMA親爺にはやはり相
当難しい。この難しさは、英語レベルの難しさもありますが、それ以上にブラッドベリの
世界に違和感なく入っていけるかどうか・・だと思いました。難しくて、重いのですが、
しかしなぜか読むのを止めることが出来ませんでした。190頁-50000語ですが、それで
も読み終わったときはカタルシスを感じました。
この本は現代のITに毒された世界を驚くほど怜悧に予言しているんです。
こんなシーンがあります。夜Montagは隣で寝ている妻になにかいいたいことがあります。
でも直接は言えない。妻はSeashellという一種のイヤホンを耳に付けて横になっています。
なぜか話しかけられないMontagは、起き出して近くのコンビニ(?)から妻のSeashell
あてに電話をしようと考えます。(これって、今の携帯世代そのものじゃん!)
そんでもって先を読まずにはいられない。最後の30頁でようやく開放感。ほっとしました。
今回の発見「楽しくなくてもよい多読」「楽しくなくても、良い多読」・・なんか変?
英語で読むことの醍醐味を捜してみました。まずfiremanという言葉です。
昔から私はこの言葉に違和感がありました。一種トラウマです。なぜか?
受験した高校入試の英語の問題に端を発します。和訳の問題中にfire engineと言う言葉
が出てきまして、これを見た瞬間ダリの「燃えるジラフ」とという絵を思い出しまして(背
中に火がついたキリンが砂漠を走り回るシュールな絵です。)「炎上するエンジン」とか
なんとか無理矢理訳を書いたなあ。試験が終わって辞書を引いたら「消防車」と載ってい
るではないか「何故よ??」
それ以来、firemanも「消防士」というより「こっそり火を付けては
『にたっ』と笑う変質者」を連想します。放火魔のほうがいいんじゃない?
この本を読んではたと膝を打った「そうだろ?そうだよね。」
更に付け加えます(ウンチクか・・?)
Fahrenheit 451の中で自分の仕事に疑問を持ちはじめたMontagが上司から諭される
場面があります。firemanの歴史についてです。「いいかMontag。そもそもアメリカに
おけるfiremanは建国当時のベンジャミン・フランクリンにはじまる。当時は火を消すこ
とがその仕事だったが、今では・・・」というような話です。
確かにその通りのようです。しかしベンジャミン・フランクリンは建国当時のアメリカに
おいて、初めて禁書を実施した人でもあるらしい(これはFahrenheit 451には書いてな
いが、おそらくブラッドベリは知っていたに違いない。最高の皮肉です)
焚書というのはSSS多読の正反対の概念ですよね。本が読めなくなったら辛いです。でも
今、本を読まない人も多いし、本を読まない子供も多くなっているようで、ひょっとした
ら、敢えて「焚書」なんてキャンペーンをやらなくても、実は世の中すでに焚書中だった
りして・・・と恐ろしいことを考えたりもします。ネットや携帯があるからいいもん・・・
という状況ですか・・。一方的に膨大な情報が流れてくる、あるいは自分で敢えて本を探
しに行かなくてもいい・・・かのような状況。次第に自分で考えなくてもいいような世界
になってしまっている。焚書というのは英語でbook burningというんだそうです。本を
焼くということ。かの始皇帝の焚書坑儒を英語でBurning books and killing scholarsとい
うんだそうです。
[url:http://en.wikipedia.org/wiki/Book_burning]
近代の焚書で有名なのはなんといってもナチス。しかし驚くべき事にかの「ハリーポッタ
ー」も焚書の対象になったことがあるんですって。おぞましいことです。
以上本が好きな人がこの掲示板には多いと思いますので、この本の事を知れば読みたくな
る人もまた多いかも・・・と思って書きました。
さてブラッドベリには「たんぽぽのお酒」という本があります、これを読むことが多読を
始めた私の夢の一つでしたが、一歩近づいたかなと思います。(いやいやまだ「たんぽぽ
のお酒」には遠そうだな〜〜)
ではでは。
MOMA親爺
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