おすすめ!ハンガリーの物語「The Good Master」「The Singing Tree」

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3084. おすすめ!ハンガリーの物語「The Good Master」「The Singing Tree」

お名前: 杏樹
投稿日: 2012/4/15(01:19)

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とても素敵な本に出会ったのでお伝えします。

私には「ハンガリー病」という持病がありまして、時々油断をすると症状が出てきます。ハンガリーのことがいろいろ知りたくなるのですが、ハンガリー関係の本は少ないです。それで英語ならもうちょっと何かないか…と思ってアマゾンをウロウロしてたら、ハンガリーを舞台にした児童書を見つけました。しかもNEWBERY HONOR BOOKです。どういう本かわからないまま購入して読んでみたところ、とてもよかったので紹介することにしました。

「The Good Master」(37000語、YL3.5)
ハンガリーの大平原の農夫の息子、Jancsi(ヤンツィ)は今朝はワクワクしています。ブダペストに住んでいるいとこのKateがやって来るのです。Jancsiにはブダペストがどんなところか想像できません。一体どんな女の子が来るんでしょう?
いざやってきたのはとんでもないおてんば娘でした。目を離したすきに迎えのwagonに一人で乗って馬を走らせようとするし、家に着いたら行方不明になり、納屋の梁の上に上って吊るしてあるソーセージを食べてるし…。
でもKateはお母さんを亡くして、お父さん一人では面倒を見られないのでここに送られたのです。Kateのお父さんの手紙では、母親がないことで甘やかしすぎてわがままになったので、ハンガリーの大平原の農場の暮らしをさせてみたいということでした。Jancsiとお父さん、お母さんはKateの面倒を見ようということになりました。
Kateは乳搾りも見たことがありません。ミルクは瓶に入っているものだと思っていました。馬の乗り方を覚えたり、動物たちと触れ合ったり、少しずつ農場の暮らしになじんでいきます。
イースターにはイースターエッグを作り、晴れ着を着て教会へ行きます。にぎやかなお祭りにも行きます。夏には川で流されそうになったり、ジプシーがやってきたときはさらわれそうになったり…。
ハンガリーのPusta(大平原)の農場の暮らしが綴られていきます。途中、ハンガリーの民話がいくつか挿入されます。作者自身の手による絵も、ハンガリーの雰囲気を伝えてくれます。
最後はクリスマスです。ハンガリーでは12月6日に窓際にブーツを置いておくと、赤い服に大きな袋を担いだ聖ミクラーシュがプレゼントをくれるのです。その日、お父さんが二人に駅まで聖ミクラーシュを迎えに行こうと言います。そうして駅に着いたら、本当に聖ミクラーシュが現れて…。

作者のKate Saredyはハンガリーのブダペスト生まれで、アメリカに移住して児童書やイラストを描いた人です。このお話のKateは、作者自身のことを反映しているのかもしれません。

「The Singing Tree」(44000語、YL4.5)
「The Good Master」から数年後。
村の雑貨屋さんの主人はMosesというユダヤ人です。JancsiとKateが買い物に行くと、Peterという青年が来ました。Peterはもうすぐ結婚することになりました。結婚式は村を上げてお祝いをします。Kateは初めてハンガリーの村の結婚式で、村の皆が何をするかを知ります。
やがてJancsiは一人前の牧童として家畜の群れを任されることになります。
さらに街の寄宿学校に通っているLilyが夏を農場で過ごすためにやってきて、Jansciの家は賑やかに。
ところが、村に知らせが届きます。オーストリアの皇太子、フランツ・フェルディナントが暗殺されたという…。それから戦争がはじまり、Peterの所にも召集令状が来ました。
さらに、Jansciのお父さんも志願して戦争に行き、Jansciは家を守る責任を負うことになります。
ほのぼのとした農場の生活が綴られていた「The Good Master」とはガラリと変わって時代を背負いながら生きる人たちの姿が描かれます。そうして戦争の理不尽さ、敵国人だからという理由で人を憎むことの愚かさが感じられる内容になっていきます。

「The Good Master」では特に年代は書かれていませんでしたが、第一次大戦前のことだということがわかりました。この時代、ハンガリーは「オーストリア・ハンガリー二重帝国」の一部で、ハンガリー国王はオーストリア皇帝が兼ねていました。第3章で、以前兵役に行ったことがあるというPaliの話で時代背景が語られています。
An Austrian is wearing the holy crown of Saint Stephen
→ハンガリー初代国王だった聖イシュトヴァーンの王冠を、オーストリアの皇帝がかぶっていること
two-headed eagle of the Habsburgs
→オーストリア皇帝であるハプスブルク家の紋章、双頭の鷲。
The old Emperor
→当時のオーストリア皇帝兼ハンガリー国王、フランツ・ヨーゼフ1世。1848年に18歳で即位し、1816年死去。この物語の時にはかなりの高齢。


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