ロマンス有名作家 ジャンル別読み比べ

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826. ロマンス有名作家 ジャンル別読み比べ

お名前: Raquel
投稿日: 2006/11/26(19:00)

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みなさま、こんにちは。Raquelです。

タドキスト大会1日目に、ロマンス本展示をすることになりました。
テーマは何にしようか悩んだのですが、有名な(amazon.co.jpでもレビューがあがっているような)作家を
読み比べすることにしました。

題して

 「ロマンス有名作家 ジャンル別読み比べ」

です。
以前に掲示板でご紹介したものも、混じっています。

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まず最初に、いくつか用語について説明しておきます。

 ・ スピンオフ(spin-off) ある作品から派生した関連作品。ある作品の脇役が主役になって登場するものが多いです。
 ・ シングルタイトル  スピンオフがない、単独の作品

 ・ Wallpaper historical ヒストリカル限定用語で、舞台設定は時代物ですが、特にその時代に限定しなくても
話が成り立ってしまうような(爆)もの。

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以下ご紹介する本のレベル分けについては、

・Lady Sophia's Lover(Lisa Kleypas)  YL 6〜7
・McKenzie's Mountain(Linda Howard)  YL 7〜8

が基準になってます。
YL6〜7とは、PBを読み慣れた方は「6」、読み慣れない方は「7」と思ってください。

語数の後ろの( )は、シリーズ名。
各カテゴリーの☆の数は、1〜5個です。

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では、タドキストのみなさんが一番読んでいると思われるジャンルから。

◎リージェンシー(Regency)&ヨーロピアン・ヒストリカル
 19世紀初めの摂政期〜ヴィクトリア女王の時代。

* Lisa Kleypas
 もう、説明の必要がないような人気作家ですね。
 産業革命のころが舞台で、貴族階級と台頭してきた市民階級の軋轢をプロットに交えた作品が殆どです。

・Lady Sophia's Lover YL6〜7   91000語 (Bow Street Runners Trilogy 第2作)
  舞台はヴィクトリア朝時代のロンドン
  Ross Canon は、Bow Street Runner を束ねる治安判事。
  5年前に妻を亡くして以来、仕事に身を捧げてきた。
  そんな彼のもとに、若い女性が現れる。新聞広告のアシスタント募集を見て、職を求めてやってきたのだ。
  一目見たときから、彼女に強烈に惹かれて戸惑う Ross。
  常識では断るべきだと分かっていたが、衝動的に、家政婦兼務の見習いアシスタントとして採用してしまう。。。
  
  単語は結構難しいですが、文体は難しくありません。
  二人の惹かれあう様子、めまぐるしい展開に、ぐいぐい引き込まれて読めます。
  後半、あっと驚く展開が待っています。

 おすすめ度      ☆☆☆☆☆
 読みやすさ      ☆☆☆
 sensual度      ☆☆☆☆  (Very hot)
 mystery, suspense度 ☆☆

 スピンオフ "Someone to Watch Over Me(第1作)" "Worth Any Price(第3作)"
   1作目は読まなくても問題ありませんが、3作目は"Lady Sophia"の重大なネタバレになってますので、順番に読みましょう(Amazon のレビューは読まないで下さい)。

・Where Dreams Begin YL6〜7  104000語(シングルタイトル)
  1830年 ロンドン
  Zachary Bronson は、貧しさから這い上がり自力で巨万の富を築き上げた男。
  政財界への大きな影響力から、上流社会に出入りできるようになったが、貴族たちからは所詮「成り上がり」と見下されていた。
  欲しいと思ったものは全て手に入れてきた Zachary の次なる目標は、上流階級出身の妻だ。
  そんなとき、舞踏会で偶然出会った女性に強く心惹かれるが。。。

  貞淑な未亡人を籠絡しようと近づいたヒーローが、逆にメロメロになってしまうストーリー。
  Lady Sophia ほどのドラマチックな事件は起こりませんが、身分の差に苦しむ男女のしっとりした大人の物語です。
  こちらの方が単語は難しくありません。

 総合    ☆☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆☆
 Emotional ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆  (Not so many times, but very sensual)

* Amanda Quick
 非常にユーモラスで、「どこから読んでもAmanda Quick」的、独特の世界を描き出す作家。
 ミステリアスで危険なかおりのするヒーローと、元気で独立心旺盛なヒロインが、
ある謎解きのために行動をするうちに惹かれ合うというプロットが多く(というか、
他のプロットはありません・爆)、一度にたくさん読むと飽きてしまうかもしれませんのでご注意。
 ヒーローかヒロイン(または両方)が変人という設定が多いです。
 典型的 Wallpaper historical 作家。Julia Quinn が好きならオススメ。
 文章は、Lisa Kleypas よりは読みやすい気がします。

