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3096. 面白かった! The Second Empress
お名前: 柊
投稿日: 2012/7/27(06:08)
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話はナポレオンの晩年です。作者はCleopatra's DaughterなどのMichelle Moran。
1809年。ウィーンではハプスブルク家のマリア・ルキア皇女(皇妃マリー・ルイーズ)が、ナポレオンの新しい皇妃にされるかもしれないということで、外相メッテルニヒを口を極めてののしっている。メッテルニヒがこの婚礼を仕切ったところで、外交上の理由だけなのですが、まるで悪意だけで「あんなコルシカ男」に嫁がせようとしている、といわんばかり。
パリでは、ナポレオンの妹ポーリーヌが、ついにジョゼフィーヌを追い出したと鼻高々。彼女は本気でナポレオンがもう一度エジプトを征服し直して、自分と結婚してファラオになってほしいと思っている。
ポーリーヌの腹心でハイチ出身のポールは、ナポレオンが奴隷制を廃止して、ハイチを救ってくれないかと考えている。本当はハイチに帰って、ポーリーヌと2人でのんびり暮らしたいが、今の仕事はナポレオンと読んだ本の話をすることなど、ナポレオンにとっても側近。
ナポレオンは、これで由緒正しい家柄と自分が繋がると喜び、実際この直後、ルイ16世を「我々の叔父」と呼んでいる。はしゃぎすぎて、誰かが皇女にこういう欠点があったらと、仮定の話をしただけでぶち切れている。独裁者らしく、どこで切れるかわからない。
ジョゼフィーヌは本編には出場機会がないのですが、幸運の皇妃として軍での人気が高く、ナポレオンは離婚すると負けるのではないかと皆心配しているが、ポールでさえそのことはナポレオンには言えない。ジョゼフィーヌの連れ子のオランダ女王オルタンスと、軍の高官ウジェーヌは登場します。オルタンスはマリー・ルイーズと仲良くなり、この2人が唯一正気な感じがする。
とまあ、こういった人々が自分の思惑で行動するのですが、Michelle Moranはそこはきちんと、歴史通りに動くようにしています。
話は最近歴史小説で流行らしい、語り手が交代するスタイルで進みます。語り手はマリー・ルイーズ、ポーリーヌ、ポールです。マリー・ルイーズとナポレオン(というかボナパルト家)の、先祖代々の金持ちと成金の違いは、ここでくっきりと出てきます。語り手が交代することが小説にいい影響を与えている感じがするのと、ポーリーヌの語りの最初に自分の美貌に見とれているところが入って、エキセントリックな感じがするのと、マリー・ルイーズの偏狭な正義感が最初からはっきりしているので、最初からそういう人なのだと思って読むので、読みやすいです。これであとから欠点が出てくると読みにくかったと思います(そういう小説を読んだ経験が何度もある)。
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