中国語200万字で多読について考えたこと

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1080. 中国語200万字で多読について考えたこと

お名前: 杏樹
投稿日: 2005/10/11(23:14)

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みなさま、こんにちは。
中国語で200万字読みました。
まず150万字の報告後に読んだ本を報告します。

★「小点心」(10800語)
これは中国語版「American Pie」みたいなものです。NHKのテキストに連載されたエッセイをまとめたものです。日本と中国の考え方や習慣の違いなど、やさしく短い文章で書いてあって、面白くて読みやすかったです。

上海新天地で子供向けの本を3冊調達しました。装丁が同じですが、2冊はピンイン付き、1冊はピンインなしです。まずピンイン付きのものから読んでみました。

まず1冊目
★「英雄人物故事」(25000字)
この本で取り上げられる「英雄」とは…現代中国で新中国建設のために命をささげた人たちのことです。本当に「命をささげて」いるんですよ…。敵の前に身を投げ出して仲間を救ったとか、爆弾の前にひるまず立ち向かったとか、それでどれもが「尊い命を捧げた」という結末に。国のために命を捧げることを賛美していてまるで戦争中の日本のようです。で、その敵というのがまず主に二つ。一つは日本軍、一つは国民党です。
中ほどに他の英雄譚よりずっと長い物語が挟まれます。それは「雷峰」の物語。中国では有名な共産主義の英雄です。貧しい子ども時代を送り、共産党に入ってひたすら国のために身を粉にして刻苦勉励する理想的人物。死に方はちょっと情けないですが、若くして死んだのでますます英雄視されたのでしょう。長生きしてたらそんな模範的な生き方をどこまで貫くことができたやら…とは、中国人にはちょっと言えないコトかも。
そこから先は新しい敵が登場します。それはアメリカです。朝鮮戦争です。中国語ではアメリカは「美国」と書きます。それで「援朝抗美」をスローガンに新しい英雄がまたもや尊い命を…。

2冊目
★「影響孩子的100個童話」(20000字)
子供向けの短いお話がたくさん入っています。作者も何も書いてなくて出典がわかりませんが、中国や世界のあちこちから持ってきているようです。お話によって読みやすかったり、読みにくかったり…。最後に小川未明の「赤いろうそくと人魚」が収録されていました。しかしどうも西洋のお話にされているようで、挿絵の服装が西洋風です。「神社」はそのまんま「神社」と訳されていますが、中国人は「神社」という言葉を見て何をイメージするのだろう…。

この本で童話に慣れたような気がしたので、未読でほったらかしにしてある児童書を1冊手に取ってみました。今度こそ児童書が読めるようになっているか…?
まあ、それほど難しくなくてなんとか読めそうです。しかし…おもしろくない!!
おもしろくないから快適に進まない。
それで上海新天地で調達した最後の1冊を手に取ってみました。ピンインなしで字が詰まっているので難しそうに見えたんですが…。

★「三国演義」(47000字)
そう、三国志です。おお、さっきの児童書と違っておもしろい。さすが三国志。これなら読める!
ということで、またもや児童書を投げてしまいました。
難易度はそれほど変わらないように思うのですが・・・。
けっきょく

「レベルに関係なくおもしろくない本は読めない」


のですね。
子供向けでかなりはしょったところもありますが、やっぱり三国志は面白いです。

さて、そうしたところで、兵庫県立美術館で「新シルクロード展」が開催されました。それですっかり中央アジア史にひたってしまい、去年神保町で「目標本」として買って置いてあった中央アジア史関係の本を「早いかな」と思いつつ手に取ってみました。

★「和田史話」
「和田」とはホータンのことです。タクラマカン砂漠の西南に位置する古代のオアシス国家です。これが一番薄かったのでまず手に取ってみました。最初はとってもおもしろかったです。しかし…。序文にも書いてありましたが、古代よりももっと後の時代を主体に書いた、ということで、明・清時代に行ってしまってからわかりにくくて面白くなくなってきました。その時代も興味はなくはないのですが、なにしろ展覧会のせいで古代に関する本が読みたいんです。それで無理をするのはやめて半分ぐらいで投げました。でも半分でも字数はけっこうあるのでその分をカウントしました。