・Mistress  YL6〜7  100000語 (シングルタイトル)
 19世紀頃のイギリス
 愛する叔母に脅迫状を出した人物を見つけるため、自分の素性を隠して社交界に乗り込んだ Iphiginia Bright。
 「金を払わなければ、叔母の命も、Masters 伯爵同様に危ない」と脅迫状には仄めかされていた。
 そんなわけで、亡き Masters伯爵の愛人のふりをするのは完璧な解決方法だと思えた。未亡人の身なら、社交界の決まりに縛られずに自由に行動できるから。
 だが、伯爵は死んではいなかった!
 身に覚えのない「愛人」に会うため、ロンドンに現れたのだ。。。

 独立心旺盛で感情豊かな「名のみの愛人」ヒロインと、自分の定めたルール(=理性)に従って生きてきたヒーローのストーリー。
 ヒーローの決めた「Masters の5つのルール」が、次々破られてヒロインに振り回されるところがおかしいです。

 総合    ☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆☆
 Humor   ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆

・Ravished  YL6〜7  100000語 (シングルタイトル)
 Harriet Pomeroy は化石コレクター。
 お気に入りの採掘場が、盗品の隠し場所になっていることに気がついた Harriet は、地所を管理している St. Justin 子爵 Gideon Westbrook に連絡した。
 連絡、というよりはむしろ「呼び出し状」のような手紙を受けとった Gideon は、好奇心をそそられ Upper Biddleton に向かった。
 送り主 Harriet は、「Blackthorn の野獣」という異名で知られる Gideon を怖れないばかりか、直ちに盗賊退治をするようにと主張した。

 婚約者を殺したという噂のある異相ヒーローと、彼を全く怖れないエキセントリックなヒロインの、「美女と野獣」的ストーリー。

 総合    ☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆☆
 Humor   ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆

* Georgette Heyer
 この方は、リージェンシー・ロマンスの原型を作ったという方です。
 ロマンスファンなら、誰でも Heyer が好きと言われるくらい、海外ロマンスファンの
間では根強い人気を誇っています。
 活躍中のロマンス小説家たちも、Heyer に影響を受けたという人は少なくありません。
 現在のリージェンシーものに比べると、少々物足りなく感じるかもしれませんが、
Jane Austen に近い感じの作風で、ロマンスロマンスしていません。

・The Grand Sophy  YL8〜9  103000語
 Sophia Stanton-Lacy は、外交官の一人娘。
 幼い頃に母を亡くし、父親はSophy を連れてあちこちの国で暮らしてきたが、娘がもう20歳だということにやっと気付いたらしい。 
 折しも、政府の命でブラジルに行くことになり、Sophy はロンドンの伯母の家で暮らすことになった。
 Sophy の到着によって、Rivenhall 家の静かな暮らしは一変する。
 伯母の Lady Ombersley は優しいが気の弱い女性。一歳年下の従姉妹 Cecilia は、素晴らしい男性と婚約間近だが、アドニスのような詩人に夢中。次男のHubert は、借金で首が回らなくなっている。
 長男の Charles は、一家の問題を一人で背負っているが、独善的なやり方で家族に怖がられていた。Charles の婚約者は、鼻持ちならないブルーストッキングで、一家の出来事に首を突っ込み批判するので、家族に暗い影を落としていた。
聡明で活発な Sophy は、一家の問題をすぐに把握し、解決しようと決心する。

 "Pride and Prejudice"の Mr.Darcy を思い起こさせるような、少々傲慢タイプのヒーローと、
元気で実際的なヒロインの会話はとても楽しいです。
 登場人物が多いので、ある程度の短時間で読まないと、誰が誰だか分からなくなるかもしれません。

総合    ☆☆☆☆
Emotional ☆☆
Sensual  ☆

その他、"Frederica"、"Devil's Cub"、"Venetia"などが人気があります。

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次は、リージェンシーのトレンドに押しやられてしまって、最近ではあまり作品がないジャンルです。

