The Little Mermaid

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9581. The Little Mermaid

お名前: Shunsuke
投稿日: 2010/4/4(15:19)

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 アンデルセンの「The Little Mermaid」を読んだ。
 
 むろん、原作ではない。青少年用に易しく書き直したものである。
 量的には、53ページ程度で、約9,000語の短編小説になっている。
 
 これまで、僕は、人魚姫というのは、愛しい王子との恋に破れ、船から身をおどらせ、海の中に飛び込んで死んだものとばかり思っていた。
 が、今回、実際には、そんな単純な失恋物語ではないことが、僕にはわかった。

 ともかく、アンデルセンという小説家は、心の優しい人だったのではないかと思う。
 つまり、人魚の娘には、不死のたましいというものはないのだが、よい行ないをすることによって、「永遠の生命」をさずかるのだと書いて、アンデルセンは、かわいそうな人魚姫の魂を救っているからだ。

 海の中に身を投げて死んだ人魚姫は、あわになり、やがて空気のような存在となって、上へ上へとのぼっていき、バラ色の雲に乗って、さらに空高く飛んでいく。まるで、千の風になったように…。

 失恋したって、自殺なんかしてはいけないのに…。 

 でも、人魚姫は、空気の精となりつつも、子どもたちの成長を見守るという、よい行ないをすることによって、300年ののちには、不死のたましいをさずかるという予感を、読者に感じさせながら、この小説は終わっている。

 ところで、最も新しい宇宙のモデルは、「ブレーン宇宙モデル」といわれているらしい。
 この「ブレーン宇宙モデル」というのは、11次元空間のなかに、3次元の膜(ブレーン)が存在し、その膜の1枚が、われわれの住む宇宙だということらしい。
 
 われわれの宇宙に存在するあらゆる物質は、この膜の中に閉じ込められており、他の次元の方向に逃げ出したりすることはできないらしい。
 
 もっとも、唯一の例外は重力で、重力はこの膜から染み出していき、隣りの膜にも影響を及ぼすことができるらしい。

 が、ともかく、この「ブレーン宇宙モデル」によれば、われわれの宇宙に対応する膜が、別の膜と衝突し、ビックバンが起こるらしい。

 宇宙は、ビッグバンのあと、通常の減速的膨張に移り、わずかに残っていた「真空のエネルギー」によって加速度的な膨張を起こす。

 しかし、やがて「真空のエネルギー」も小さくなり、収縮に転じ、再度、2枚の膜は衝突し、ビッグバンを起こす。
 
 つまり、この「ブレーン宇宙モデル」理論によれば、われわれの宇宙は、膨張と収縮を繰り返すということだ。

 これまで、「宇宙はただ無限に膨張を続けて終わるのではないか」という説の賛同者が圧倒的な多かったのだが、僕自身は、物理学には全くのしろうとながら、「どこかで膨張にブレーキがかかり、収縮に転じるのではないか」という少数派の説に賛同している。

 そして、この2つの膜(「この世界」の膜と「あの世界」の膜)の間を、われわれは行き来はできないが、重力のみは例外的に行き来できるという着想には、面白さがある。

 われわれは、あるいは、質量のない、物質でもない、ある種、重力のような存在となって、この世(娑婆の世界)とあの世(冥途の世界)を行き来しているのかもしれない。それは仏教者が考え出した夢物語であろうが、僕自身は、輪廻転生、魔界転生などといった仏教的物語を、まだ科学的に否定できていないので、重力となって2つの膜の間を行き来できるというなら、それもけっこう面白い考え方ではないか、と思うのだ。

 アンデルセンの、永遠の生命という、捕らえ方を、ただの絵空事とは、したくない、というのが僕の思いなのだ。

 たぶん、アンデルセンは、自分の作品の主人公ながら、この人魚姫に、人並み以上の好意を寄せていたのであろう。
 そして、この名もない、田舎者の僕も、一般の読者以上に、この人魚姫に好意を抱いたのかもしれない…。


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