[掲示板: 〈過去ログ〉英語で趣味を楽しむ -- 最新メッセージID: 1605 // 時刻: 2024/11/22(21:46)]
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お名前: 杏樹
投稿日: 2005/4/8(00:19)
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みなさま、こんにちは。
世界史クラブ児童書編の3回目です。
どうも「世界史」と聞いただけで逃げ出す人もいるようですので、今回は「初心者のための」という言葉をタイトルにつけてみました。
今回はまず、前回チクワさんが見つけてくれたシリーズです。
これは世界史が苦手だというチクワさんが「初めて世界史が面白いと思った」という感想をもらした本です。
このシリーズの特徴は、まず主語が「you」で書かれていることです。あなた自身がそこにいるような臨場感で語られます。そして全ページカラーイラストで、マンガっぽいというか、アメリカのアニメのようなデフォルメの強いキャラクターが描かれ、その場の雰囲気がわかりやすく伝わってきます。
レベルは3ぐらいです。
★You Wouldn't Want to Be a Medieval Knight! (2800語)
アナタは中世の領主の子どもです。アナタは勇ましい騎士にあこがれます。(この騎士、どうしても悪役ヅラに見える…)。騎士になるには家を出て、ヨソの騎士のお城へ修行に行かなくてはなりません。そこではどんな修行が待っているのか?めでたく騎士になったあとの生活は?もちろん、騎士ですから戦いにも赴かなくてはなりません。当時の戦いの様子は?
★You Wouldn't Want to Be in a Medieval Dungeon!(3043語)
アナタは負傷して帰ってきた兵士です。これからどんな仕事をすればいいでしょう?そこへお城から囚人の看守になるようにお誘いがあります。当時の犯罪者や裁判は?さまざまな工夫を凝らした牢獄があります。囚人をどう取り扱うか覚えましょう。お金持ちの囚人には親切にしておけば、釈放されたときにお礼をしてくれるかもしれませんよ。
★You Wouldn't Want to Be Sick in the 16th Century!(2751語)
アナタはエリザベス1世と同じ年に生まれました。12歳でbarber Surgeonに見習いに行きます。barberは病人を治す人です。当時はどんな病気があったか?治療法は?…ワイルドな世界にボーゼン!
★You Wouldn't Want to Be an Aztec Sacrifice!(2862語)
これまたすごいタイトルです。Sacrificeの意味がわからなくても大丈夫。中を読めばわかります。
アナタは中米の裕福な家で何不自由なく育ちました。しかしそこへアステカ人が攻めてきます。とらわれの身となったアナタはアステカの都、テノチティトランへ連行されます。そして名誉あるSacrificeに選ばれます。なにしろ、Sacrificeに選ばれるには、病気や怪我をしていたらダメ、醜くてもダメ、厳しい基準があるんですから。そして神聖な儀式が始まります。
このシリーズはほかにもあります。自分の好きなものを探してみてください。
他のシリーズもそうですが、注文したときは品切れだったけど、後で見ると入荷していることがよくあります。
それから、今回は一部の人に強力にオススメしたい本があります!
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★SIGHTSEERS PARIS 1789
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このタイトルを見て「おお!」と思った人!きっといるはず!
「PARIS」「1789」と言えば…!
そう、1789年7月14日!…それは…
オスカル様の命日!!!
…えーと、つまり、フランス革命が勃発した日ですね…。
この本は革命下のパリを旅するための「ガイドブック」です。本当にガイドブックなんです。
Change your cash into livres,sous,and deniers the French currency.とか。(フランじゃないのか)
革命を支持するならトリコロールの3色、赤、青、白を身に付けていきましょう、とか。
劇場ではオペラやバレエが行われています。新聞で演目をチェックしましょう、とか。人気の俳優はタルマです。お見逃しなく。
ルーブル宮へ絵を見に行きましょう。今一番人気があるのはジャック・ルイ・ダヴィッドです。
レベル3ぐらいで読めると思います。全ページカラーイラスト。総語数は2680語。薄いけどハードカバー、ハードカバーですけど安い。折りたたみ地図がついていますが、あまりくわしくなくて役に立ちません。バスティーユにちゃんと牢獄があるのが唯一注目すべきところでしょうか。
それから、Part1から紹介し続けているシリーズ。
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The Lands, Peoples, and Cultures Series
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世界史を知るにはまず世界の国を知ることから。
今回、やっと一つの国について3冊とも読むという経験をしました。3冊読むと、その国のことが総合的にわかります。一つの国のことですから、取り上げる角度が違うだけで似たような事柄も出てきますし、「繰り返し」の効果もあって、理解が深まります。レベル3ぐらいで読めると思います。
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★Iraq the Land(7000語)
イラクは砂漠の国。でも気候や地勢など地域差はあります。また、ここは古代メソポタミア文明発祥の地で遺跡があります。民族分布や宗教分布などもわかります。
★Iraq the People(7500語)
イラクは多民族、多宗教の国です。民族の特徴、市民生活などが身近に感じられます。また、歴史上の人物が古代ペルシア帝国から始まってアレキサンダー大王、イスラム帝国から現代イラクの基礎になった国王などいろいろ出てきます。
★Iraq the Culture(7746語)
イラクといえば古代メソポタミア文明。そして現在はイスラムの国。でも他の宗教もあります。伝統文化に現代文化が混ざる国。最後にはギルガメシュ叙事詩の紹介もあります。
最近はイラク関係の本も多数出ていますが、「イラクってどんな国?」という素朴な疑問には、まずこの3冊を読めば日本語の難しい本を読むよりずっとよくわかると思います。
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★Englamd the People(6500語)
どうもPeopleでは歴史から始まるようです。ケルト人、バイキング、アングロサクソン…。「Six Wives」のヘンリー8世、エリザベス1世。もちろん、現代のイギリス人の生活も。
★England the Culture(5900語)
美術、文学、ビートルズ。イギリス文化を形作った人々の紹介が多いです。最後にはアーサー王伝説の紹介も。でもどうしてC.S.ルイスを紹介してトールキンは紹介しない!?