◎中世もの
 Ms.中世ものというような作家がちょっと思いつかないので、読んだ中で面白かったものをご紹介します。
 リージェンシーに比べると、王権がずーっと強いので、王の ward(被後見人) ヒロインが出てきたり、
王に結婚相手を決められたりするのが、この時代ならではかもしれません。
 父親の城が攻め落とされてしまったために、王様を後見人に持ったヒロインなどが登場します。
 中世といえばやはり、騎士と戦いをイメージされる方が多いかと思いますので、
「戦闘度」レベルを入れておきました(笑)

*Julie Garwod
 非常にコミカルな作風が特徴で、とても人気があります。ヒロインがキュート。
 典型的Wallpaper historical作家です。(Julia Quinnファンにオススメ)

・The Bride  YL6〜8  110000語
 1100年
 国王 Henry の命により、Jamison 男爵は、娘をスコットランド人に嫁がせなければならなくなった。
 男爵家の四人娘のうち、末娘 Jamie は、一番のしっかり者で一家の女主人役。
 彼女を嫁がせたくない男爵は、スコットランド人の滞在中は隠れているようにと、Jamie に命じるが。。。
 スコットランド王と英国王の取り決めで、ハイランドの族長 Alec Kincaid はイギリス人の花嫁をめとることになった。
 政略結婚には全く気乗りしない Alec だったが、美しい Jamie に一目で魅了され、彼女と結婚することにする。

 「妻は夫に従うものだ」という俺様ヒーローが、なんだかんだ言いつつもと可愛い奥さんの言いなりになってしまう(笑)のが楽しい。

 総合    ☆☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆☆
 Emotional ☆☆☆
 Humor   ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆
 戦闘度   ☆

スピンオフ "The Wedding"←こちらが後

その他、同じくスコットランドを舞台にした "The Secret"と"Ransom"の2部作、
シングルタイトルの "Honor's Splendour"、"The Prize"なども人気があります。
(全て未読なため、ご紹介できません)

* Madeline Hunter
 この方は、しっかりした時代背景とマッチした重めのストーリーを書く方で、
定評があります。(リージェンシーも書いてますが、中世ものの方が人気)

・By Arrangement   YL7〜9  115000語 (中世もの6部作 第4作)
 エドワード3世の治世、百年戦争直前の英国が舞台。
 Lady Christiana Fitzwaryn は、恋人との密会現場を押さえられ、後見人のエドワード王より婚約を命じられた。
 だが、相手が愛する騎士ではなく、裕福な絹織物商人 David de Abyndon と知り、驚き傷ついた。
 愛する人と結婚したいと思っていた Christiana は、彼の方から婚約解消を申し出てくれるよう頼むため、思い切って David を訪ねる。事情を話して、彼の同情に訴えようと思ったのだ。
 だが、David は彼女が思っていたような老人ではなく、若くてハンサムな男だった。
 さらに、どんなに頼んでも、彼の方から婚約解消するつもりはないと告げられる。。。
 若くてナイーブなヒロインを、優しく口説くヒーローが素敵です。
 ヒーローが商人とは、とても変わった設定ですが、実は。。。という驚きがありますよ。

 総合    ☆☆☆☆☆  (Dramatic&Rich)
 読みやすさ ☆☆☆
 Emotional ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆
 戦闘度   ☆☆☆

スピンオフ 十字軍帰りの騎士がヒーローの"By Posession(1作目)"、陶器職人ヒロインの"By Design(2作目)"、"Stealing Heaven(3作目)"、4作目のヒロインの兄が主人公の"The Protector(5作目)"、"Lord of a Thousand Night(6作目)"
(未読なため、内容をご紹介できません)

* Jill Barnett
 この方も、ユーモラスな作風のベテラン作家です。

・Wicked    YL6〜8  110000語  (中世3部作 3作目)
 多分13世紀 イングランド
 Lady Sophia Howardは、エドワード王(1世)の従妹。両親を亡くし、王を後見人に持つ。
 そのたぐいまれなる美しさと王からの持参金目当てで、少女の頃から求婚者が絶えない。だが、はねっ返りで独立心旺盛なSophiaを惹きつける男は現れず、求婚を断り続けていた。
 だが、Sophiaが17歳の年、王が突然発表した婚約者は、かつてSophiaを傷つけた唯一の男、Tobin de Claireだった。

 Lady Sophiaの回想という形で、数年にわたる情熱、衝突、別離が描かれます。
 後半、おいおい、そんなのあり?という予期しない展開に、驚かされますよ。

 総合    ☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆
 Emotional ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆
 戦闘度   ☆☆☆