★「絲綢古道上的文化」(110000字)
本を開いてわかりましたが、これはドイツで書かれた本の翻訳でした。でもドイツ語では読めないからいいか。
この本はとってもおもしろかったです。普通中央アジア史は日本人や中国人が書いたものは、どうしても中国から見たものになりがちです。中国の史書を使ったり、時代を表すのに中国の王朝の時代区分を使ったり。しかしこの本はさすがドイツ人が書いただけあって、中国の影がほとんど見えません。中国からではなく、との土地をダイレクトに見ている感じで書かれているので新鮮でした。
しかし他の人にはあまりおすすめはできません。ベースの知識があるから楽しく快適に読めましたが、そうでない人にはかなり難しいのではないかと思います。特に固有名詞が当然ながら全て漢字なので、予備知識がないとほとんどわからないでしょう。文章はそれほど難しくはありません。むしろこれで「中国語を読んでいる」にカウントしていいものかどうかと思うようなことがしばしば…。
例えば

「公元前334年、亜歴山大大帝攻入小亜細亜、
「紀元前334年、アレキサンダー大王は小アジアに攻め入り

打敗了波斯阿契美尼徳国王大流士三世的軍隊…」
ペルシア・アケメネス国王ダリウス三世の軍隊を打ち負かした…」

固有名詞が長い上、中国語でなくてもわかりそうな文章です。
こういう調子なので、私にはとっても楽しく読めました。

それに気を良くして、前に中国で買ってきて放りっぱなしになっていた本に手を出してみました。
★「亀茲石窟研究」(140000字)
これはかなりシンドかったです。やっぱりちょっと読むのが早かったかも。内容がかなり専門的で、日本語でも「すらすら」読むタイプの本ではありません。文章が難しいのではなく、内容が難しいんです。おまけに長いからいくら読んでも終わりません。長さに対する耐久力も問題です。
でもこの辺の本は日本ではあまりありませんので、とても興味深かったです。でもこの本でも「中国語にカウントしていいのか」と思うようなことがしばしば。特にこの本では仏教用語、中国史の固有名詞が多いので、つい日本語読みしてしまいます。中国語で何て読むかわからないからそのまま日本語読みにして進んでしまったり…。
また、史書からの引用も多くて、そうなるとつい訓読しそうになります。しかしいずれは漢文文献も中国語として読めるようになりたいという目標がありますので、できるだけ訓読しないで中国語として読むように心がけました。でも訓読するより意味がつかみにくくなってしまう…。漢文文献を中国語として読むにはどうすればいいか、具体的な解決策を考えたくなりました。史料の漢文だと「やさしくてわかりゃすい」本をたくさん読む、というふうにはいかないし…。

疲れたので子どもの本に戻りました。
★「課外語文」小学四年級(65000字)
短いお話がたくさん入っています。ピンインはありません。世界各国、いろいろ。こちらは出典、作者が書いてあります。アンデルセン童話やワイルドの「幸福の王子」も入っています。最初の方はちょっと読みにくいかな、と思いましたが、途中から面白いものが多くてどんどん進みました。

★「《寄小読者》及其他」冰心著(45000字)
200万字通過本です。
薄いし、子供向けなら読みやすいかと思ったのですが、そうでもありませんでした。
冰心は1900年生まれ、1999年没の作家です。1920年代に書かれた《寄小読者》という文章と、短い自伝や旅行記などの小品が収録されています。最初は自伝からでした。20世紀初頭の中国のことが書かれているかと思って読んでみました。最初はもたつきましたが、だんだん慣れてくるとおもしろくなっていきました。

この本で興味深い記述があったのと、中国語のレッスンで与えられた課題と合わせて考えることがありました。
冰心は子供の時、おじさんが一緒に住んでいて、いろいろなお話を聞かせてくれました。牽牛と織女や、梁山伯と祝英台など、中国の有名なお話をいろいろ聞かせてくれました。あるとき三国志のお話を始めたのですが、仕事で忙しくて何日も続きを聞くことができませんでした。そこで彼女はおじさんの書斎へ行って三国志の本を見つけます。そして自分で読み始めて最後まで読みました。それから書斎にあった「水滸伝」や「聊斎志異」などの本も次々と読み始めたそうです。
で、これがなんと7歳。まるでマチルダ…。

