Re: まだまだハムレット

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2074. Re: まだまだハムレット

お名前: 杏樹
投稿日: 2007/1/16(02:10)

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Ryotasanさん、こんにちは。

〉杏樹"さん、お待たせしました。ハムレット談義の続きと行きましょう。

こんなに引っ張っていいんでしょうか?

〉Shakespeare は1巻本の全集 (Complete Works) がいくつかの出版社から出ており、ハードカバーの割に値段はそんなに高くないです。1冊入手して本棚に飾っておけば、原文を参照する機会も増えます。

そうですね。私もハムレット1冊ぐらい飾っておきましょうか。いつかは…という気持ちはあったので。

〉〉短めのものになりますと、よくあるのがフォーティンブラスをカットしてしまうこと。ホントに登場しないんですよ。最後は死屍累々でそのまま幕を降ろします。

〉当時の劇場には緞帳が無かったので、悲劇のばあい、死体、というか死んだふりをしている出演者をかついで退場する人物が必要です。Hamlet は死者の数が多く、身分も高いので丁重に運び出す必要があります。そのためにフォーティンブラスとその軍隊を登場させたという仮説もありますね。

そうなんですかー。

〉〉いくつかそういうのを見たので、「ハムレット」を見るときは「フォーティンブラスは登場するか?」とドキドキしながら見るようになってしまいました。ちなみにローレンス・オリビエの映画にも登場しません。メル・ギブソンも映画でハムレットをやってますが、フォーティンブラスは登場しません。

〉たしかに、王子の死で終われば、話としてはまとまりが良いんですが . . . .

いえいえ、フォーティンブラスは必要です。
ハムレットはフォーティンブラスをデンマークの後継者に指定し、フォーティンブラスはハムレットを丁重に埋葬する、ということでおさまりがつくんです。「みんな死んじゃったよー」という状態で幕を降ろしてしまったら…まあそれも一種の効果的な終わり方かもしれませんが、中途半端な気がします。

〉〉ハムレットもそうですが、シェイクスピア作品には本人による「定本」というものがなく、いくつかのバージョンがあって、それを再構成して現在のテキストが作られました。ですからもともとシェイクスピアがどんな本を書いて最初に上演したかわかりませんし、再演して書き直したかもしれませんし、かならずしもテキストどおりに上演することが「正解」とは言えない訳です。

〉学問的、理論的にそう考えることが可能だとしても、作品によっては、実際に読んでみて削るのは惜しいと感じる人もいます。僕はブラナーさんの Hamlet をまだ観ていませんが、たしか4時間ぐらいかかるんですよね。4時間かかっても、できればカットせずにやりたいと彼も考えたのでしょう。BBCのTV放送用に製作されたデレク・ジャコビさんのHamletも長かったように記憶しています。

ブラナーはやりたいことを全部詰め込んだんでしょうね。
編集するのは単に「削る」のではなく、演出家がどんなハムレットを見せたいのか、という表現の手段でもあります。何を見せたいか、見せたいものを強調するためにはどういう演出をすればいいか…そういったことを総合的に考えて取捨選択をするのです。単に短くすればいい、ってものではなくて。
また、どんなにすばらしい「文章」でも、セリフとして人間の口から出ると、どうも自然な言葉になりにくい文章がシェイクスピアにはよくあります。それをより自然な人間の感情から出た言葉に聞こえるようにする、という場合もあります。シェイクスピアのセリフはかなり芝居がかった、見栄を切るような演技の方が合うんですが、そういう舞台ばかりでは演出も限られてきますので。

〉それから、死んだ王子を王として埋葬するようにフォーティンブラスは命令しますね。歴史や王位継承に関するシェイクスピアの考えがあの箇所に伺えるような気がします。墓石に王と刻まれ、後世の歴史には王として記録してある人物でも、本当は王子として死んだ例もあるのでしょうか。

日本語訳ですが、本を見てみましたが「王として埋葬する」とは書いていませんが…。
「彼こそは時を得ればたぐいまれな名君ともなったであろうに。彼の死を弔うには、軍楽を奏し、礼砲を放って、その悲しみを広く世に知らしめるのだ」

〉〉ところで「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という芝居はご存知ですか?(また話を広げようとする…)

〉はい。Hamletを素材にした現代戯曲として、80年代には有名でした。読もうかなと思っていたころ、作者 Tom Stoppard さんは脚本家として映画界への進出を始めていました。彼が脚本を担当した戦争映画 Empire of the Sun (スピルバーグ監督) が公開されたので観に行ったんですが、今イチ面白いと思えず、しばらくはStoppard作品への熱がさめていました。そのあいだに「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」が映画化されたのは知りませんでした。

「太陽の帝国」もストッパードなんですか?これは確かにスカでしたねー。
「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」も映画になってたんですか。私は舞台を2回見ました。本編ではあっさり殺されてしまう吹けば飛ぶような脇役をわざわざ取り上げて芝居にしてしまうところもまたシェイクスピアの、そして「ハムレット」の魔力ではないかと。

〉その後、Stoppard さんが脚本を担当した Shakespeare in Love が面白かったので興味が再燃しつつあります。近いうちに読むかも知れません。

私は舞台なら見たいですが、戯曲は日本語でもあまり読みたいと思いません。戯曲のまま読むと退屈そうなので…。一種の不条理劇みたいなものかもしれません。ローゼンクランツとギルデンスターンが二人でうだうだ、だらだらしゃべってる芝居です。最後はもちろん、いきなり二人にハムレットのすり替えた命令書の執行が…。

さて、3月に兵庫県立芸術文化センターで「ハムレット」をやるので見に行こうと思っています。モスクワのユーゴザーパド劇場の演出家、ワレリー・ベリャーコヴィチの演出で、ピッコロ劇団を中心にしたキャストです。ピッコロ劇団は兵庫県の県立劇団です。今度はどんな「ハムレット」に出会えるか楽しみです。

それでは…。


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