スピンオフ "Wonderful" "Wild"
 とばして読んでも大丈夫です。

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次は、アメリカ西部ものです。
こちらも、リージェンシーに淘汰されてしまいました。
かつて西部もので人気を博した作家も、次々リージェンシーに転向してしまい、
人気作品が入手困難になっている現状がとても残念です。
今回は、入手可能なもので割と面白いものをご紹介します。
(代表作家というわけではありませんので)

◎アメリカ西部もの
 アメリカものといっても色々ありますが、カウボーイものと、西部開拓者ものを
ご紹介します。

* Linda Lael Miller
 この方もベテラン作家ですが、古い作品は、愛憎激しさのあまり服をむしり合う(爆)と
いうような展開が多いのであまりオススメしません。

・Springwater  YL5.5〜7  69000語 (Springwaterシリーズ 第1作)
 1870年 Montana Territory
 会ったこともない男と結婚するため、娘とともにMontanaにやってきた Evangeline Keating。
 年の離れた亡夫は、二人のために何も残してくれなかった。経済的な後ろ盾のない子持ち未亡人としては、再婚しなければ暮らしていけない。
 でも、大嫌いな男と結婚するよりはと、思い切って夫の従兄弟の誘いを受けたのだ。

 だが、二人を迎えたのは、彼の牧場の共同経営者 Scully Wainwright という男。
 肝心の婚約者は牛追いに出かけたまま、雪のために春まで帰ってこられないと言うのだ。
 春まで駅馬車の宿に世話になるわけにもいかず、牧場で彼の帰りを待つことになる。

 地に足のついた普通の人々が主人公。ロマンス色は(禁じられた恋なので)あまり強くありませんが、農場の過酷な冬をともに乗り切る様子がとてもいいです。
 Little House シリーズファンにオススメ。

 総合    ☆☆☆☆
 Emotional ☆☆☆
 Sensual  ☆

スピンオフ "Springwater Seasons"(4人の女性が主人公の短編4作収録)、"Springwater Christmas"

この作品が気に入ったら、"The Women in Primrose Creek"もオススメ。

* Leigh Greenwood
 この方は、男性ロマンス作家です。
 男臭いカウボーイものを書くので、向こうのロマンスファンの間ではそれほど人気がありません。
 Seven Brides シリーズは、横暴な父親を持ったために、女性を幸せにすることができないと思いこんでいるヒーローたちの物語。ヒーローが、歴代大統領の名前を付けられているというのも お気の毒 ご愛敬。

・Rose   YL6〜8  130000語  (Seven Bridesシリーズ 1作目)
 1866年、市民戦争(南北戦争)後のテキサス、オースティン。
 「女性求む。オースティン南西70マイルの牧場にて。7人の男性のために料理・掃除・洗濯できる者」
 父親が北軍に志願したため、Rose は町の村八分にされていた。
 喧嘩に巻き込まれて仕事を解雇されてしまい、住み込み家政婦募集の貼り紙に応募する。
 しかし、牧場に着いて発見したのは、どうしようもなく荒れた住まいと、全く手に負えない5人の兄弟たち。
 雇い主 George は、Rose を喧嘩から助け出してくれた親切な男性だったが、全くかばってくれようとしなかった。

 荒くれ者兄弟の根性をたたき直すヒロインがすがすがしい(笑)です。
 このヒーローの名前は、ジョージ・ワシントンです。

スピンオフ順番に "Fern" "Iris" "Laurel" "Daisy" "Violet" "Lily"

このシリーズで面白かったのは、3作目の"Iris"と6作目の"Violet"。
"Iris"は、超美形だけど女より牛が好き(爆)といわれるヒーローと、幼なじみの甘やかされた南部美女ヒロインが、
数千キロの牛追い(cattle drive)をともにするストーリー。
"Violet"は、市民戦争で片腕をなくし、北軍とヤンキーを憎んでいるヒーローと、ヤンキー娘が恋に落ちる話。

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次は、現代物(コンテンポラリー)を読み比べしてみました。
翻訳が出ているような超人気作家(Nora Roberts、Linda Howard)については、
いつも翻訳で読んでいますので、ここでは取り上げておりません。
(少しずつかいつまんで読んでみましたので、最後に読みやすさ比較をしますね)

