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3064. 感情ジェットコースター「Lily of the Nile」
お名前: 柊
投稿日: 2011/2/15(14:58)
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お正月疲れでしょうか。今頃になってやっと今年初めての英語の本を読了した柊です。フランス語も忙しかったし、日本語も忙しかったし。
その本がStephanie DrayのLily of the Nile。はらはらドキドキでやめるにやめられず、頭が痛くなるまで読み続けてしまいました。
主人公はクレオパトラの娘のKleopatra Selene。Michelle MoranのCleopatra's Daughterと主人公が一緒です。
Lily of the Nileの方では、イシス女神の生まれ変わりとされるクレオパトラが産んだ男女の双子が、太陽神と月神とされていて、一種、イエスのような救世主の趣があります。
イシス女神は奴隷でも祈りを聞いてくれるので、エジプトだけでなく、ローマでも流行っています。というか、イシス女神本人の弁によると、ヴィーナスであり、アテネであり、その他、全ての女神がイシス女神のことなのだとか。
戦争に負け、両親を失った双子はローマに連れてこられますが、プトレマイオス王家の生き残りというだけでなく、双子の神ということで、支持者は多く、皇帝も警戒しています。この皇帝の家で双子は暮らすのですが、皇帝の妻と皇帝の姉妹の争いに始まり、あっちこっちで嫉妬やらねたみやら、すごいことになっています。
戦災孤児仲間のユバの話を始め、悲しい話や恨みの話が満載。強烈な印象を与えます。イシス女神のメッセージも、セレネの腕にヒエログリフが刻まれて大量出血するという、すごい方法で伝えられますし。
戦争というのは、というか征服というのは、文化や神様同士の戦いでもあるのだなと強く思いました。エジプトはかなり男女同権ですが、ローマは男尊女卑が強いようで、イシス女神と皇帝の戦いも、女性の権利を認めるかどうかが1番の焦点のようでした。
「聖書の起源 治癒神イエスになった神々」という本を最近読んだのですが、イエスの姿はその頃はやっていた他の宗教の神と似ているようです。文化的に、当時の救世神の影響が強いらしく、そう思うと、紀元前30年頃のこの小説も、キリスト教とは無関係ではいられない。
あとがきによると、キリスト教はイシス信仰にもかなり影響を受けているようで、たとえばイシス女神は知恵の実を人間に与えています。その他にもあとがきには、イシス信仰はそれまでの宗教と違う画期的なもので、キリスト教もその新しい種類の宗教だと書いてありました。どう画期的なのか、結局わからなかったのですが。
セレネの成長が楽しい、とてもエキサイティングな本でした。おすすめです。
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