世界史クラブ:テューダー朝へようこそ

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1258. 世界史クラブ:テューダー朝へようこそ

お名前: 柊
投稿日: 2008/10/25(11:45)

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 本日三度目の柊です。一番好きなことを最初にするのが多読と思っているので、一番好きなテューダー朝について好きなだけ好きと言ってみようと思います。その後は多分冷静に次の投稿にいけるので。

 Tudors(テューダーorチューダー)というのは、1400年代の終わりから1600年代に入るぐらいまでのイングランドの王家です。スコットランドはまだ別の国で、アイルランドは領地に入れようとしていたぐらいなので、国内ではないと思います。
 国王はヘンリー7世、ヘンリー8世、エドワード6世、メアリ1世(ブラッディ・メアリ)、エリザベス1世と、血縁で数えると3代です。Terrible Tudors [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000012547 ] が一番わかりやすい本でしょうか。
 ヘンリー7世は実力で天下を取ってから、前の王家とのつながりをどうこう言っていた人で、家康っぽい感じですね。王妃のエリザベス・オブ・ヨークはプランタジネット王家の王女なので、こちらは繋がっていますね。
 その子どもがヘンリー8世で、残りの3人の王はその子です。
 この辺りで一番重要なのは、ヨーロッパの他の王家同様側室制度がないことです。女子が継げないという明確な法律はないのですが、親が正式に結婚しているときに産まれた子どもでないと相続できません。この正式の定義を巡って紛糾するわけです。

 この時代のおすすめはやはり、Jean PlaidyとCarolyn Meyerにつきますね。Margaret Irwinもいいですし、Ann Rinaldiも悪くないですが、先頃紹介したので、省きます。
 Meyerは子ども時代から30歳ぐらいまでを中心に書く児童文学作家で、Plaidyは死ぬまで書きます。大人向けの作家です。

Patience, Princess Catherine
 MeyerのYoung Royalsの中で時系列的には一番最初ですが、書かれたのは一番最後。
 ヘンリー7世の長男アーサーに嫁いだ、スペイン王女キャサリンが主人公です。アーサーはすぐに死んでしまって、キャサリンは異国で1人奮闘します。アーサーの弟のヘンリーと結婚すれば、予定通りイングランド王妃になれるので、その方向で努力するわけです。
 私は裏も思惑もスペインの様子も何もかも書いてあるPlaidyのKatharine of Aragonの方が好きですが、何しろ長いので覚悟をしないと読めません。最後まで読み通す覚悟なり、面白そうなところだけ読んであとはバッサバッサととばす覚悟なり。

Doomed Queen Anne [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010590 ]
 ある種方向性がはっきりした処刑台活きジェットコースターで、Young Royalsの中でも読みやすいかもしれません。
 ヘンリー8世の2番目の王妃アン・ブーリンが主人公です。前の王妃を押しのけた悪女とか色々言われていますが、イングランドには女王の前例がなかったとか、プロテスタントの台頭とか色々事情はあります。
 その辺の色々をきっぱりと切り捨てた潔さが、読みやすい原因でしょう。

Mary, Bloody Mary [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010595 ]
 アンの前のキャサリン王妃の娘で、アンと対立する立場のメアリ王女の話です。急にお父さんが若い女性になびいてしまって離婚を言い出す、大人な話。
Beware, Princess Elizabeth [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010594 ] はそのアンの娘が主人公で、後日談とも言えますね。Doomed Queen Anneから3冊通して読むと深いですね。色々切り捨てたとはいえ、子ども向けに善悪をはっきりつけていないところが。

 さて、Plaidyも同じ人物を書いていますが、より複雑で文章もややこしいです。が、多分難しいのはほとんどが政治状況をきちんと書いたせいだと思います。
 まずUneasy Lies the Head [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000014397 ] がヘンリー7世時代の話で、時代的には一番早いですね。
 katharine of Aragonは「Katherine, the Virgin Widow」「The Shadow of the Pomegranate」「The King's Secret Matter」の三作の合本で、MeyerだとMary, Bloody Maryの終了までに相当します。
 しかし、三人称で国もスペインやフランスも出てきて、様々な人の思惑も説明してあるので、多分英語ネイティヴでも一度では全部はわからないのでは?