◎コンテンポラリー

* Jayne Ann Krentz
 なにを隠そう(隠しませんが)、上にご紹介した Amanda Quick のペンネームの一つ。
 古くはハーレクインにも書いていますが、そちらはあまりオススメしません。
 90年の初めから90年代終わりくらいが、最高に脂ののっていた頃なので、その時期の作品を読んでみてください。
 下にご紹介する作家よりは、素直で読みやすい文章です。
 主人公の設定などは、Amanda Quick と全く同じ(爆)ですが、変人(Nerd)度はアップ。
 茶そばを食べ、座禅を組む達観したヒーロー(Deep Waters)や、ロボットみたいで感情がないと
3回婚約破棄されたヒーロー(Trust Me)などが登場します。
 ミステリーと思って読むと、がくっと来ますので、謎解きがしょぼくても怒らないで下さいね。

・Wildest Hearts  YL7〜8  95000語
 兄が飛行機事故で行方不明となり、Annie は Lyncroft 社の単独オーナーになった。
 Lyncroft 社は、天才エンジニア Daniel のワンマン経営だったため、会社は経営危機に陥ってしまう。
 兄が帰ってくると信じ、なんとかして会社を守りたいと思った彼女は、思い切った賭に出る。
 Daniel の友人で、Lyncroft 社の最大の投資者である Oliver Rain に、ビジネス上の取引としての便宜結婚を申し込んだのだ。

 植物学者になりたかったヒーロー(シダの温室作りが趣味)が登場します。
 Krentz は、あまり濃厚なラブシーンは書かないのですが、この作品は結構濃厚でした。(なのに、超笑える)

 総合    ☆☆☆☆☆
 Mystery  ☆☆
 Humor   ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆  (Very Humorous)

* Jennifer Crusie
 コンテンポラリー・ラブコメの女王。
 サスペンス・ミステリーなのに、めちゃくちゃ笑える作品が多いです。
 スラングが多く、会話がものすごい勢いで飛び交うので、少し読みづらいです。
 登場人物は、Krentz が nerd の集まりとすれば、こちらは weir-do だらけ。
 PB初心者には少し難しいと思いますので、少し読み慣れた方にオススメ。

・Bet Me   YL8〜9  110000語  (シングルタイトル)
 太めで地味な Minerva (Min) Dobbs は、「寝ないから」という理由でボーイフレンドにふられた。
 激怒する彼女に、超ゴージャスな男が近づいてくるのだが、それにはある理由があった。

 「賭」を巡って繰り広げられる、勘違いすれ違いのストーリー。
 超美男と太めで地味なヒロインという、一種シンデレラストーリーですが、フェアリーテールじゃなく、
とても信じられるストーリー展開なところが素晴らしい。

 総合    ☆☆☆☆☆
 Emotional ☆☆
 Humor   ☆☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆

その他、翻訳が出ている "Welcome to Temptation(プレイボーイをやっつけろ)"は、
抱腹絶倒ミステリー。人が殺される場面で、腹の皮がよじれるくらい笑ったのは、
これが初めて。
続編 "Faking It" は、贋作(fake)画家のヒロインと元詐欺師ヒーローのストーリー。
前作より更にスラップスティック調です。タイトルには、もっと大人な意味もかけられてます(爆)

* Rachel Gibson
 このかたも、ラブコメ。
 同じく現代っ子口調ですが、Crusie よりは読みやすく感じました。

・See Jane Score  YL7〜9  83000語 (シングルタイトル)
 Jane は雑誌のコラムニスト。
 都会で暮らすシングル女性をテーマに記事を書いているが、それだけで暮らしていくのはなかなか至難の技。
 そんな時、絶好のチャンスが訪れる。シアトルのホッケーチーム Chinooks の番記者に抜擢されたのだ。
 ただ問題は、ホッケーのことなんて、なーんにも知らないってこと。
 にわか知識を詰め込み、一大決心で臨んだ Jane だったが。。。

 セクシーな人気ホッケープレイヤーと地味な雑誌記者が、友情から愛情を育てていくストーリー。
 ヒロインが、匿名でポルノを書いていると言う設定が後々効いてきます。

 総合    ☆☆☆☆1/2
 Humor   ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆

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次は、リージェンシーとともに、現在のロマンス業界のトレンドを担っている
(というか、他のジャンルを殺した元凶というべきか・・・)ジャンル、
パラノーマル・ロマンスをご紹介します。
一種のファンタジーといってもいいかもしれません。
ヴァンパイア、shape-shifter(狼人間など)、魔法使いなどが登場します。
普通の人間の世界が舞台のものもあれば、異世界ものもあるし、現代物もヒストリカルもあります。
あの、Nora Roberts の最新トリロジーは、中世を舞台としたヴァンパイアものだということからも、
パラノーマルの潮流がどれほどスゴイかおわかりいただけるかと。

