グリシャムの”The Client”(tutomuohさんへ)

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505. グリシャムの”The Client”(tutomuohさんへ)

お名前: ポロン
投稿日: 2004/10/14(22:52)

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ポロンです。

PBのThe Clientの書評について、100万語超の広場で
tutomuohさんからご質問をいただきました。

[url:http://www.seg.co.jp/cgi-bin/kb7.cgi?b=sss-report&c=e&id=3708]

本の内容に詳しく触れることになるので、
こちらの広場に引っ越してきました。

_____________________________

tutomuohさん、こんにちは。

100万語超の広場で返信いただいた、tutomuohさんの投稿から
引用させてください。

〉  『Client,The』の書評ファンです。
〉 Markは、Reggiに弁護を依頼する。それも、たった1ドルで.....。
〉 この表現が大好きです。引用させて下さい。御願いします。
〉 そして、質問ですが、GRでは最後まで読み終えた後で、
〉 1ドルの依頼に対して読者として現実離れと感じられたのか、
〉 PBを読書後にこの表現が浮かばれたのか、それ以外か知りたいです。
〉 (時間がかなり経過している失礼な質問ですので、現在の考えでも
〉  知らせて下さい。)
〉 
〉  GRを英語で読み、内容を正確に把握すれば、読書後にこの表現を
〉 明確にイメージすべきと考えます。しかし、それでは、精読ですとの
〉 意見を聞くことになるかも知れません。
〉  映画・GRの読書後に合点がいかない作品でした。その後、PBでの
〉 依頼場面で、未成年者の契約には親権者の同意が必要であると考え、
〉 又、自身での弁護士とか事務所で受けた印象から1ドルでの形式的依頼を
〉 イメージしました。(詳述は避けます。)
〉 
〉  ポロンさんの表現は、英文を離れても読者に受け入れ易いと思います。
〉 ぶしつけな質問ですみません。

tutomuohさんのご質問を読んでから、自分でいろいろ考えてみました。
GRを読んだのがもう2年近く前のことで、その時点でどう感じたのかは
すっかり忘れているのですが(汗)、今お答えできる範囲で書いてみようと
思います。

tutomuohさんは、映画を見、GRを読まれた時点では、1ドルでレジーと
マークとの間に弁護人と依頼人としての契約が成立してしまったことに、
違和感を感じられたのでしょうか?
未成年者なら親権者の同意が必要なはずだし、厳密に法的な効力を
考えるなら、そういう契約は成り立つはずがないと。
それを前提にしてストーリーが進むのはおかしいのではないかと。

その後、PBを読まれて、GRでは端折られていた描写から、
「1ドルでの形式的依頼をイメージ」された。
それで、ようやく1ドルが依頼料であることに納得なさった。
そういう理解でよろしいでしょうか?

全くの的はずれだったらすみません(大汗)
tutomuohさんのご質問をそういう意味に理解して、私なりに
思ったことを書きますね。

まず、GRを読んだ時点で、私はこの1ドルで契約が成立した、
ということに違和感は感じませんでした。
アメリカの司法には無知ですし、あまり細かいことは考えない
たちなので(汗)、そういうものか、と思っただけだと思います。

レジーはマークからの報酬を全く期待していないわけだから、
わざわざ1ドルなんて受け取る必要もない、それでもお金を要求したのは、
なんらかの形が必要だから、ぐらいに考えました。

PenguinのThe Clientを今読むと、1ドルを受け取ったところでレジーが、
'Okay, now I'm the lawyer and you're the client.'
という場面がありますね。
これで「契約成立」したんだな、ぐらいに読み流していたと思います。

今、tutomuohさんが、

「その後、PBでの依頼場面で、未成年者の契約には親権者の同意が必要であると考え、
又、自身での弁護士とか事務所で受けた印象から1ドルでの形式的依頼をイメージしました。」

と書かれたのを読んで、
そういえば、PBを読んだあとは私もそういう風に理解していたな、
と思い出しました。
もうPBは友だちにあげてしまって手元にないので確かめられないのですが、
PBでは、1ドルのやり取りの背景を説明するなんらかの記述があったんじゃ
ないかと思います。
それで、何かそういう法的規定があって、たとえ1ドルでも依頼料の授受が
なければ、レジーはマークの弁護人として認められない、法的に効力を
持たない、という風に今は理解しています。

次に、肝心の書評での「たった1ドルで」という表現のことです。(やっと本題ですねー)

私は上に書いたとおり、GRを読んだときにも依頼人契約のことに関しては
疑問を持たなかったので、
「レジーは一銭のもうけにもならないのに、危険を承知でマークを
 なにがなんでも守ろうとしたんだ。かっこいいー!」
と思いました。
そういう意味では、「たった1ドル」の依頼料、つまり全くの無報酬の
仕事だけれど、見返りを期待せずに危険な仕事を引き受けたレジーという
キャラクターがとてもよく描けている、と思ったんです。

レジーは、離婚歴のある52歳の女性で、弁護士としてはまだ5年の
キャリアしかありませんね。
これまでの人生でさまざまな辛酸を舐めてきた女性です。
そういうレジーが、別れた父親からはひどい虐待を受け続けた
過去があり、今はマフィアとFBIから追われる身となってこの上ない
危険にさらされている11歳の少年・マークに同情以上のものを感じ、
彼とその家族を身を呈して守ろうとした勇気と行動に感動しました。

原書のPBではもっともっとレジーという人物が深く描かれているし、
マークという少年についても詳しく描かれています。
でも、PenguinのThe Clientは、作者グリシャムの見事な人物造形を
そのまま生かしきっている傑作だと思います。
これは、原作の持つ力によるところが大きいのでしょうね。

ですから、「1ドルの依頼料」ということに対して私が感じたのは、
GRでも原書のPBでも、それほど大差はなかったんじゃないかと思います。

法律に詳しいわけではないし、それほど細かく考えるたちでもないので、
ストーリーの流れに乗せられて、作者の術中にはまりました。

tutomuohさんがGRの読後に疑問に思われたとしたら、それは
tutomuohさんが私よりずっと法律に詳しく、細かいところまで
納得したい、というお気持ちが強かったからだと思います。
私の方がかなり大雑把な性格なのでしょう(^^;;;

こんな書き方でお答えになったでしょうか?


▼返答


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