★England the Land(6900語)
イギリスの気候風土が感じられます。島国といっても日本とは違う牧畜国。景観の美しい湖水地方など。
●多読をしていると、イギリスの本を読むことも多いと思いますので、こういう本で予備知識を仕入れておくと理解が深まるのではないかと思います。
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★Japan the Culture(5600語)
他の国に比べて伝統文化の記述に偏ってるような気がします。しかし、日本のことを外国人にどうやって説明すればいいか悩んでいる人にはオススメ!わかりやすい英語で言うとこうなるのか!
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★Ireland the People(7200語)
報告ごとに地道に1冊ずつ読んで、やっと3冊目。
アイルランドの歴史、市民生活、伝統行事。現在は学校でも共和国と北アイルランドの交流が図られているんですね。
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★France the Culture(5000語)
フランス文化…ファッションにアート。カトリック国でもあるので宗教行事は大切。また、パスツールやキュリー夫妻などの科学方面の功績もあります。アステリスクのテーマパークまであるとは。
★France the Land(4600語)
フランス各地の気候や特産物、パリの様子。
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●ここまで読んできて気づいたこと。
日本以外はどの国も民族が混交して形成されていることです。イラクは近代に直線で国境線が引かれたので、実際の民族分布を反映した国ではありません。しかしフランスでもケルト人、ローマ人、バイキングが次々とやってきて、「フランス民族」というものが最初からあったわけではないのです。現在では北アフリカやイスラム圏からの移民もいます。イギリスもやはりケルト、ローマ、バイキングなど次々といろいろな民族が入ってきて国を形作っていきます。
日本人は「一民族、一国家」という感覚を持ってしまいがちですが、世界の国を見ると複数の民族、複数の宗教が混在しているのはむしろ当たり前なんですね。逆に一つの民族が複数の国に別れていることも。
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さて、ここで絵本の紹介です。
バーバラ・クーニーの絵本を2冊読みました。
★OX-CART MAN (By Donald Hall Pictures by Barbara Coony)(書評あり)
おとうさんは牛を荷車につなぎます。そして家族で作った農作物や生活用品などを積み込みます。お父さんは荷車を引いてポーツマスへ行き、荷物を全て売ります。…え?牛も?荷車も?!…な〜んだ、そういうことか。
少し昔の、様々なものを自分で手作りしていた素朴でやさしい生活ぶりがうかがえます。素朴ですが、ていねいにかかれた絵が当時の雰囲気をよく伝えてくれます。じっくりながめていると、文章より絵を眺めている時間のほうが長くなったりして、まるでakoさんになった気分…(akoさん、ゴメン)
★Hattie and the Wild Wave
こちらは文章もクーニーです。Hattieの一族はドイツからやってきてニューヨーク郊外に家を構えて暮らし始めます。使用人を抱えた大きな家です。近くにはおじさん一家も住んでいて、いとこたちと共に時々訪ねてきます。Hattieは大きくなったら何になりたいか聞かれ、「Painter」と答えて笑われます。
今世紀初頭、ニューヨーク近郊の裕福な家の暮らしぶりがうかがえる本です。絵もていねいに書かれていて、OX-CART MANと同様、じっくり時間をかけてながめていたい絵本です。
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★Cathedral: The Story of Its Construction /David MacAulay著(書評あり)
中世ヨーロッパのゴシックの大聖堂はどうやって作られたのか?
