最近のJohn Grishamの作品

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3210. 最近のJohn Grishamの作品

お名前: wkempff
投稿日: 2018/1/6(11:56)

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Grishamを不調と決めつけた心苦しさもあり、最新作The Rooster Barを含めて、最近のGrishamの作品を紹介します。ただし、前作Camino Islandは未読ですが、ここ5年くらいの長編の多くを読んでいます。

例によって超 長文ですがご容赦ください。

The Rooster Bar (2017)
Law School Scam:ヘッジファンドなどが利益主体にLaw Schoolを経営、程度の低い学生に高額の教育ローンを組ませ莫大な利益をあげるもの。Law Schoolの学生は相当に緩い審査で20万ドル前後の学費や生活費をローンでまかなうことができるが、司法試験(Bar Exam. 合格率は悲惨、合格してもまともな法律職はほとんど得られない、という実態があります。
この小説は、Law School Scamを題材にしています。
三流Law olの同級生、Mark、Todd、Gordyは、巨額のStudent Loanにおびえ、司法試験不合格を恐れ、就職のあてもありません。一流Law Schoolの卒業生はほとんど司法試験に受かり初任給は15万ドル超、しかし三流は司法試験合格率は5割を切り初任給は運よく職にありつけても5万ドルを切ります。しかし、ローンは容赦なく、それぞれ20万ドルあまりの負債をかかえていました。
Gordyは、三流Law Schoolは実際はヘッジファンドに経営され学生を食い物に莫大な利益をあげていることに気づきますが、神経症もあり、自害してしまいます。
Mark、Toddyは、Gordyの恋人Zolaを誘い込んで、奇想天外な方法でローン地獄を逃れようとします。しかし、Zolaの両親と兄は不法入国の罪で逮捕され、母国Senegalに強制送還されてしまいます。
3人は、学校をドロップアウトし、偽弁護士としてキャッシュベースの仕事を追いかける、という生活に突入します。しかし、うまくいくはずもなくほどなくFBIから逃げ回ることになります。しかし、その間に、この3人は、ペテン師を逆にペテンんにかける勝負に打って出ます。

#前前作The Whistlerに比較すると少し持ち直したような感じがするのですが、どうも話に現実感がなく(そう簡単に詐欺が成功すると思えない)、後半のFBIからの逃走含め緊迫感は楽しめるが。。。。という感じでしょうか。

参考:Law School Scam
https://www.theatlantic.com/magazine/archive/2014/09/the-law-school-scam/375069/

以下、簡単に

The Whistler (2016)
インディアン居住区のカジノをめぐる判事の汚職を暴く政府機関の女性法曹の話。緊迫感あふれる前半に比較し、後半はダルダルで、勝手に密告者がしゃべってすべて解決、黒幕もえらく簡単に白旗をあげる、という、なんとも羊頭狗肉感のある作品。

Lough Lawyer (2015)
大型のバンに銃器と最新のIT機器を積み、ここをオフィスとする弁護士のオムニバス小説。弁護すると市民を敵にまわしかねない刑事犯専門の弁護士です。しかし、設定そのものがMichael ConnellyのLincoln Lawyerにそっくりで、パクリなのかパロディなのか。さしものGrishamも多少気が引けたのか、作中でLincoln Lawyerに触れていたりします。

Gray Mountain (2014)
リーマンショックでNYの大手弁護士事務所を休職になった女性弁護士が、ボランティア弁護士として、アパラチアの寛容汚染に挑みます。
環境汚染の元凶はSurface Mining(露天掘り)の鉱山で、山ごとダイナマイトで吹き飛ばして鉱石や石炭を採掘、深刻な環境問題を起こしています。私には、アメリカの首都からたかだか2時間程度の山でこのような事態が進行していることが驚きで、題材には非常に興味を持ちました。しかし、話は完結しないような終わり方だし、女性弁護士の恋愛模様などはなんか作者が無理して書いた感が
任はあります。

Sycamore Low(2013)
処女作A Time to Killの続編の位置づけ。自殺した大富豪の遺産相続を遺言で委託された市井の弁護士が、欲の塊の遺族や故人経営の会社重役や自称友人のカオスの中、遺言を忠実に実行しようとします。南部の人種問題もからみ、なかなか面白い、と私は思ったのですが、処女作A Time to Killと少し後のThe Testamentを混ぜ合わせただけ、と、友人(カナダ人の宣教師)は酷評しておりました。

The Racketeer (2012)
無実の収賄罪に問われ投獄された黒人弁護士は、模範囚専用の刑務所で、他の囚人の司法相談に乗ったりしていました。模範囚用の刑務所では、囚人は、半ば自由に教会で礼拝したり図書館で本を読んだり談話室で談笑したりできるのです。
ある日、彼は、連邦高裁判事と愛人の暗殺事件の犯人を知っている、と名乗り出て、刑期の軽減を請願します。これは法律で認められた権利ですが、ここから、強盗、詐欺師、ペテン師入り乱れた悪人同志の暗闘がはじまります。
勧善懲悪的色彩の濃い初期の作品とずいぶんと様相を異にしています。法律の抜け道をうまく突く設定になっていますが、もちろん、現実的には不可能とのこと。


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