で、疑問です。どうやって漢字を読んだのか?
わからない字は形や内容から推測して読んだと書いてあります。音を表さない漢字でそれが可能なのか。
ちょうどその時、中国語レッスンの時に読み終わったばかりの「課外語文」を持っていました。あの語数ですから、字はかなり詰まっているように見えます。それで先生に中国の四年生の子どもはこの漢字を全部読めるのかと聞いてみました。そうしたら大体読めるでしょう、ということでした。「課外」なので先生に読んでもらったり、親に読んでもらったり、その時によっていろいろな読み方をするだろうということも。
そこで先生は私にどの漢字が読めないか印をつけてみてほしいという宿題を出しました。
それで読めない漢字を探してみると…あんまりない!なんかもっと飛ばして読んだような気がするんですが、よく見てみると、たいていわかります。わからなくても字を見たら日本語と同じような意味だったり、話の流れから意味はわかってしまう。

しかしいつのまにこんなに漢字が読めるようになったんでしょう?
と、我ながら不思議に思いました。
●理由その1・・・多読前に一生懸命勉強したのでそれで覚えた。
まあ、あり得ることです。しかしこれだけの漢字を本当に覚えたのか。なんだかあまり実感がありません。しかもそれで中国語の本を読むのに困難だったというのはかなり問題ではないかと。結局単語を覚えても本は読めない、という証明になります。

●理由その2・・・ピンイン付きの本を多読してるうちに覚えた
●理由その3・・・「中国語ジャーナル」を定期購読している。
「中国語ジャーナル」はCD付きの月刊誌で、多読前は少々勉強もしましたが、多読を始めたら勉強が面倒になったので、最近はもっぱら通勤時に聞き流してるだけです。時々雑誌を開いて文字を見ます。ピンインは内容によってついているものとついていないものがあります。

まあ、三つの理由が重なっているのでしょうけれど…。
多読は「無自覚に」「いつのまにか」読めるようになるのが特徴です。どうも漢字の読み方も同じような経過をたどっているのかもしれません。
「その1」とすると、読み方と意味を一生懸命暗記して覚えて、それでも本をすんなり読むことができなかった。それが多読をしたため文字と発音の結びつきが早くなった、ということが考えられます。そして英語多読と同じように、勉強で覚えただけの言葉が、身体にしみこんで理解が深まった。
「その2」「その3」の場合、意識して覚えようとしていないのに、多読をしたら覚えていったということになります。

100万字前にも、それまでは中国語を読むのに一字ずつ「解読」しながら読むような感じだったのが、多読が進んできたらスムーズに読めるようになったと感じたことがあります。それで振り返ってみますと、ピンイン付きの本を読んだとき、ピンインを見て脳内発音しながら読むより、ピンインを見ないで黙読したほうが早くなってきたような気がします。脳内発音がなくなったわけではありませんが、一字ずつ発音していたのが文章としてスムーズにかたまりで発音できるようになってきたようです。読むのが早くなったので一字ずつ発音してなくて「飛ばした」ような気になっていたのかもしれません。なのに一字ずつ見ていくとほとんどの漢字の読み方がわかってしまうのは、やはりちょっと不思議です。

以前慈幻さんが「言語獲得装置」ということを言っていました。大量インプットすることで言語習得にはずみがついて、知らない言葉もいつのまにか身につくようになっていくのかもしれません。
普通、外国語を覚えるのには単語を覚える必要があると考えられています。そしてそれは意味を調べて、暗記して、というプロセスによって覚えることになっています。しかし言語獲得装置が働くようになると、意識的に暗記するという行為がなくても覚えていくことができるのかもしれません。とすると、「辞書を引かなくてどうして読めるようになるのか」という疑問の答えになるかもしれません。

そこで、中国語多読についてですが、中国語は漢字、ピンイン(読み方)、意味を覚えなくてはなりません。そうなると多読でどの程度まかなえるのか、英語と違う問題があります。しかし以上のことを考えますと、ピンインつきの本を読んでいれば英語と同じように漢字も「いつのまにか」読めるようになっている、という境地に達することができるかもしれません。また、それにCDなどの音源がついていればさらに正確な発音を習得することができるでしょう。
問題は音源つきの本が少ないことです。とりあえずピンイン付きの本を集めてたくさん読んで多読して、その合間に気に入った音源を探して何度も聞く、ということで補うことでいかがでしょうか。

やさしい本を集めるのが難しいので、100万字を超えてからはかなりバラバラな本を読みました。それで、100万字から200万字の間に自分がどの程度上達しているのかよくわからなくなってきました。しかしこの漢字の習得を考え直したことで、多読前より格段に楽に本が読めるようになったことを自覚しました。


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