当時のことですから、当然全て人力。緻密な絵で聖堂が少しずつ作られていく様子が描かれ、当時の人力パワーに圧倒されます。こんな高い塔を作るとは…。文章は少し難しいですが、絵を見ているだけでも満足。つーか、すごい…。
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さて、500万語報告でも紹介した本をもう一度。こちらは少々レベルが高めで、レベル4の後半〜5ぐらい。でもお話は面白いので、入り込めたら読み進めることができると思います。
★Chinese Cinderella / Adeline Yen Mah著(47000語)
Adelineは天津生まれで後にアメリカに渡った作家。作者の自伝的小説です。
Adelineは赤ちゃんのときにおかあさんを亡くし、お父さんは再婚します。新しいおおかあさんはAdelineに愛情を示さず厳しく接するばかり。やがて一家は上海へ移ります。そしてフランス租界のお屋敷で、ミッションスクールに通うようになります。学校では成績もよく友達もできて楽しく過ごせるのですが、どうしても友達に自分の家のことを話すことができません。しかもおかあさんはAdelineのすること全てを悪く取っては叱ります。友達の家へ招かれても行くことすらできません。おかあさんはともかく、お父さんまで冷たくてあんまりだ…。
当時の中国は日本の支配下にありましたが、フランス租界で暮らしていたAdelineの周辺ではあまり影響を受けていないようです。しかし日本が戦争に負けて撤退すると、国共内戦が始まります。裕福だったAdelineの家はむしろそのことで大きな転換を迎えます。
世界史クラブですので、国共内戦とは何かというと。
1911年、中国では清王朝が倒れ、国民党による中華民国が成立します。建国の父、孫文が亡くなった後、国民党を支配したのは蒋介石でした。その後中国では毛沢東が共産党を組織し、支持を集めていきます。蒋介石は共産党が大っ嫌い。おりしも欧米列強や日本軍に対抗するため、中国人は団結するべきだとして国民党と共産党が手を結ぶよう提案するものが出ました。しかし蒋介石はまず共産党をつぶして国内を安定させてから日本と戦うという考えでした。しかし周りの強い勧めに抵抗しきれず国・共合作を認めます。
1945年、日本が戦争に負けて撤退すると、蒋介石は共産党への攻撃を始めます。これが国共内戦です。しかし共産党は中国人民の支持を集め、中国各地を制圧していきます。なにしろ共産党ですので、地主や資本家といった裕福な人々はどんな目に合うかわからないと恐れてどんどん逃げ出します。台湾、香港、そしてさらに遠く海外へ…。ついに国民党政府は敗退し、台湾へ逃げます。
そして1949年10月1日、毛沢東は天安門で中華人民共和国の成立を宣言します。ここに国共内戦は一応終わりを告げました。しかし蒋介石は台湾でがんばって、中華民国が中国全土を支配しているという立場を取り続けました。また、国際社会、とりわけ冷戦時代の「西側」諸国は共産党の支配を認めたくないので、中華人民共和国を承認せず、中華民国が中国の正式な政府だという立場を取り続けました。
蛇足ですが、1970年の大阪万博では、中華民国のパビリオンがありました。中華人民共和国と日本の国交が樹立されたのは1972年です。国交樹立のしるしにパンダのカンカン、ランランが上野動物園へやってきて大ブームになりました。
ついでに、「シンデレラ」の物語は中国の唐の時代によく似た物語があって、それが広がったのだろうといわれています。この本では元のお話も紹介されています。
★Chinese Cinderella and Secret Dragon Society / Adeline Yen Mah著(68000語)
著者の少女時代の空想を元にしたお話です。Chinese Cinderellaとは内容の関連はありません。
主人公は二度目のお母さんにいじめられ、お父さんからも叱られて家を出ます。そして龍侠会という秘密結社の一員になり、秘密のmissionを命じられます。…という、かなり空想的な物語です。しかし龍侠会では様々な国の混血の少年たちがいて、国や宗教を越えて手を取り合う大切さや、主人公がお父さんの気持ちを思いやるようになっていく成長ぶりなど、読みごたえがあります。
このお話では、日本を爆撃したアメリカ兵の飛行機が中国の島へ不時着した実話が元になっています。日本は敵という立場ですが、一方的な悪役ではなく公平な立場で書かれています。お話は戦争が終わるところまでは行きませんが、終戦後に日本がアメリカに占領される時のことまで見通すような示唆もあります。
ということで、今回の報告は終わりです。
もしこれらの本を読んで、難易度に異議などありましたらお知らせください。私にとってはわかりやすことでも、知らない人には難しい、ということがあるかもしれませんので。
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