◎パラノーマル

* Christine Feehan
ヴァンパイアものの元祖といえば、この方。
厳密には、ヴァンパイアではなく Carpathian という、人の血を吸わずには生きられない不老の一族が主人公。
(Carpathian が狂ってしまった邪悪な存在が、ヴァンパイア)

・Dark Prince  YL6〜7  104000語  (Darkシリーズ 1作目)
 現代のヨーロッパ。主人公は、Carpathian の最長老のリーダー、Mikhail と、テレパスの能力者 Raven。
 Carpathian を滅ぼそうとする存在に妹を殺され、深い嘆きと絶望を感じていた Mikhail。
 そんな彼の心の叫びに、おずおずとテレパシーで触れてきた Raven は、Mikhail の心に安らぎを与えてくれた。
 彼女は人間だが、彼女こそ 600年間探し求めてきた伴侶 Life mate だと悟った Mikhail は。。。

 生涯ただ一人の伴侶 Life mate を待ち続けるヒーローはロマンティックなのですが、
超アルファな性格には、げんなりしてしまうかも。
 実は、私はこういうタイプめちゃくちゃ苦手なのでダメでしたが、傲慢強引俺様ヒーローが
大丈夫な方にしかオススメしません。(あと、流血が苦手な方もやめておきましょう)
 とにかく、未だに続編が着々と出ている(現在17作くらい?)人気シリーズなので、
魅力があるのでしょう。

 総合    ☆
 Violence  ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆

スピンオフ順番に "Dark Desire" "Dark Gold" "Dark Magic" "Dark Challenge"
"Dark Fire" "Dark Dream" "Dark Legend" "Dark Guardian" "Dark Symphony" 
まだまだ続きますが、このくらいにしておきます。
この中では、"Dark Magic"と"Dark Fire"が人気のようです。

その他、魔女の血筋の7人姉妹のストーリー(Drake Sisters Series)や、GhostWakerシリーズなどがあります。
個人的には、"Dark"シリーズよりも、魔女姉妹シリーズの方が面白かったです。

* MaryJanice Davidson
 抱腹絶倒系パラノーマルの新星。
 下にご紹介した本は、最近早川書房より翻訳が出ました。(「ヴァンパイアはご機嫌斜め」)

・Undead and Unwed  YL7〜8  80000語  (Betsy the Vampire Queen シリーズ 1作目)
 現代のアメリカが舞台。
 デザイナーシューズフェチの元モデル、Betsy こと Elizabeth Taylor の30歳の誕生日は、踏んだり蹴ったりの出来事続き。
 寝坊して仕事に遅刻、クビになったあげくに、車にはねられてしまった。
 気がつけば、そこは葬儀場。
 「やだ、私ゾンビになっちゃった!」
 なんとかして、もう一度死のうと(?)する Betsy ですが、なにをしても蘇ってしまう。
 
 死んだと思ったらヴァンパイアになってしまっていたヒロインのペチャクチャ語りが
とにかく面白い。
 ラブシーンは、普通のストーリーじゃありえないユニークさで、大笑いできます。
 "Buffy, the Vampire Killer"をパロっているようなので、Buffy ファンには2度おいしいかも?

 総合    ☆☆☆☆
 Humor   ☆☆☆☆☆
 読みやすさ ☆☆☆
 Violence  ☆☆
 Sensual  ☆☆

スピンオフ順番に "Undead and Unemployed" "Undead and Unappreciated" "Undead and unreturnable" "Undead and Unpopular"

その他、狼男ものの"Derik's Bane"、最新作でマーメイドものの"Sleeping with the Fishes"などがあります。

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次は、ロマンス色の強いYAをご紹介します。
ラブシーンが殆どない(キス止まり)なので、中高生にも安心してオススメできます。

◎YA

* Simon Romantic Comedies
 これは、Simon & Schuster が最近出している、ラブコメのシリーズです。
 大人にはちょっと物足りないかもしれませんが、中高生や少女マンガが好きな方にはオススメ。

・Royally Jacked by Niki Burnham  YL5〜6  48000語  
 主人公は、どこにでもいるような17歳のアメリカ人の少女 Valerie。
 ある日突然、ママが離婚を宣言した。
 家を出て、ガールフレンドのガブリエルと同棲するというのだ。
 折しも、パパはヨーロッパの公国、Schweringborg に転勤することになった。
 親友たちに「ママがゲイになった」と告白したり、ママとガールフレンドと一緒に暮らすみじめさを避けるため、Valerie はパパと一緒に Schweringborg で暮らすことにした。
 パパの新しい仕事は、Schweringborg のプリンスの protocol 。
 Valerie は、王宮の中に住むことになり。。。