The Lady in the Tower [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000014397 ]
 アン・ブーリン、ヘンリー8世の2人目の王妃については、この作品が今まで読んだどの作家のものよりお気に入りですね。ただ、きりっと知的な表紙の肖像画が、Joanna Dennyによるとジェイン・シーモアだというのが、がくっと来ます。誰が書いたものを読んでも、ジェインはアンと正反対の、羊のようにおとなしい女性なんですが。
 1人の人間としてとても魅力的で共感できるこのアンはそれだけに最後のお別れがとても名残惜しかった。断頭台でお別れだったというのも残念でしたしね。
 さて、そのアンと対立するはずのメアリ1世の話もPlaidyなので単純な対立ではないですし、エリザベス1世の話もメアリ1世と対極にある対立者という割り切りやすいものではない。
 ヘンリー8世の最後の王妃キャサリン・パーのThe Sixth Wife [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000014395 ] やヘンリー8世の妹メアリのMary, Queen of France [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000012906 ] も含めて全て、ヘンリー8世に振り回されたり憧れたりした人たちというくくりでとらえてもいいのかもしれません。

In the Shadow of the Crown [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010701 ]
 可哀想なシンデレラが悪い継母になっちゃう話とシンプルにまとめるのが失礼な気のする、でもそれ以外に紹介の言葉が思いつかない話ですね。可哀想なメアリ王女は、ブラッディ・メアリになってしまうんです。
 迷ったり悩んだり後悔したりする主人公に死ぬ時までよりそうのがPlaidy流。
 そこを切り捨てた方がわかりやすい話には多分なるんでしょう。そういう意味でThe Other Boleyn Girl [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010589 ]がヒットするのはわかるし、「ブーリン家の姉妹」でしたっけ、映画も多分見やすい話になっていると思います。ただ、私は好きじゃないですね。
 このIn the Shadow of the Crownもスペインやフランスの事情まで書かれていてややこしいですが、その分歴史の勉強にはなりますね。Plaidyの場合、まず、歴史的事実が小説の都合で変えられているということはないので、その点は安心して読めます。
 死ぬまで書くというPlaidyのやり方が一つ頂点を極めていると思います。だってメアリ1世の話、途中で切ったら普通のシンデレラですから。

Queen of this Realm [url:http://www.seg.co.jp/sss_review/jsp/frm_a_120.jsp?cd_syuppan=0000010781 ]
 イングランド史上に輝かしいエリザベス1世を、陰謀に関わった疑惑にも正面から、生まれてから死ぬまで全部書いた小説です。私はこの人が一番好きなのでもっと長くてもいいと思うんですが、実際にはようやく読みきったというところです。
 Plaidy作品は10万語越えるのが当たり前で、20万語近いこともよくあります。20万語を越えちゃうこともあります。

 さて、ここまででもしかしてお気づきでしょうか。Jean Plaidyは女性が主人公のものしか書かなかったみたいなんですよ。なので、エドワード6世は無視。もともと、エドワード6世は話の種になりそうな部分がほとんどない人ですが。

 Tudorsの特徴は議会も政党もない(議会は枢密院らしきものがあるけれども権威はないが正しいか)ということで、おとぎ話の王様に近いです。特にヘンリー8世はシンデレラの王子様か青ひげかという感じです。それが同一人物なのが歴史のおもしろさでしょうね。

 イギリスの話なだけあって、本当に色んな作家が書いていますが、力つきたのでこの辺で。
 力つきずに読んでくださった方(います?)、ありがとうございました。
 では〜。


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