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3225. I, JUAN DE PAREJA(世界史クラブ行きかも)
お名前: 杏樹
投稿日: 2018/9/15(01:51)
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I, JUAN DE PAREJA
Elizabeth Borton de Trevino
フランス語で語数報告をしたら英語の積読本を読む…というのが最近の傾向です。
英語の積読本で何かないか探していたら、これが見つかりました。ベラスケスに関する話らしい。ちょうどプラド美術館展をやっていて行きたいと思っていたのでちょうどいい、と思って読み始めました。
スペインなので、この名前はフアン・デ・パレハですね。
フアンはセビリアの貿易商の家の黒人の奴隷です。Blackと書いてあるので黒人だと思いますが、もしかするとムーア人かもしれません。お母さんがこの家の奴隷だったのですが、お父さんは誰かわかりません。お母さんは5歳の時に死にました。フアンは奥様の扇をあおいだり、お出かけの時に荷物持ちなどをして暮らしていました。
しかし、ご主人と奥様が相次いで亡くなります。フアンは奥様の甥の所へ行くことになります。甥はディエゴといって、マドリードで画家をしています。もともとセビリアでパチェーコという画家の弟子でしたが、パチェーコの娘と結婚したそうです。フルネームは、ドン・ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルヴァ・イ・ベラスケス。
ということで、フアンはマドリードへ行きます。ベラスケスの家には奥さんと小さな娘二人がいました。また、弟子が来て絵を習いに来ます。フアンは筆を洗ったりキャンバスを張ったりして仕事を手伝います。
そうしたら、ベラスケスの所に国王から知らせが来ます。王室の画家に任命されたのです。王宮にアトリエを与えられて仕事を始め、フアンもついていきます。ベラスケスは国王やその家族の肖像画を描き、宮殿に飾る絵を描きます。
ベラスケスの仕事を見たり話をするうちに、フアンは自分も絵を描きたいと思うようになります。そして絵を教えてほしいとお願いするのですが、断られてしまいました。奴隷は職人の仕事はできますが、芸術つまり絵を描くようなことは禁じられているのでした。
宮廷にルーベンスがやってきたこと、イタリア旅行に同行したことなど、ベラスケスの人生に関わることが描写されていきます。そしてフアンはこっそり紙と木炭を買い求め、誰にも知られずに絵を描き始めます。
やがてセビリアからムリーリョと名乗る青年がベラスケスの弟子になるためにやってきます。ムリーリョはとても親しみやすい人で、フアンはムリーリョにだけひそかに絵を描いていることを明かしました。ムリーリョはフアンのために絵具をわけてくれたりしました。
やがてムリーリョは独立してセビリアへ去っていきました。
月日は過ぎ、フアンは大人になり、ベラスケスの娘たちも、下の子は早くに亡くなりますが、上の娘はベラスケスの弟子と恋に落ちます。また2度目のイタリア旅行にも行きます。
この時イタリアで、ベラスケスはフアンの肖像を描きました。
検索するとこの絵が出てきます。
ベラスケスという人は、王室の画家になってからひたすら真面目に仕事をこなし、絵を描く以外何もしないような人生を送ったそうです。そんな主人の傍らで忠実に仕えた奴隷の目線であまりドラマチックではない話が進んでいくのですが、最後の方はじーんとくるものがありました。
最後にポイントになるのがベラスケスの畢生の大作「ラス・メニーナス」ですが、この絵をベラスケスが描いているところの描写がなかったことだけが残念です。
「ラス・メニーナス」は相当大きな絵なのでプラド美術館から出るのは無理なんですが、スペインへ行ってこの絵を見ることができたのは幸福でした。でもこの本を読んだらもう一度見たくなります。
さて、なぜこの本を積んでおいたのか思い出せません。誰かが感想を書いていたんだろうと思うんですが、書評にも登録されていません。ニューベリー賞を取っているのに。
ここに登場する国王はフェリペ4世で、その時代のスペインの様子が描かれているので世界史クラブ行きかもしれません。一人称で、ベラスケスのことはずっと「Master」と呼んでいるし、国王のことはKingと言って名前があまり出てこないし、この時代のことだという実感は薄いのですが。でも世界史オタクは書かれていることをもとにこの時代の空想を広げるのです。
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