 ちょっと、"Princess Diaries"を思い出させるようなストーリー(王子さまもの)ですが、
文章はこちらの方がキャピキャピ(死語)度が低く、読みやすいです。
 作者は、ハーレクインでも執筆している、中々の力量の持ち主です。
(このシリーズ中で私の知っていた、唯一の作家だったりします)

総合    ☆☆☆☆
Comedy ☆☆☆
胸キュン度 ☆☆

スピンオフ順番に "Spin Control" "Do-Over"

その他、向こうのロマンスファンの間では、Jennifer Echols という作家の"Major Crush"
という作品がなかなか評判いいです。
問題は、いつ絶版になってもおかしくないシリーズなので、気になる方は早めにゲットしてください。

* Stephenie Meyer
 この方も、翻訳が出ているヴァンパイアもので、日本でも大変に人気があります。
 日本語版([トワイライト])は、大人には少々手に取りづらい表紙ですが、1冊を3冊に分割して
発売しているので、最初だけ日本語で読んで見るということ(シマウマ読み?)もできます。
 原書の表紙は、非常に美しいですよ。

・Twilight   YL6〜8  115000語
 現代のアメリカの田舎町が舞台。
 父親と暮らすために LA から引っ越してきた Bella Swan は、非現実的なほど美形な
少年 Edward と出会う。
 Bella は一目で彼に惹かれるが、Edward は彼女に対して非常に不可解な行動をとる。
そばにいるのも耐えられないというような態度を見せたかと思うと、別の日には親しげに
話しかけてくる。
 実は、彼には秘密があって。。。

 キス止まりでも、Christine Feehan なんて目じゃないくらい、ひっじょうに官能的な緊張感に溢れていました。
 普通なら結ばれない恋人たちの恋のゆくえから目が離せません。
 現在は2作までしか発売されていませんが、Bella と Edward のストーリーは少なくとも
3部作にはなる予定だそうで、3作目の"Eclipse"は、2007年発売予定です。

 総合    ☆☆☆☆☆
 Emotional ☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆
 Violence  ☆☆☆☆

スピンオフ "New Moon" "Eclipse(未発売)"

なお、作者のホームページに行くと、ふたりの出会いを Edward 視点から描いた短編が
読めますので、ファンの方はぜひいってみて下さい。

[url:http://www.stepheniemeyer.com/otherprojects_eclipse.html]

* Meg Cabot
 彼女については、全く説明の必要がないでしょう。
 もともとは、(mid-lister ですが)ロマンス小説家だっただけあって、胸キュンの
ストーリーが上手いです。
 私のように、"Princess Diaries"タイプのキャピキャピ文章がダメだった方には、
下にご紹介する "Mediator"シリーズがオススメです。

・Mediator シリーズ  YL5〜6  5万語程?
 現代のアメリカが舞台
 16歳の女の子 Suz は、どこにでもいるような女の子。
 ただ、彼女には幽霊が見え話をすることができたのだ。
 母親の再婚で引っ越した家には、美形の幽霊 Jesse が住んでいた。

 この世に未練を残した霊を、あの世に送るための手助けをする"Mediator"
となる、Suz の奮闘のストーリーです。
 順番に、"Shadowland" "Ninth Key" "Reunion" "Darkest Hour" "Haunted"
"Twilight"で完結です。
 幽霊の Jesse とのロマンス色の濃い、4〜6巻が翻訳されており、それだけ読んでも問題ありません。
(1,2巻は、別の出版社から文庫で出ているらしいです)

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最後に、Women's fictionというジャンルをご紹介します。

◎Women's Fiction
ロマンスよりも、家族や友人関係などに焦点を当てた物語で、主人公はミドルエイジの女性という、
大人向けストーリーです。
私もまだ、1冊しか読んでいないので、ロマンスがないものやHEA(Happy Ever After)エンディングじゃないものがあるのか、よく分かりません。

最近人気の、Debbie Macomber の"The Shop on Blossom Street"が好きな方は、
このジャンルを読んでみてはいかがでしょう?

* Barbara Samuel
 もともとは、ルース・ウィンドという名前で、地味ですがとても良質のロマンスを書いていた作家。
 Women's Fiction に転向してからは、とても人気があるようです。

・No Place Like Home  YL7〜9  87000語 (シングルタイトル)
 Prodigal daughter returns home ストーリー、40歳のシングルマザー Jewel Sabatino がヒロインです。
 17歳の時に駆け落ち同然に町を出て以来、Jewel は故郷 Pueblo に帰ったことはなかった。
 だが、経済的な問題を抱えているときに、大おばが農園を遺してくれたと知り、23年ぶりに Puebloに帰ることにする。
 妹のひとりとは連絡を取っていたものの、家族が受け入れてくれるかどうかも分からず不安を抱えていたが、
一族は両手を広げて迎えてくれた。
 だが、父親だけは、Jewel を受け入れようとはしなかった。

 不治の病を抱えた親友、難しい年頃の息子、経済的な悩み、父親との溝という様々な問題に悩む
ヒロインの前に、親友の弟で危険な香りを漂わせたセクシーな男が現れます。

 ロマンスも極上でしたが、親友とのプラトニックな愛情には涙が出ました。

 総合    ☆☆☆☆☆
 Emotional ☆☆☆☆☆
 Sensual  ☆☆☆☆

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◆ロマンス作家読み比べ

上で取り上げなかった人気作家について、つまみ読みして読みやすさ比べしてみました。

* Nora Roberts
 俗語が少なく、タイトで読みやすいきっちりした文章を書く作家だと思います。
 読みやすさは、YL7〜8程度という感じ。
 どの作品も、ちゃんと理性も脳みそもあるヒロインなので、読んでて安心できます。
ただ、最近の作品は、読んでいると激しくデジャビュを感じる程、設定が似ています。
 オススメは、ファンタジー色のないトリロジーもので、"Born Trilogy"、"Dream Trilogy"、"Chesapeake Bayシリーズ"です。
"Chesapeake Bayシリーズ"は、"Sea Swept"、"Rising Tides"、"Inner Harbor"、
"Chesapeake Blue"の順番に読んで下さい。

* Linda Howard
 下世話なコメディ系は読みやすく感じました。("Mr.Perfect")
 文章自体は難しくなく、ストーリーが面白いので、初心者向けかもしれません。
 最近の作品の、"To Die For"は爆笑コメディ系ミステリー、"Killing Time"はタイムトラベルミステリーですが、
どちらも俗語が多いので少し読みにくいかもしれません。
 ハーレクイン時代の古い作品は、傲慢すぎて殺意を覚えてしまうようなヒーローが多いので、
オススメしません。(特に、"All That Glitters"、"An Independent Wife"は、作者自身も
好きではないらしい)

* Susan Elizabeth Phillips
 コミカルなのにエモーショナル、他の作家だったらとても成り立たないようなとんでもない設定なのに、
上手くストーリーを織りなすことができる人気作家です。
 特に、ヒロインが、「なんてことすんだっ」と突き飛ばしたくなるような
ものすごい行動するのが特徴的。
(For example, one of her HEROIN rapes the hero. Oh my, I've never read such a story. And it works!)
 まあ、そんなことされたヒーローの怒りっぷりもものすごく、感情のぶつかり合いが激しいです。
 文体は、Crusie よりは読みやすいと思います。YL8〜9程度。

* Judith McNaught, Cathrine Coulter, Johanna Lindsey
 ここに挙げたのは、80年代から90年代に掛けて人気があった作家です。
 そのため、ヒーローの傲慢強引な行動が、21世紀の女性としてはがまんならず、
読みにくく感じると思います。
 body-ripper と呼ばれる、暴力的なラブシーンなど(ヒーロー以外からのレイプも)も
古い作品には頻繁に登場します。
 文章の読みやすさは普通ですが、ロマンス小説は特に、主人公が好きになれないと
読みづらいです。
 壁に本を投げつけたり、主人公の頭を掴んで whack, thud とどこかにぶつけたい衝動に駆られると思います。
 そんなわけで、この3作家はあまりオススメしません。

とんでもなく長い投稿を、最後まで読んで下さってありがとうございました。

ロマンスの海は広大なので、まだまだ紹介していない作家もたくさんいます。
「この作家はどんな作風?」という質問がありましたら、私の分かる範囲で
お答えしたいと思います。

今回ご紹介した本の中の多くは、タドキスト大会展示に持って行きますので、
興味を持っていただけた方は、ぜひ手にとって読みやすさを見てみて下さいね。

では、みなさま、好きなジャンルで楽しい読書を♪


▼返答


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